【デザインした図柄を彫って型紙にする】
【型を彫る市川さん】
【型】
【作品】
「子育ての時期もやめずに根気よく続け、気づけば40年余となりました。あきらめないで長く続けてきてよかった」と振り返る。
上田市の染織家、市川洋子さんは日本の伝統的な染色技法のひとつ「型染め」を手がけてきた。
型染めは、渋紙にデザインした模様を彫りぬいた「型紙」と、防染糊を用いて文様を染め出す技法。世界の染色技法の中でも最も精緻な文様を染め出す技術とされている。
市川さんが型染めと出会ったのは中学生の時。近くの骨董屋さんで型染めの大家、人間国宝の芹沢銈介さん(1895―1984)の絵ハガキを見たのが最初の出会い。
「感動したのを覚えている」。
大学を卒業後、東京で会社勤務をしていたが、結婚のため上田に戻った。
いつか型染めをしたいと思っていたため、地元の染織家に手ほどきを受けた。
型染めは、沖縄の紅型(びんがた)が有名だが「同じ技法でもこの地の風土に合った優しくて落ち着いた感じの型染めがしたい」と、野山の花をスケッチ。
葉や花の特長をとらえデザインする。
「型染めの工程はどれも大変で気が抜けない作業ですが、デザインが8割りです。最後に糊を落とした時、水の中から型が浮かび出たときがうれしい瞬間」という。
染色をはじめて16年目の1992年、「第1回長野県染色作家展」に型染めの帯を出品、染色作家協会賞を受賞した。
以後、毎年出品。
98年の同展第6回展で大賞、同12回展には知事賞、同15回展に優秀賞を受賞した。
「これからは手間がかかっても〃残せるもの〃を作りたい」と、柿渋を使って絞り染めのストールを作るなど様々な技法に挑戦している。
◇ ◇
市川さんは染色のかたわら信大繊維学部の農場で養蚕のボランティア「蚕飼姫(こがいひめ)プロジェクト」のメンバーとしても活動している。
このプロジェクトは10年ほど前、養蚕を復活しようと上田紬織物協同組合、信州大学、上田商工会議所が立ち上げた。
蚕飼姫が作った繭から糸や真綿を作る「繭友」というグループを作った。
繭友は蚕都上田を知ってもらおうと、小学校で生糸の座繰りや角真綿作りの体験、上田紬の原料の説明などして普及活動にも努めている。
今後の夢は「実母、故秋山百枝さんの版画と長女の直井恵さんの切り絵、長女の夫・写真家の直江保彦さんの作品でファミリー展を開くこと」という。