【信州産カラマツの薪を持つ木村さん】
【加工される前のカラマツの丸太】
長和町古町の齋藤木材工業株式会社は先月から、「信州産カラマツの薪」のオンライン販売を開始した。
同社は創業160年で、現在はカラマツの集成材製造を主事業としている。
今回、新たにEC事業(電子商取引)に着手し、その第一弾として薪のオンライン販売を開始。
公式ECサイトで注文を受け付けている。
販売する薪は、県内産のカラマツが原料。
長さは25㎝と35㎝の2種類で、販売容量は9㎏と18㎏。
脱脂乾燥を行っており、含水率は10%前後。
火持ちは、スギやヒノキに比べて格段に長く、広葉樹に比べると短い。
着火が容易で広葉樹と比べ火力が強いため、焚き付けが苦手な人でも扱いやすいというメリットがある。
焚火やキャンプ、室内の薪ストーブ、テントサウナのストーブなどの利用が想定されている。
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EC事業開始の目的は、事業多角化による企業経営安定化の推進と、カラマツ丸太の最も高い価値を見出すこと。
背景として、同社は国産材を使った大型木造建築物に数多く携わり国内有数の実績があるが、売上の大半は建築関係で取引は企業中心という収支構造で、異なる収益源泉確保に余地があった。
また、集成材はカラマツの丸太を買い取って製造しているが、集成材に適する部分は一本の丸太のうち3割程度。
残りの7割は、おがくず、ウッドチップ、ボイラーの燃料などとして卸しているが、付加価値が低く収益への貢献度は低かった。
今回、この7割の一部で薪を製造する体制を整え、EC事業に着手。
会社敷地内専用工場で生産した薪を、ECサイトで販売し、顧客ターゲットは個人に拡大。
丸太の価値を最大化するとともに、林業従事者の賃金上昇や人材確保、放置林の減少や山林から得られる所得向上、健全なカラマツ林育成とカラマツの安定仕入れなどにつなげたい考えだ。
EC事業開始にあわせて、森林に関連するコンテンツを提供する運営メディアをウェブ上に開設した。
森に関する興味や知識を深めてもらうとともに、ECサイトに誘導する目的がある。
同社経営戦略室の田島忍室長と木のみらい室の木村洋介さんによると、長野県はカラマツが多く、県内森林面積の50%以上を占めるという。
カラマツ材はかつて、建築資材としては扱いにくいとされたが、耐久性の高さから土木資材として重宝された。
近年は、集成材に加工することで、建築資材としての有用性が見直され、価値が高まっている。
田島室長は「カラマツは県を代表する木だが、地元の人が触れる機会は少ないと思う。緑豊かな山を次の世代につなぐためにも、薪を地元の人に使ってもらい、知ってもらうきっかけになればうれしい」と話していた。