WTOサイトの活用法
クリスマスの季節ということでたまには人の役に立つ知識を書いてみます。
クリスマスにプレゼントを贈るという認識が世界共通のものなのかどうか疑問ですが...
一ヶ月ほど前に私はこのブログにいくつかのリンクを追加しました。
日本の首相官邸・各省庁のサイトは日本や世界の政治・経済の動きを捉えるためには非常に有用なサイトであり、インターネットでよくある政治や経済についての個人や団体のサイトより、はるかに役立ちます。
情報の質・量ともに国内最高レベルであることはもちろんですが、更新の頻度もきわめて高く、外務省HPでは外交交渉の合意内容などが合意した日から数日以内に日本語に翻訳されてアップされます(外務省訳が基本的に公定訳となります)。
したがって各省庁が政府の立場で発表している文書であるということを心に留めて読めば非常に有用な情報源になり得ます。
次に在日米国大使館ですが、これはアメリカ国務省のかわりに載せています。
英語がストレスなく読める方であればDEPARTMENT OF STATEのサイトの方がより多くの質の高い情報が得られます。
最後にWTOですが、これは日本語でWTOを扱ったサイトがあまりないためにWTOのサイトをそのまま載せています。
WTOのサイトは有用な情報が満載であり、WTOの研究をしようと思ったらサイトにある文書だけで事足りるといっても過言ではありません。
今回はこの情報満載なWTOサイトの有効な使い方を一部紹介したいと思います。
まずWTOサイトは英語、フランス語、スペイン語から言語選択できますが、ここからはすべて英語を選択したとして説明していきます。
WTOサイトには種種の情報があり、私にもまだ未知の部分もあるのですが、今日はWTOを知る上で最も大切と言える、WTOの紛争解決機関に提訴された事案に対してWTOのパネル及び上級委員会が下した裁定及び勧告の文書の探し方を説明します。
まずWTOのトップページの右上にある「DOCUMENTS」にカーソルを合わせてください。
カーソルを合わせるとメニューが出てくるのでその中から「DOCUMENTS GATEWAY」を選択します。
そして新しく開いたページの「Legal texts of the WTO agreements」にある「Get the legal texts from Documents Online 」をクリックします。
ここで別ページで開くのがWTOで文書を探す際の基本になるページです。
文書の検索方法には一般の検索エンジンと同様に様々な手法が用意されているのですが、ここでは条件を指定して検索する方法を説明します。
条件を指定して文書を検索するにはメニューにある「SIMPLE SEARCH」もしくは「ADVANCED SEARCH」をクリックします。
あとは項目ごとに条件を指定して検索していただければいいのですが、試しに最近日本のWTO違反が認定されたJAPAN APPLES事件について調べる場合について説明します。
まず当事件のSymbolである「WT/DS245/」を事前に知っている場合には「Documents symbol」に「WT/DS245/」と入力して検索します。
この「WT/DS245/」はそれぞれWTOのWT、Dispute Settlement(紛争解決)のDS、事件番号245を表しています。
また個々の文書のSymbolとして「WT/DS245/」の後ろに「R」や「AB」、数字が付きます。
これらは「WT/DS245/R」は当事件に関するパネル報告を「WT/DS245/AB/R」は上級委員会報告を指します。
国内裁判所風に言えばパネルは第一審であり、上級委員会は第二審、かつ最終審になります。
またパネルは事実審であり、上級委員会は法律審(注)です。
そして「WT/DS245/1」など最後に数字が付いたものは報告の付属書になります。
したがって事件内容について知るためには最後に「R」の付いた文書を読む必要があります。
長さは事件によって異なりますが英文で1事件100~300ページ程度の間に収まると思います。
パネル報告はWordで一面にぎっしり文章が書かれていますが、上級委員会報告はダブルスペースで書かれており、比較的楽に読むことができます。
また事件のSymbolがわからない場合には「Document title」や「Countries」にキーワードを入力して検索します。
Japan Apple事件の場合には「Countries」に「Japan」、「Document title」に「Apple」を入力して検索します。
これで検索方法の説明は終わりです。
WTO違反が認定される件数はだいたいUS、EC、日本の順で多く、WTOは日本にとって非常に馴染み深い国際機関です。
馴染み深いと言っても違反が認定される件数が多いということで不名誉な意味で馴染み深いのですが...
