日本・マレーシア間のFTA交渉における農業分野の合意について
前にこのBlogで紹介した日本とフィリピンの間のFTA交渉に続き、日本とマレーシアとの間のFTA交渉も進展があったようです。
日比FTA交渉に見る日本の強気外交
追記:日比FTA交渉に見る日本の強気外交
まだ外務省のサイトには資料が掲載されていないために詳しくはわかりませんが、今回合意したのは以下の項目についてのようです。
A.マレーシア→日本の産品について
1.合板の取り扱いは数年後に再協議
2.バナナの無税枠(1000トン)を設定
3.マーガリンの関税を5年間で29.8%から25%に削減
4.合板以外の木材の関税削減
5.インドネシア産違法伐採木材の輸出防止に両国が協力して取り組む
B.日本→マレーシアの産品について
1.自動車の関税の削減・撤廃についてはこれからの議論の焦点に
今回の合意内容を見ると珍しく日本側が先にマレーシア側の要求のうちいくつかを受け入れたようです。
まず合板については実質上の白紙回答と言わざるを得ません。
実際のところマレーシアとの交渉では合板の取り扱いが自動車と並んで焦点になっていたので、数年後に再協議というのは日本側が最後まで合板の関税の削減・撤廃には消極的であったことが窺えます。
次にバナナの無税枠1000トンですが、日本のバナナの輸入量が100万トン弱(2002年)、マレーシアのバナナの輸出量が30万トン弱(同)であることを考えると、相当に少ないといわざるを得ません。
マレーシアのバナナの輸出量は近年減少傾向にあるのでマレーシア側がバナナの輸出にあまりこだわらなかったことも考えられます。
マーガリンや合板以外の木材の取り扱いについては自動車の合意内容次第といえます。
これから焦点になる自動車ですが、フィリピンとのFTA交渉でフィリピン側が即時又は段階的な関税の撤廃を受け入れたことを考えると、日本側はそれと同様の条件をマレーシアにも求めると考えられ、またマレーシアもそれに近い形で合意するのではないかと思われます。
ただし、マレーシアはフィリピンに比べて国内自動車産業を保護しようとする圧力が強く、フィリピンよりもう少し緩い関税削減率に落ち着くのではないかと思います。
しかし、今回の交渉で日本を交えた貿易交渉で農業分野が最初に合意に達したというのは画期的なことです。
農林水産省がFTA交渉における外国からの市場開放圧力に対するために日本の農業技術の供与を行なうという方針を示しましたが、日本国内でも本格的にFTA交渉を成功に導こうという気運が高まってきたように見えます。
ただこの農水省の日本の農業技術の供与による市場開放圧力の緩和という考え方には少々問題があるように感じます。
日本の農業の海外の農業に対する有利な点は高度な農業技術であるのに、その高度な技術を海外の農業に与えてしまったら日本が海外の農業に対抗できる要素がなくなってしまいます。
日本の海外の農業に対する有利な点がなくなった後で将来世界的に農産品の輸出入が開放されたら、日本の農業は壊滅するほかありません。
むしろ日本としては技術を供与することで開放圧力を緩めることより、高度な技術で作られた質の高い農産品に付加価値をつけて海外市場に打って出る方がより良いと考えます。
今でも質の高い一部の日本のりんごは海外市場で人気があり、高額で取引されています。
日本はこのような質の高い農産品に付加価値をつけて海外市場で勝負をしていくべきであり、付加価値をつけられない農産品については構造調整を進めるほかないと考えます。
日本の農家はそろそろ国内市場だけでなく海外市場をも見据えた高付加価値の農産品の開発に力を入れていくべき時に来ているのだと思います。
また日本とマレーシアとの間のFTA交渉についてはフィリピンとの交渉合意に続き、どのような内容で最終合意を迎えるのか興味深いところです。
そして今回日本が農業分野で先に合意に至ったことは並行して行なわれている東南アジア諸国とのFTA交渉の促進に繋がると思われ、来年中には多くのFTA交渉が合意にまで至ることが予想されます。
