大リーグのぜいたく税と累進性の支出課税 | ideamngのブログ

大リーグのぜいたく税と累進性の支出課税

アメリカ大リーグで今年の「baseball's luxury tax(ぜいたく税:CNN訳)」の金額と対象のチームが決まりました。

baseball's luxury tax」とは2003年度からアメリカ大リーグに導入された制度で、40名の選手登録簿に登録されている選手への年俸などの支払額の合計が規定額である1億2050万ドルを越えるチームに対し、規定額を越える部分について一回目の違反については22.5%、二回目の違反には30%、三回目の違反には40%の税率を乗じて得られる額を税として課し、そのお金は他のすべての球団に支払われるという制度です。

今回対象となったのは昨年に続いて選手への支払額が規定額を越えたヤンキースと、今年初めて規定額を越えたレッドソックスとエンゼルスです。

ヤンキースは二回目の違反なので規定額を越える額の30%、レッドソックスとエンゼルスは22.5%をそれぞれ支払うことになります。

この「baseball's luxury tax」についてレッドソックスのオーナーは、「この制度は各球団の経済的利益を得ようというインセンティブを傷つけないので、収入に対して課すのに比べて非常に生産的であり、実りがある制度である」という主旨の意見を発表しました。

私はこの「baseball's luxury tax」という、支出の合計額によって支出に対して異なる税率で税を課す制度は非常に画期的であると考えます。

日本で消費者の視点から支出に対して課される税として消費税がありますが、日本の消費税には逆進性という大きな問題を抱えています。

それに比べて年間の支出額の合計によって税率が変化するというこの制度では、この問題がうまく解決されています。

ただしこの制度を消費者のレベルで実現しようとすれば消費者一人一人の消費の監視が必要になり、国民一人一人に固有の識別番号をつけ、消費はすべてカードで行なうなどの手法をとらなければならなくなるなどの問題もあります。

また支出額に応じて税率が変動する支出課税を実施すると消費が鈍る可能性もあります。

しかしこの累進性の支出課税はレッドソックスのオーナーが言うように、より多い利益を得ようとするインセンティブを損なうことなく、大きな経済活動をしている人に対してより多い税金を課すことができる点で非常に有用であると思われます

今すぐには不可能だと思いますが、将来的な導入などを考えて検討してみる価値は十分にあると考えます。


注)
本文中のbaseball's luxury taxを「税」と呼称することは講学上は適切でないと思われますが、記述が煩雑になるのを避けるため「税」という呼称を用いています。