また環境問題と経済問題との関係、アンチダンピング、セーフガード、などの今世間を賑わしているような話題についての報告もあるので興味のある方はぜひ一度読んでみてください。
アンチダンピングやセーフガードについての報告は非常に多く存在しますので、いくらでも見つかると思います。
環境問題と経済問題との関係では上級委員会報告後の実施措置のWTO適合性について画期的な判断が下されたUS Shrimp事件(WT/DS58/R,WT/DS58/AB/R,WT/DS58/RW,WT/DS58/AB/RW)をおすすめします。
WTOについての事件報告を読むと日本は国際法を遵守しているなどという妄言は吐くことができなくなります。
日本やその他の先進国が自国の経済を守るためにどれだけ悪質な方法で貿易制限をしてきたのか、それを知ることはこれから日本が国際社会の一員として、世界経済の発展に貢献しようとするとき、必ず役に立つと考えます。
またWTOの報告書を読むことで近年盛んなFTA交渉の問題点も見えてくると思います。
良くも悪くもWTOはこれからも世界経済体制の中心であり続けると考えられます。
世界の中の日本と言う視点で物事を考えるためにWTOについて学ぶことは非常に有意義であると考えます。
以上WTOサイトの活用法について説明しました。
注)
事実審は事実関係の認定と法律の解釈・適用によって判断が下されるのに対して、法律審では事実関係の認定はせず、法律の解釈・適用のみが審査され、判断される。
国内裁判所では最高裁が法律審に当たるが、最高裁で新たな事実認定が必要になったときには高等裁判所などに差し戻されることになる。
WTOには差し戻しに関する規定がなく、上級委員会で新たな事実認定が必要になった場合どうするか、問題になっている。
この問題については訴訟経済などについても考慮する必要がある。
クリスマスにプレゼントを贈るという認識が世界共通のものなのかどうか疑問ですが...
一ヶ月ほど前に私はこのブログにいくつかのリンクを追加しました。
日本の首相官邸・各省庁のサイトは日本や世界の政治・経済の動きを捉えるためには非常に有用なサイトであり、インターネットでよくある政治や経済についての個人や団体のサイトより、はるかに役立ちます。
情報の質・量ともに国内最高レベルであることはもちろんですが、更新の頻度もきわめて高く、外務省HPでは外交交渉の合意内容などが合意した日から数日以内に日本語に翻訳されてアップされます(外務省訳が基本的に公定訳となります)。
したがって各省庁が政府の立場で発表している文書であるということを心に留めて読めば非常に有用な情報源になり得ます。
次に在日米国大使館ですが、これはアメリカ国務省のかわりに載せています。
英語がストレスなく読める方であればDEPARTMENT OF STATEのサイトの方がより多くの質の高い情報が得られます。
最後にWTOですが、これは日本語でWTOを扱ったサイトがあまりないためにWTOのサイトをそのまま載せています。
WTOのサイトは有用な情報が満載であり、WTOの研究をしようと思ったらサイトにある文書だけで事足りるといっても過言ではありません。
今回はこの情報満載なWTOサイトの有効な使い方を一部紹介したいと思います。
まずWTOサイトは英語、フランス語、スペイン語から言語選択できますが、ここからはすべて英語を選択したとして説明していきます。
WTOサイトには種種の情報があり、私にもまだ未知の部分もあるのですが、今日はWTOを知る上で最も大切と言える、WTOの紛争解決機関に提訴された事案に対してWTOのパネル及び上級委員会が下した裁定及び勧告の文書の探し方を説明します。
まずWTOのトップページの右上にある「DOCUMENTS」にカーソルを合わせてください。
カーソルを合わせるとメニューが出てくるのでその中から「DOCUMENTS GATEWAY」を選択します。
そして新しく開いたページの「Legal texts of the WTO agreements」にある「Get the legal texts from Documents Online 」をクリックします。
ここで別ページで開くのがWTOで文書を探す際の基本になるページです。
