Nao☆ちゃんは、アイドルとしてNegiccoリーダーを務めると同時に、クリエイターでもある。絵を描いたりアクセサリーを作ったり、その作品の多くをこれまで生誕祭の会場や、苗場プリンスホテル『私をネギーに連れてって』の展示コーナーで見ることができた。Nao☆ちゃんが描く絵は、ドリーミーでポップで、でもどこか儚げだ。現実とその向こう側を行ったり来たりしているNao☆ちゃんが、向こう側に迷い込んだ時にそこで見ている世界を描いているような、そんな印象を持っている。
 
そんなNao☆ちゃんの作品が、未公開の作品とともに一冊の作品集として、7月20日に発売されることになった。
 

 
 
その発刊記念サイン会が、タワーレコード新宿店にて8月3日土曜日に行われる。なおちゃんと対面するのは約半年ぶりだ。ドキドキしながら、当日新宿へ向かった。
 
今回は夜8時半からと遅めの時間のスタート。8時ごろ現地に到着し、タワーレコード新宿店の、いつもの7階イベントスペースで開始までしばらく待った。定刻近くになり、イベントスペースが人で埋め尽くされてくると、係の人が「本日は、サインとともにお客様の宛名を書かせていただきます。のちほど用紙を用意しますので、そちらにご希望の宛名を書いて本人にお渡しください」というアナウンスがあった。
 
それを聞き、会場は一斉に「おぉ!」と沸いた。Negiccoのサイン会で宛名を書いてもらうなんてこの3年半で初めてだ。愛しのNao☆ちゃんに宛名を書いてもらうなんて嬉しすぎる。サインを書いてもらう位置は、部屋に飾るためにCDジャケットのように表紙がいいかなと最初は思っていたけど、作品集を何度も見ているうちに最後のページが一番いいなと思うようになっていた。見開きでその左ページにはNao☆ちゃんの自筆による感謝の言葉が綴られていて、右ページには大人っぽくも見えるし、まだ少女のようにも見える笑顔のNao☆ちゃんが映っている。自分に微笑みかけてくれているようにも見える写真だった。宛名を書いてもらうなら絶対にここだ!やはりサインはこのページにお願いしよう!と気持ちを固めた。書いてもらう宛名は、Nao☆ちゃんがおぼろげに一応覚えてくれているだろう「みのるん」を想定した。
 
定時になり、Nao☆ちゃん登場。イベント会場の壇上に立つ。今日の装いは、作品集の写真でも着ている黄色のたっぷりとしたワンピース。作品集のタイトルでもある菜の花カラーがまばゆい。たっぷりとしたワンピースが、久々に間近で見るNao☆ちゃんのちっこいサイズ感を可愛らしく引き立てていた。
 
左上が新宿です。
 
まずはNao☆ちゃん「こんばんネギネギ。NegiccoのNao☆です」とご挨拶する。この作品集が出せたことの喜びと、感謝の言葉をお述べになってから、「ではこれからサインを書かせていただきますね。はい! サイン、くだー?!」と問いかけ、客席「サイーン!」というコールアンドレスポンスが決まったのち、サイン会開始となった。
 
列に並び、なおちゃんがサインしている様子を見つめた。サインをもらっている場所は皆さんそれぞれだけど、最後のページにサインをもらっている方が多く、やはりここが一番良さそうだ、うむ間違いない、と自信を確信へと進化させた。最前列の人たちの前に机があり、そこに置いてある紙切れに皆さん、宛名を書いていた。
 
左手に作品集、右手に特典券を握りしめながら、僕はその時、ある人の言葉をふと思い出した。
 
こんな立派な仕様の特典券、初めてである。
 
 
「サインの宛名は、アカウント名とかではなく、本名を書いてもらうと、書き方を教えたりしながらできるから、すっごい楽しいんですよ」
 
2年ほど前、ある方(◯Sさん)がそう教えてくれた。本名を書いてもらうパターン、ありかもしれない。
 
いつも特典会でサインに宛名を書いてくれる星野みちるさんに、本名トライをしたことが一度あった。みちるさんは名前の書き方を訊くことはなく、「じゃあここにお名前を」と置いてある紙とペンを指差し、そして僕が書いた名前を模写した。笑顔だったが、そこに「この名前はなんて読むのかな?」といった感情を読み取ることは一切できなかった。そんなみちるさんに唖然としたが、「みちるさんらしいな」と面白くもあり、そして本名を書いてもらったアルバムのジャケットはいつも書いてもらっているアカウント名とは違う特別感があって、自分にとって大切な宝物になった。「よっしゃ、Nao☆ちゃんに本名トライしてみよう!」と決心し、以後は列並びのなか、話すシナリオを復唱することに集中して自分の番を待った。
 
