「手書きの字には温かみがあり、その人らしさが出る。同じ文でも気持ちが伝わり、読む人の心に響くのではないかと思います」。
浜村敏雄さんは東京ペン字教育会正師範で同会上田支部長を務める。
上田市出身。小学生のころはお手本を見ながら鉛筆で、一画一画をていねいに書く「かきかた」の授業が好きだったという。
信州大学繊維学部に進んでからペン字の通信講座を受講し「毛筆と比べると制約が少なく、実用的で気軽に練習できる。ペン字は自分の性格に合っている」と実感。
その後も仕事をしながら練習を続け、46歳で文部省認定硬筆書写検定1級に合格し、日本技能検定協会連合会長賞を受賞した。
仕事を退いた後にペン字講座を開講。
楷書や行書、はがき文、手紙文などテーマに沿って手本を用意し「シンプルな線で読みやすい字を書けばいい」と指導する。
一昨年の夏に大病を患い2回の手術に耐えた。
しかし、闘病を支えてくれた妻が昨年12月、病名を告知されてからわずか4カ月で他界。
「脱力感しかない」状態はいまも続くが、妻を看病しながら時間を見つけては一首ずつ書いた「小倉百人一首」をペン字の教本として一冊にまとめることができた。
4月からは生涯楽習上田自由塾の講座を再開し、長野市のカルチャーセンターでも再び講師を務める予定だ。
「人に教えることは張り合い。ペン字の仕事があるから現状を乗り越えられる」と確信する。