前回の続きから。
 
『教科書を超えた技術経営』編著:伊丹敬之
 
 
・要約②:そもそも日本のマーケティング力は低いのか?
マーケティングの本質は顧客の本当に求めているものを知ることにある。これを「顧客観察」だの、「お客様本位」だのといった言葉で各社が言葉として表現しており、表現は違えど根本的に日本人は顧客を思いやるという文化・風土が根付いているともいえる。そういった意味で日本の企業が根本的にマーケティング力で劣っているわけはない。
 
・要約③:日本企業がマーケティング力不足とみなしている理由
日本企業が自社のマーケティング力を課題とする時、その課題解決・能力向上を図る上で、下記の3つが主な障害として立ちはだかっている。
(1)グローバル化を目指したマーケティング活動が不足している
 
(2)技術力がありながらも顧客の言いなりになっていて、市場の価格コントロールなどの主導権を握る力が不足している
 
(3)一般消費者対象ではなく、BtoB企業における顧客技術者等を対象とした「技術的マーケティング」活動が不足している
 
ここでは特に(3)の技術マーケティング活動について、その特徴と課題・解決法について整理する。
 
技術者が他社の技術者を顧客として技術的なマーケティングを行うとき、以下のような特徴がある。
・顧客が特定しやすい(一般消費者は不特定多数からの絞り込みが必要)
・顧客も専門家である(一般消費者よりも精通している)
・顧客の先に顧客がいる(エンドユーザーではない)
 
・要約④:技術マーケティングの自力向上のために、必要なこと(企業目線)
 
ここに至って、マーケティングする側の技術者は、顧客が専門とする領域で、顧客と同等以上の知識をもって、売り込む相手と対等にやり取りできる能力をもち、かつ自身のもつ技術を搭載した形で提供する力が求められる。(例:インテルは当時半導体メーカーという立場にもかかわらず、自社の半導体のみでマーケティングするのでなく、半導体を搭載したPC事業という形で顧客に提供することで事業領域をも広げた)これが技術者および企業の課題となる。
 
これらの力を獲得するため、解決法として村田製作所の例から読み解くと、
・技術マーケティングを担う人材を意図して育成する環境を整えること
・技術マーケティング人材には一切の権限を委譲すること
この2点が重要になる。
 
前者を具体的にすると、開発・製造・管理・企画など一つの製品に関するあらゆる部署での経験を技術者に与え、後者の権限を持たせるに足るような意思決定・顧客折衝の知識・経験・や人材ネットワークを早い段階から築かせていくことが必要になる。
(特に権限移譲については、日本企業の体質的に抵抗感があることが多いが)
これは長い目で見れば、担当する一つの製品については全責任を負うという自覚を持った「社長の分身」を作ることに他ならない。
 
今回は技術的マーケティングができる技術者の育成に必要な環境まで整理した。
次はラスト、「じゃあ技術者自身があるべき姿とは?」を整理します。
だんだんこんがらがってきた。