自分の番が次となり、前のかたとNao☆ちゃんが話す様子に注目した。よくお見かけするかただ。お話したことはないけど、目立つ方なので、お名前だけは存じ上げている。なおちゃんももちろんご存知のはずだ。しかしNao☆ちゃんはそのかたの宛名の紙を見て、「◯◯さん!」と似て非なる名前に読み間違えた。「いやいや、◯◯です」とそのかたが言い直すと、「あーそうだった!読み間違えちゃった!あはは、ごめんね!」とご返答。その読み間違いっぷりがNao☆ちゃんらしすぎて、最前列で爆笑が起きた。
 
そして自分の番。「サインくださいーん」と言って、Nao☆ちゃんに本と紙切れを渡した。「はい、ありがとうございます!」とNao☆ちゃん、紙切れを見て名前を書き始める。「サインくださいーん」は聞こえなかった模様。シナリオはいきなり崩されたが、まあ良いのである。宛名を書くNao☆ちゃんもまた、みちるさんと同じく模写派だった。そして苗字を書き、下の名前を書いている時に異変が起きた。「糸(いとへん)」を書いたあと、ペンが止まったのだ。ペンを止めたまま、紙切れと「糸」を見比べていた。
 
なお「なんか…、違いますよね…」
 
私「んー、違いますね…。でも大丈夫です。そのまま続けてください」
 
右側にいたマネージャー雪田さんが紙切れをのぞき込み、「あはは。それ、禾じゃなくて糸になってるね。こうだよ」と笑いながら、のぎへんの書き方を手振りした。
 
さあNao☆ちゃん、どうする?!これをどう発展させるのだろうと探究心が沸いてきた。自分「大丈夫です。そのまま続けてみてください」と再度同じことを言った。
 
Nao☆ちゃん、ペンを置いたまま2秒ほど固まっていたが、書き間違えた箇所に対し、おもむろにペンを横方向に動かしはじめた。
 
私「!!!!」
 
なおのペン「ぐしゃぐしゃぐしゃ。丸描いてチョン(など)」
 
 

サインを書き終えたNao☆ちゃんは、宛名の上に書き添えてくれた文字と同じように、「ごめんね!本当にごめんね!」と申し訳なさそうなお顔と笑ってるようなお顔が半分づつな表情で言った。
 
私「全然、大丈夫です!こんな特別なのもらえるなんて、逆にうれしいです」
 
なお「私、昔っから漢字がほんとに苦手で、小学校のとき、漢字の書き取りでよく居残りさせられて、最後まで帰れないことがよくあったんですー」
 
私「そうだったんですねー。そういえば、静岡の浜松を”まつはま(*)”って読み間違えてた動画見たことあります」
 
なお「あっ、あったねー!あれ、うちのお母さんがすごい好きで、まつはま行ってどうすんねんって話ですよね」
 
私「??? そうですねー」
 
サインを書いた場所の隣のページにインクがつかないように、雪田さんが紙をおいて、Nao☆ちゃんが本を渡してくれた。
 
Nao☆ちゃんは「ありがとうございます!ほんとにごめんね!」と言って、握手してくれた。
 
僕は「いえいえ、ありがとうございます」と言ったあと、「まだ言えてなかったんですけど、ご結婚おめでとうございます」という言葉を付け加えた。
 
Nao☆ちゃんは「ありがとうございます!」と再度笑顔で言ってくれた。
 

 

2015年のNegicco

 

僕は、ほげーとなったまま、タワレコのビルのエレベーターを降り、新宿駅から電車に乗って、家路についた。いつもは電車に乗るとすぐにイヤホンを取り出して、スマホを見ながら、音楽を聴くのだけど、この日はただほげーとしたまま、Nao☆ちゃんの笑顔を思い浮かべていた。

 

Nao☆ちゃん、天使だったなー。

 

 

 

※その数週間後、村井杏さんとぽんちゃがパーソナリティを務めるFM新潟『HAPPY MAPPY』を聴いていたとき、Nao☆ちゃんと同じように村井さんが「浜松」と「まつはま」を言い間違えていた。「(新潟の)松浜と(静岡の)浜松、よくごっちゃになっちゃうのよねー」とのこと。新潟には松浜町という地があり、この言い間違いは新潟市民あるあるであるらしいことを知った。