フジロック2日目に行った。

 

苗場に行くことはもうないだろうとここ数年思っていた。でも去年12月「私をネギーに連れてって」で導かれ、それから1年も経たず、また導かれた。

 

当日。家で13時ぐらいまでウダウダしていた。なんかめんどくさかった。

苗場は雨が降っているらしい。現地に初日からいるという知人に、「スニーカーで行っても大丈夫ですかね?」とラインしてみたら、「スニーカーなんてとんでもない。長靴、フル装備で来るべきです。今年のフジはハードです!」と現地の写真とともに、大変そうだけど、なんだか得意げに返信してきた。

 

「やっぱめんどくせーな」と思いながらも、古いレインコートをタンスから出して、リュックに入れた。そして、短パン、サンダルで家を出た。

 

新宿タワレコに寄って、日本野鳥の会の長靴を買った。前にも同じものを持っていた。でも一度しか使わず、もう出番もないと思ったので、ヤフオクで売ってしまっていた。

そのあとドンキに行って、折りたたみイスを探した。いい感じのイスはなく、タワレコに戻り、タワレコオリジナルの小さな折りたたみイスを買った。やや値は張ったけど、これが一番良い感じだった。

 

しかし痛い出費。こういう買い物をしなければならないと分かっていたので、めんどくさいモードがさらに強まっていた。

 

大宮から新幹線に乗り、越後湯沢に到着。駅からバスに乗り、17時すぎに現地に着いた。

そんなに激しくはなかったけど、雨が降っていた。レインコート上下を着た。地面はやはり長靴が必要だった。

 

屋根のあるレッドマーキーで折りたたみイスを出して、座って時間をつぶした。人が多くて、外は雨が降っている。ゆっくりできそうな場所はない。「こんな場所に3日もいるなんて、俺には無理だなー」と思いながら、約1時間後、小雨のなか、野外のグリーンステージに向かった。

 

まだ人は少なかった。前から5列目ぐらいに、またイスを出して、座って待った。このイスは正解だった。小さいし、軽いし、これからもなにかと使えそうだ。

 

30分後ぐらいにコーネリアスが始まった。

数日前にケーブルテレビのライブ映像で見た布陣。4人。非常にコンパクト。今回は、ベース兼シンセの、バッファロードーター大野さんの存在がでかい。

 

音符の、点と点のあいだに、メンバーそれぞれがビシビシ音を落としてくる。その音に、体が痙攣を起こすように反応し、気持ちいい。10年前とあまり違いは感じなかった。

 

30分ほどそんな感じのステージが続いた。ホワイトステージが気になり始めた。

まだ小沢くん開始まで40分ほどあった。当初は20分ぐらい前になったら移動しようと思っていた。

でも、このままここにいても、さほどワクワクするものはなさそうだと思い、気もそぞろになってきた。

新曲が聴きたかったけど、もういいやと思って、グリーンステージを抜け、ホワイトステージへと向かった。

 

ホワイトステージへ向かう行列は尋常ではなかった。普通に歩けば10分ちょっとのイメージだったけど、30分弱かかったと思う。

 

すでに入場規制がかかっていた。ホワイトステージの敷地に入ることはできたが、「止まらずに前へ進んで、抜けていってください!」と係員が声を上げている。そう言われても、前へ進む人は少なくなり、自然に渋滞が発生する。人波が揺れ、「危ない!」という声も飛び交う。満員電車のような状態。もう一歩も動けず、左右前後から押される波に、身をまかせるしかなかった。

 

タイムテーブルを見たとき、コーネリアスと小沢くんの時間がずらしてあるのを見て、嬉しく思った。でも「オザケンがホワイトってどうなの?」という疑問はあった。

 

敷地の後方、ぎゅうぎゅう詰め、人波は落ち着かないまま、ライブは始まった。

小さいながらも、かろうじて小沢くんの姿が見えた。スクリーンがあったので、これで見ることができたらいいやと思っていたけど、ステージは映されず、歌詞がずっと出されていた。

 

女性はなにも見えず可哀想だなと思った。でも、聴こえてくる曲はどれも良くて、ステージが見えなくてもみんな楽しそうにしていた。

 

しかし次第に離脱者が増えてくる。つらそうな顔をして、後ろへとさがっていく人たち。子供連れも多かった。当たり前だ。耐えられるわけがない。

 

自分も苦しくなってきた。誰もが苦しかったと思う。でもあの曲、この曲、やはりたまらない曲のオンパレード。

 

泣きそうになってしまう曲もあった。このまま聴いていたい。でも苦しくて、もう早く最後の曲にならないかと願った。

 

9時過ぎ、ライブは終わった。雨が激しくなってきた。

「このあと11時から別ステージで、全部違う曲でやるので、全員来てください」と小沢くんは言っていた。当初は行くつもりでいた。

でも「もういいや。帰ろう」と決めた。

 

「今後この場所には、もう自分が求めるものは出る気がしない。最後にいいものを見ることができた」と思った。

 

出口へ向かう途中のグリーンステージで、昔から苦手なエイフェックス・ツインが、ステージから無数のレーザービームを放ちながら、地獄みたいな電子音を出していた。さらに帰りたくなった。

 

今日中に帰るつもりでバスに乗った。

バスに乗ってから、最終の新幹線に間に合わないことをスマホで知った。

 

レインコートは水がしみてきて、もう用を成していなかった。駅で一晩明かすことになるのか、やはり寒くなるのだろうかと不安になった。

 

駅に着き、商店街マップを見た。「ゆざわ健康ランド」という場所を見つけた。歩くと少し遠そう。空いてるかも分からないので、電話してみた。

「これから人、増えるでしょうけど、まだ仮眠室は空いてますよ」とのこと。タクシーで向かう。

 

ふるーい健康ランドだった。でもお風呂は温かくて、心が休まった。仮眠室には、雑魚寝のような状態で、50〜60人ぐらい横になっていた。とりあえず場所だけ確保して、受付に行きカップラーメンを買った。

万代バスセンターのレトルトカレーが売っていて、「おっ、やっぱ新潟!」と一喜した。しかし、600円!レトルトなのにありえねー!と思って買わなかった。あれは定価なのだろうか?

 

カップ麺を座敷で食べ、仮眠室で横になった。昔だったらこんな場所で寝るなんて不可能だったなー、でも雨風をしのげるってほんとありがたいことなんだなーと、「ゆざわ健康ランド」に感謝した。

 

横になったまま、色んなイビキの音を聞いた。まあ眠れなくてもいいやと思っていたので、轟音イビキもさほど不快ではなかった。

色々、思いをめぐらした。でも考えることはネギッコのことばかりだった。そしていつのまにか寝ていた。

目が覚めると6時すぎで、6時半に駅へ向かう無料バスがあることを思い出し、そそくさと帰り支度をしてバスに乗った。

 

その日の午後にアリオ鷲宮でネギッコがリリイベをやる予定だった。寄って帰ろうかなと当初は元気なプランを考えていた。でもそんな気力もなく、まっすぐ家に帰った。

 

後日ネットで「ぼっち中年フジロッカー」という記事を見て、いやーな気持ちになった。

 

さよならフジロック、ネギッコが出るその日まで。