日本の国内企業にとってはこの動きを受けて、次々と生まれるFTAをどのように活用していくかをよく考えて、企業戦略を練ることが重要になってくると思われます。
日比FTA交渉に見る日本の強気外交
追記:日比FTA交渉に見る日本の強気外交
まだ外務省のサイトには資料が掲載されていないために詳しくはわかりませんが、今回合意したのは以下の項目についてのようです。
A.マレーシア→日本の産品について
1.合板の取り扱いは数年後に再協議
2.バナナの無税枠(1000トン)を設定
3.マーガリンの関税を5年間で29.8%から25%に削減
4.合板以外の木材の関税削減
5.インドネシア産違法伐採木材の輸出防止に両国が協力して取り組む
B.日本→マレーシアの産品について
1.自動車の関税の削減・撤廃についてはこれからの議論の焦点に
今回の合意内容を見ると珍しく日本側が先にマレーシア側の要求のうちいくつかを受け入れたようです。
まず合板については実質上の白紙回答と言わざるを得ません。
実際のところマレーシアとの交渉では合板の取り扱いが自動車と並んで焦点になっていたので、数年後に再協議というのは日本側が最後まで合板の関税の削減・撤廃には消極的であったことが窺えます。
次にバナナの無税枠1000トンですが、日本のバナナの輸入量が100万トン弱(2002年)、マレーシアのバナナの輸出量が30万トン弱(同)であることを考えると、相当に少ないといわざるを得ません。
マレーシアのバナナの輸出量は近年減少傾向にあるのでマレーシア側がバナナの輸出にあまりこだわらなかったことも考えられます。
マーガリンや合板以外の木材の取り扱いについては自動車の合意内容次第といえます。
これから焦点になる自動車ですが、フィリピンとのFTA交渉でフィリピン側が即時又は段階的な関税の撤廃を受け入れたことを考えると、日本側はそれと同様の条件をマレーシアにも求めると考えられ、またマレーシアもそれに近い形で合意するのではないかと思われます。
ただし、マレーシアはフィリピンに比べて国内自動車産業を保護しようとする圧力が強く、フィリピンよりもう少し緩い関税削減率に落ち着くのではないかと思います。
しかし、今回の交渉で日本を交えた貿易交渉で農業分野が最初に合意に達したというのは画期的なことです。
農林水産省がFTA交渉における外国からの市場開放圧力に対するために日本の農業技術の供与を行なうという方針を示しましたが、日本国内でも本格的にFTA交渉を成功に導こうという気運が高まってきたように見えます。
ただこの農水省の日本の農業技術の供与による市場開放圧力の緩和という考え方には少々問題があるように感じます。
日本の農業の海外の農業に対する有利な点は高度な農業技術であるのに、その高度な技術を海外の農業に与えてしまったら日本が海外の農業に対抗できる要素がなくなってしまいます。
日本の海外の農業に対する有利な点がなくなった後で将来世界的に農産品の輸出入が開放されたら、日本の農業は壊滅するほかありません。
むしろ日本としては技術を供与することで開放圧力を緩めることより、高度な技術で作られた質の高い農産品に付加価値をつけて海外市場に打って出る方がより良いと考えます。
今でも質の高い一部の日本のりんごは海外市場で人気があり、高額で取引されています。
日本はこのような質の高い農産品に付加価値をつけて海外市場で勝負をしていくべきであり、付加価値をつけられない農産品については構造調整を進めるほかないと考えます。
日本の農家はそろそろ国内市場だけでなく海外市場をも見据えた高付加価値の農産品の開発に力を入れていくべき時に来ているのだと思います。
また日本とマレーシアとの間のFTA交渉についてはフィリピンとの交渉合意に続き、どのような内容で最終合意を迎えるのか興味深いところです。
そして今回日本が農業分野で先に合意に至ったことは並行して行なわれている東南アジア諸国とのFTA交渉の促進に繋がると思われ、来年中には多くのFTA交渉が合意にまで至ることが予想されます。
日本の国内企業にとってはこの動きを受けて、次々と生まれるFTAをどのように活用していくかをよく考えて、企業戦略を練ることが重要になってくると思われます。