【ギャラリートーク】

 

 

【師弟の絆を深めた深水(左)と映雪】

 

 

【映雪の作品「立秋」】

 

 

 小諸市立小諸高原美術館・白鳥映雪館はこのほど、「『立秋』伊東深水と白鳥映雪の師弟の絆」と題した、白鳥映雪作品の「ギャラリートーク」を行った。

  絵画を学ぶ市民など、約40人が訪れた。

 

 日本画家、故・白鳥映雪(1912―2007)は、北佐久郡大里村(現・小諸市)出身。

 作品を常設する同館は、展示では伝わらない作品の背景や知られざるエピソードを伝え、作品に関心をもってもらおうと初めて企画した。


 この日は、美人画の名手として名を馳せた日本画家で、師と仰いだ故・伊東深水(1898―1972)との交流や女性画の創作背景について舟田均さんが解説した。

舟田さんは、晩年の映雪と画集の企画を通じて交流があった。

 現在は「白鳥映雪研究者」として講演活動を行う。


 深水は、1945年から4年間、小諸に疎開した。

従軍画家だった映雪は帰国後、深水を慕い小諸に疎開。

制作助手として深水の傍らで絵画を学んだ。

戦後、鎌倉のアトリエで制作した「立秋」で、1950年に「日本美術展覧会(日展)」の”特選”を受賞。

「立秋」は、夕暮れ時、日本の復興を三越ビルの屋上から眺める3人の女性を描いた作品。

後に「深水の後継者たる地位を決定づけた作品」として知られる。映雪は、日展内閣総理大臣賞、恩賜賞日本芸術院賞などを受賞。1997年に日本芸術員会員に選ばれた。

晩年は病に倒れ、95歳で逝去するまで活動を続け「郷土の文化、芸術の発展のために」と、同館設立にあたり多くの作品を寄贈した。


 舟田さんは「晩年は、利かなくなった右手から左手に筆を持ちかえ、鋼のような精神力で描き続けた」などのエピソードを紹介。「見た人の気持ちを浄化させるような絵を描きたいというのが、先生の座右の銘。作品を紹介しながら、その精神性をも伝えていきたい」と力を込めた。白鳥純司学芸員は、作品「立秋」に秘められた緻密な構図と、色彩の手法について解説した。


 市内在住の長沢省一さん(80)は「スライド映像から、家族や人間性が伝わってきた。私自身、鎌倉に住んでいたこともあり懐かしさを感じた。素晴らしかった」と話していた。


 同館は、次回ギャラリートークを8月21日に予定。

 映雪の代表作の一つ「追想」にスポットを当てる。