【安楽寺で船木さんのパフォーマンスを

見る参加者】

 

【大門通りでの写真展示を見る宮沢さん】

 

【鐘楼を舞台に植川さんの演奏で

山本さんがダンス】

 

【 飯塚さんのウェルカムダンスで開幕】

 

 「別所温泉をクリエイターのメッカに」―。

 上田市の別所温泉でこのほど3日間、「別所温泉芸術祭ZERO」が開かれた。

 

 長野県内外で活動する若手アーティストらが、同温泉の寺社仏閣やまちなかを舞台にダンス、音楽、写真展示、太鼓やライブペイント、ちんどんなどのパフォーマンスを繰り広げた。

 

 別所温泉旅館組合や実施団体などでつくる実行委員会が主催。

「コロナ禍に負けない、観光地の再起をかけた新たなスタート」として初めて開催。 

 

 同組合は、コロナの影響で観光客の減少に苦しんだ温泉地の活力を取り戻そうと新たなカタチを模索。

首都圏からほど近く、歴史や自然のあるコンパクトな温泉街であるなど"滞在制作"

や"創作活動"の場に適したこの地の特性を生かすべく、前年度にはクリエイターを誘致するモニターツアーも実施した。
 

 同組合の倉沢晴之介組合長(42)は「現代アートの息吹で別所温泉の新たな魅力を発信できれば。普通は会えない人との出会いもある。イベントや活動を通じ、新たに訪れる旅人やこの地で生活を営む人たちの創造と交流の場として盛り上げていきたい」と話す。


 北向観音堂の境内で行ったオープニングセレモニーでは、ディレクターでダンサー・振付家の山本裕さん(40)=東京=が出演アーティストを紹介。

 トークで各プログラムの魅力などを伝え「芸術祭を盛り上げていきたい。まちで見かけたら一緒に楽しんで」と呼びかけた。
 

 ダンサーの飯塚友浩さん(38)=東京=のウェルカムダンスで芸術祭が開幕。

カウボーイハットをかぶり、北向観音堂に一礼して登場すると、曲に合わせてタンバリンを叩きながら即興でダンス。

 「この場所で踊れる胸の高まりや衝動を表現して踊った。新しいことを起こそうとしている別所の人たちにパフォーミングアーツを選んでもらえてうれしい」と話した。


 山本さんは「温泉が好き。ここの空間は特殊で出会う人が魅力的。国内外のアーティストを呼んで、この地の風土や歴史に影響され、地域に喜んでもらえるような創造活動ができれば。新たな人の流れもつくりたい」と話していた。
 

◇  ◇
 

 北向観音大門通りでは、別所温泉の店と人を撮影した写真展示があった。

大門通りで土産店「諏訪商店」を営む宮沢稔さん(77)は、展示を見て「みんな商売している人たちで飾らない素朴な街並みが写っている。知り合いもいて、普段と違って見える。いいポーズで笑っている」と話した。
 

 北向観音鐘楼を舞台にしたパフォーマンスでは、植川縁さんの演奏で山本さんがダンス。

鐘楼から降り注ぐサクソフォンの音色に合わせて地上で踊り、クライマックスで鐘楼を駆け登って、奏者と鐘の間をダンスが錯綜する不思議な光景を創り出した。
 

 安楽寺園庭では、コンテンポラリーダンサーの船木こころさん(東京)が庭の空間で花とダンスのコラボレーション「gaku」を披露。

踊っていくうちに花の色彩が皮膚に付着し一体化していくパフォーマンスで、花びらを支える外側の萼(がく)をイメージ。「内と外が影響し合って次第に境界線が溶けていく様子」を表現した。

 地域(内)の人と来訪者(外)が影響し合い、彩りある未来を創り出すことを暗示しているようだった。
 

 踊りを見た松本市の渡辺せらさん(8)は「花の色がなんで体に付くんだろう」と不思議がっていた。
 

 このほか、古民家カフェでカナキティさんの舞踏。

 あいそめの湯で、音楽とダンスの「どうぶつ音楽会」。

 音楽隊と学生らが別所温泉エリアをパレードする「ちんどんバルーンパフォーマンス」。

 別所神社でメインパフォーマンス、和太鼓バンドGOCOO出演「Daichi no Kioku」や山本さん、バルーンデザイナーの神宮エミさん、画家の越ちひろさんらの総合コラボレーション「From ZERO」があった。