文書の検索方法には一般の検索エンジンと同様に様々な手法が用意されているのですが、ここでは条件を指定して検索する方法を説明します。
条件を指定して文書を検索するにはメニューにある「SIMPLE SEARCH」もしくは「ADVANCED SEARCH」をクリックします。
あとは項目ごとに条件を指定して検索していただければいいのですが、試しに最近日本のWTO違反が認定されたJAPAN APPLES事件について調べる場合について説明します。
まず当事件のSymbolである「WT/DS245/」を事前に知っている場合には「Documents symbol」に「WT/DS245/」と入力して検索します。
この「WT/DS245/」はそれぞれWTOのWT、Dispute Settlement(紛争解決)のDS、事件番号245を表しています。
また個々の文書のSymbolとして「WT/DS245/」の後ろに「R」や「AB」、数字が付きます。
これらは「WT/DS245/R」は当事件に関するパネル報告を「WT/DS245/AB/R」は上級委員会報告を指します。
国内裁判所風に言えばパネルは第一審であり、上級委員会は第二審、かつ最終審になります。
またパネルは事実審であり、上級委員会は法律審(注)です。
そして「WT/DS245/1」など最後に数字が付いたものは報告の付属書になります。
したがって事件内容について知るためには最後に「R」の付いた文書を読む必要があります。
長さは事件によって異なりますが英文で1事件100~300ページ程度の間に収まると思います。
パネル報告はWordで一面にぎっしり文章が書かれていますが、上級委員会報告はダブルスペースで書かれており、比較的楽に読むことができます。
また事件のSymbolがわからない場合には「Document title」や「Countries」にキーワードを入力して検索します。
Japan Apple事件の場合には「Countries」に「Japan」、「Document title」に「Apple」を入力して検索します。
これで検索方法の説明は終わりです。
WTO違反が認定される件数はだいたいUS、EC、日本の順で多く、WTOは日本にとって非常に馴染み深い国際機関です。
馴染み深いと言っても違反が認定される件数が多いということで不名誉な意味で馴染み深いのですが...
また環境問題と経済問題との関係、アンチダンピング、セーフガード、などの今世間を賑わしているような話題についての報告もあるので興味のある方はぜひ一度読んでみてください。
アンチダンピングやセーフガードについての報告は非常に多く存在しますので、いくらでも見つかると思います。
環境問題と経済問題との関係では上級委員会報告後の実施措置のWTO適合性について画期的な判断が下されたUS Shrimp事件(WT/DS58/R,WT/DS58/AB/R,WT/DS58/RW,WT/DS58/AB/RW)をおすすめします。
WTOについての事件報告を読むと日本は国際法を遵守しているなどという妄言は吐くことができなくなります。
日本やその他の先進国が自国の経済を守るためにどれだけ悪質な方法で貿易制限をしてきたのか、それを知ることはこれから日本が国際社会の一員として、世界経済の発展に貢献しようとするとき、必ず役に立つと考えます。
またWTOの報告書を読むことで近年盛んなFTA交渉の問題点も見えてくると思います。
良くも悪くもWTOはこれからも世界経済体制の中心であり続けると考えられます。
世界の中の日本と言う視点で物事を考えるためにWTOについて学ぶことは非常に有意義であると考えます。
以上WTOサイトの活用法について説明しました。
注)
事実審は事実関係の認定と法律の解釈・適用によって判断が下されるのに対して、法律審では事実関係の認定はせず、法律の解釈・適用のみが審査され、判断される。
国内裁判所では最高裁が法律審に当たるが、最高裁で新たな事実認定が必要になったときには高等裁判所などに差し戻されることになる。
WTOには差し戻しに関する規定がなく、上級委員会で新たな事実認定が必要になった場合どうするか、問題になっている。
この問題については訴訟経済などについても考慮する必要がある。