『モエレ沼公園』ってご存じでしょうか。

北海道つながりで、今回はこんな本を紹介します。

『建設ドキュメント1988ーイサム・ノグチとモエレ沼公園』（川村純一他、学芸出版社）

イサム・ノグチとモエレ沼公園建設ドキュメント1988- [ 川村　純一 ]

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『モエレ沼公園』は、札幌市の郊外にある約188.8ヘクタールの総合公園です。188.8ヘクタールといっても見当がつきにくいでしょうが、札幌ドーム約34個分、東京ドーム約40個。関西のかた向けにいえば、甲子園球場が約4ヘクタールですので、約47個分です！

1979年ごみ処理場として利用された後、造成が開始され、1988年に世界的に著名なイサム・ノグチ氏が基本設計を手掛け、「公園全体をひとつの彫刻とする」というコンセプトのもとに造成が進められました。

不燃ごみで埋め立てられたモエレ沼。

イサム・ノグチは1988年に現地を訪れ、こここそが長年思い描いてきたプレイグラウンド計画を実現する場所だと天啓を得たと言います。「人間が傷つけた土地をアートで再生する」としたイサム・ノグチの考えに札幌市も共鳴。イサム氏らしいダイナミックな構想により基本設計が策定されたのですが、着工前にイサム氏は亡くなります。

この本を書かれたのはイサム氏亡き後を引き継いでモエレ沼公園の建設に関わった、建築家・川村純一氏（設計統括担当）とランドスケープデザイナー・斉藤浩二氏（ランドスケープデザイン担当）。

イサム氏の考えを貫き、そして市民に愛される公園をどう実現するか……

完成までの17年間には様々な問題があったと言います。度重なる設計や工事のやり直し。景気の低迷による経済上の危機。札幌市役所との認識の違いや軋轢。それらを経て、この広大かつ壮大な計画は継続され、オープンにたどり着きました。

この本はそれらの記録です。

広大な敷地には幾何学形態を多用した山や噴水、遊具などの施設が整然と配置されており、自然とアートが融合した美しい景観を楽しむことができます。春にはサクラが咲き、夏には水遊び場や噴水など札幌のさわやかな夏を彩る施設がオープン。秋には紅葉、冬は一面の雪景色の中でクロスカントリースキーやソリ遊びが楽しめるなど、四季折々の魅力を持った公園です。

また、ゴミ処理場の跡地を公園化したことや、屋内施設であるガラスのピラミッドに地域固有の自然エネルギーである雪を活用した冷房システムを導入していることから、自然環境保全の観点からも注目を集めています。

（モエレ沼公園HPより）

もちろん、イサム・ノグチを知らなくても、このプロジェクトの経緯を知らなくても、モエレ沼公園を楽しむことはできます。

でも、あとがきにもあるように、「この公園がどうやってできたのかという物語を知ったら、楽しみ方がもっともっと増えることでしょう」

「（イサム・ノグチの）後を追って大勢の人たちが力を合わせ、世界に誇れるものを創りました。これはすごいことだと思いませんか。」

本当に、人間って素晴らしいし、生きて行くことは悪くないと感じます。

川村、斉藤両氏の原稿を纏め上げた編集者・戸矢晃一氏の力量もあり非常にいきいきと、そして臨場感たっぷりの一冊に仕上がっています。思わず札幌、モエレ沼公園へ足を運びたくなるドキュメント作品です。

個性派美術館がお好きな方はこの本も参考になります。

『モエレ沼公園』はもちろん、同じ札幌の『札幌芸術の森美術館』もおすすめです！

『日本縦断個性派美術館への旅』（写真・文 なかやまあきこ、小学館）

日本縦断個性派美術館への旅（Shotor　museum） [ なかやまあきこ ]

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『建設ドキュメント1988ーイサム・ノグチとモエレ沼公園』（川村純一他、学芸出版社）