山口県下関市の行政書士アイデアル綜合法務事務所の角です。
今回は、改正相続法と信託について書こうと思います。
当事務所において、よくある御相談のうちの一つは、「配偶者は相続があった場合であっても自宅建物に住み続けられるようにしたい」というものです。
しかし、相続財産に占める割合のほとんどを自宅建物が占めている場合が問題となります。
例えば、自宅不動産が2,000万円、預貯金財産が400万円の場合で相続人が配偶者及び子の二人であるとします。
この場合、各人の法定相続分は1,200万円となります。そうすると、配偶者は自宅不動産を相続すると800万円を多く相続することになります。また子は預貯金全額を相続したとしても800万円が不足します。
さらに、子の遺留分も侵害することになります。遺留分は(法定相続分×2分の1=600万円)
つまり、200万円を侵害している状態になります。
この場合の対応策として
①不動産を売却して現金化すること
②不動産を共有名義にすること
③配偶者に資産があれば、遺留分侵害額の200万円を支払うこと
などが考えられます。
しかし
①に関しては先祖代々受け継いだ家を失うことになります。
②の場合は、建物の建替等につき意見の対立等により紛争になります。特に金融機関に融資をお願いしても、過半数、又は全員の同意が必要となる場合がありますので、対立が生じれば何もできないことになります。
③配偶者に資産があるとは限らず、また今後の生活に不安を抱えることになります。
また生前に相続人となる方々に説明をし、納得をしてもらうことも大切ですが、この場合も実際の相続が発生したときには、各人の事情(借金がある、車を買った、子供ができた等)から、不確定となる事由です。
そこで、現段階では「信託」の活用をお勧めしております。
信託とは何かにつき詳細に記載すると、時間が足りない為、大まかに記載します。(実際に信託の何が難しいかというと、信託制度を理解していただくことです。)
信託(家族信託)とは、財産管理の一つの手法です。
特定の目的(「本人亡き後の配偶者の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付や本人亡き後の配偶者の居住建物を確保すること等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族や知人に託し、その管理や処分を任せるというものです。
つまり①委託者(本人)が②受託者(親族・知人)に③受益者(配偶者等*本人もあり得ます)のために、財産管理をしてもらうというものです。
*ここで、結局は相続時に上記と同じことになるのではないか?と疑問に持たれる方も多いかと思いますが
信託を利用した場合は、信託に活用する財産は「誰のものでもない財産」になります。(イメージとして掴んでくだされば結構です。)
ここで、えっ?となると思います。
信託の特徴の一つでもある「財産隔離機能(倒産隔離機能)」といわれるものです。
従って、信託財産は信託の目的のために活用され委託者(本人)であっても自由に財産の処分等をなしえないのです。
さらに、受託者(親族・知人等)も法規制により、自由に信託財産を処分できないようになっています。おおまかに説明しますと受託者監督人という受託者を監督する者を選任したり、受益者代理人を選任することで受託者を監督するという機能があります。
*但し、不動産等の名義は受託者になります。
このように信託を活用すると、本人の不動産は本人が亡き後も配偶者が亡くなる等の信託終了事由が発生するまで安心して居住できるようになります。また「誰のものでもない財産」であるので、遺産分割の対象からは除外されます。
*正確にいえば、信託設定に伴う受益権は相続の対象にはなりますが、多くの場合、委託者本人の考えで「受益権は相続により承継しない」という構造になっています。(ここは聞き流していただいて結構です。)
正直、まだまだ説明が必要になりますが、大まかに捉えて頂ければと思います。
信託の活用は、本人亡き後の配偶者の問題や、本人亡き後の障害をもつ子の生活を確保するために活用できるものです。そして信託の内容も柔軟に定めることができます。(その柔軟ゆえに2~3回の面談で信託設定をすることは非常に難しい。)
特に、相続法が改正されて「配偶者居住権」が新設された場合は、上記の信託設定の負担もある程度減少または不要になるものと思います。
*少し踏み込んで(飛ばして頂いて結構です。)
信託財産は本人のものではなくなるので、本人が死亡したときでも本人の遺産にならず、遺産分割も不要となります。
また、実際に本人が死亡したときは遺留分の問題は残ります。なぜなら、信託された不動産も遺留分計算には含まれるからです。この場合は、上記のような遺留分の問題に対応するため複層化した受益権を設定します。(例えば、子も受益者に含めるが元本受益権のみとする。)そうすることで遺留分の問題に対応が可能です。
信託の活用により、遺留分に関する問題に対応が可能になり、遺留分をなくすこともできるようになりました。但し、改正相続法では遺留分を積極的な権利としての位置づけをしています。
本人(遺言者・信託委託者)の意思の尊重に比重を置くと、遺留分をなくす信託の活用も推進できるものです。
改正相続法や相続人のことに比重を置くと一定の保護も必要なのだろうとも思います。
非常に悩ましい。。。
行政書士アイデアル綜合法務事務所
代表 角 恒太