【20周年コンサート】

 

 

 

【8mの吹き抜け】

 

 

 

 

 

 小諸市乙の古民家食事処で国の登録有形文化財の「中棚荘別邸・はりこし亭」が今年、創業20周年を迎えた。

 

 

 建物は明治元年に完成した古民家で、もとは旧北国街道沿いの西原地籍にあった。

 建設当初、持ち主は藍染業を営んでおり、住み込み職人の住居と仕事場を兼ねていた。
 延床面積は356㎡におよび、30㎝角の通しの大黒柱をはじめ、上がり框などにケヤキがふんだんに使用された。

これらは江戸時代末期、小諸城に染物を納入した際、代金の代わりに城内の立ち木を譲り受けたものという。
 

 平成に入り、当時の持ち主一家は建て替えを決めた。

同時にNPO法人小諸街並み研究会の働きかけもあり、建物を残す方向が模索された。

2000年暮れ、温泉旅館「中棚荘」の5代目荘主、富岡正樹さん(66)が建物を引き受けることを決断。

2001年、中棚荘敷地内に移築復元された。

元の造りを踏襲しつつ、立派な梁を見ることができる8mの吹き抜けや、約60畳の広間を設けるなど、壮観さを感じさせる建物となった。
 

 2002年に食事処「はりこし亭」として開業。

店で使用する座布団や衝立の柄は、もとの持ち主が保管していた藍染の型を使用したという。

食事に加え、コンサート、結婚式、作品展示なども行われている。

2006年に市内第1号の「国登録有形文化財」となった。
 

 

 富岡さんは「初めて見学に行ったその日に引き取ることを即断した。風格がある立派な建物で、取り壊されるべきではないと考えた。移築などには一般一戸建て家屋2軒分という費用がかかったが、今でいうクラウドファンディング、会員制度を活用した」と振り返る。

 

 歴史的な建造物の保存については「はりこし亭は、維持管理が成功しているほうだと思う。建物を残すだけでは難しさがあるため、うまく活用しながら維持することが重要だと考えている」と話した。
 

◇  ◇
 

 はりこし亭では、8月、第一線で活躍するギタリスト渡辺香津美さんらによる、創業20周年コンサートが行われた。

 渡辺さんは中棚荘の常連客で「はりこし」という名称の発案者。

毎年この会場でコンサートを行っており、今回の20周年コンサート開催も持ち掛けた。
 

 本番、当日は、俳優でベーシストの中村梅雀さん、漫画「岳みんなの山」などの作者の石塚真一さん、アナウンサーの宮本隆治さん、ピアニストで渡辺さん夫人の谷川公子さんがゲスト出演。

演奏やトークでステージを盛り上げた。 
 

 渡辺夫妻とゲスト出演者に接点は無かったが、共に中棚荘に縁があったという。

 中棚荘女将の富岡洋子さんが個々に呼び掛けて、共演が実現した。