【曳家で移動した旧小諸本陣。

標柱のとなりのカラーコーンの位置から北(左)へ4m移動した】

 

 

 小諸市はこのほど、同市市町の国重要文化財「旧小諸本陣」の保存修理工事で、効率的に作業を実施するため、建物を壊さずに位置を移動させる「曳家工事」を行った。


 解体工事中の旧小諸本陣主屋は旧北国街道に面している。

保存修理工事の素屋根建設のため足場などのスペースを確保すべく、主屋を北へ4m、西へ1・5m移動させた。

 曳家工事は建造物の修復にかかる高度な技術となることから市は公開。

見物人らは重さ約100t建物が、ゆっくりと動く様子を見守った。
 

 事前に、鋼材を建物の間に通して土台を作り、鋼材と柱を固定。

ジャッキで持ち上げ、建物を動かすためのレールを敷くなど準備。

 この日は、作業員たちが、ワイヤーをチルホールにより手動で巻き上げて曳き、建物をレール上のコロ(鉄の棒)で転がしながら、慎重に移動させた。
 

 曳家工事を担当した佐久市の専門業者三光組の須田泰仁社長(59)は「普段より大きな規模の建物で、重要文化財ということもあり、建物を傷めたり、かしがったりしないよう慎重に作業した」と話した。


 見学した信州大学大学院工学専攻修士課程2年の髙松祐希さん(25)は「曳家自体なかなかお目にかかれない。知識としてはあったけれど、建物の部材に考慮して、どうジャッキアップするかなど、実際見ないとわからない。現場を見れたのがいい経験になった」と話した。
 

 建物は調査や修復が終わり次第、元の位置に戻され、令和9年度中に保存修理事業が完了する予定。