私は親に、「考えることは悪いことだ」と教え込まれた。
「考えるな」と説き伏せられた。

だけど私は生まれつき、考える性格だったから、それを自重して、考える自分を責めた。
私は考えることを放棄したフリをして、無茶苦茶な行動を取ったりもした。

だけどそれは常に私に付きまとった。
それは私に声として現れ、私の脳内を支配した。

携帯を二つ持っていたのは仕事で使っていたからではない。
私は無職であるにも関わらず、携帯を二つ持っていた。

一つは一般用。
もう一つは、本当に心から信用できる人用だった。(親はむしろ信用していなかった)

一般用の携帯からは、途切れることなく声が聴こえていて、それらの声と私は闘っていた。
声を恐れた私は、携帯の電源をほぼオフにしていた。

もう一つの携帯からは、不思議にも声はなかった。
だから私は安心してそれを使った。


母は今でも「過去は振り返るな」と私に説き伏せる。
過去は考えても同じなのだから、これからの未来のことを考えよと言う。
確かにそれはある意味然りだと私も思う。

しかし母は過去に、私に罵った言葉を忘れたらしい。
それはきっと冗談で言ったに違いないと彼女は言った。

母は冗談で、私に「お前は頭が狂ってる」「お前はキチガイだ」などと叫んだのだろうか?

過去を忘れろと言っているのは、自分が犯した罪の免罪符を欲しているような気がしてならない。


私は考えて考えて考え抜いた先に、考えないという答えを出した。
抑圧していた感情を解放したら、意外に考えなくてもいい自分がいた。

今ここに、考えることを抑圧しない自分がいる。
母にはこれを話さない。
彼女の言葉に、私も同調したフリをする。

私は彼女に支配されない。
私は私自身の考えで生きていく。
私は私らしく生きていく。




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