デジタル万引きへの書店の対応は?
カメラ付き携帯電話の普及に伴い、書店で書物を買わずに内容を撮影する「デジタル万引き」が問題になっています。
今回は「デジタル万引き」について簡単に考えてみたいと思います。
まず「万引き」という語句から思い浮かぶ窃盗罪との関係について考えています。
刑法上の窃盗罪や詐欺罪などの財産犯の客体としては財物及び財産上の利益が規定されています。
財物は有体物及び電気や水道水などの管理可能なものを指し、それ以外の情報などについては財産上の利益とされます。
現行刑法では詐欺罪などについては財物に加えて財産上の利益についても客体たり得ることを規定していますが、窃盗罪の客体については財物についてしか規定されていません。
このことから現行刑法では窃盗罪については財物を窃取するときのみ窃盗罪に当たることになります。
ここで「デジタル万引き」について考えると書物に記された情報という財産上の利益を窃取したとは言えない事もないですが、書物という財物を窃取したわけではないので窃盗罪には当たらないことになります。
次に知的財産権で保護される可能性のある情報と著作権法との関係を考えてみます。
著作権法は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」もので、著作物の無断複製などを禁じています。
しかし著作権法30条には「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的とする場合には複製が許可されています。
したがって「デジタル万引き」について考えるとカメラで撮影した画像を自分以外の人の閲覧に供したりしない限り著作権法違反は問えないことになります。
続いて民法上の救済手段として、書店の利益の侵害、撮影者の受益があったとして撮影者に対して民法703条を根拠に不当利得返還請求をすることができるかについて考えてみます。
不当利得とは民法703条「法律上の原因なくして他人の財産又は労務に因り利益を受け之が為めに他人に損失を及ぼしたる者は其の利益の存する限度において之を返還する義務を負ふ(『カタカナ→ひらがな』にしてあります)」を根拠とするもので、一定の要件下で自分の利益が害され、それによって他人が利益を受けた場合にその利益の返還を請求できるという制度です。
不当利得の要件は条文から次の4つにになります。
1.被請求者が利益を受けたこと
2.請求者が損失を受けたこと
3.利益と損失の間に因果関係があること
4.利益の移転を基礎付ける法律関係がないこと
まず1ですが「デジタル万引き」においては撮影者が書物の中の情報を撮影することで情報という利益を受けており、撮影者が利益を受けたことには争いがないと思われます。
次に2と3ですが「デジタル万引き」によって書店が損失を受けたか、またその損失と撮影者が受けた利益の間に因果関係があるかが問題になります。
なぜなら書物の撮影をしなかったからといって、その人が書物を購入したかどうかはわからないからです。
ただこのような被請求者の利益だけが存在し、損失が存在しない無賃乗車や受信料を払わないままでのNHKの視聴のような事案について損失の擬制や損失概念の拡大によって、不当利得返還請求権を認めることがあり、また学説によっては受益の証明だけで良いとするものもあるため、一概に不当利得が成立しないとは言えず、不当利得が成立する可能性は残ると考えられます。
また4については「デジタル万引き」によって撮影者が得る情報という利益に法律上の利益の移転の基礎付けはないので「デジタル万引き」はこの要件を満たすといえます。
では仮に不当利得返還請求権が認められた場合に請求金額はどれくらいになるかですが、その金額は基本的には受けたる利益の範囲ということになります。
情報の内容にもよると思いますが、少なくとも請求金額が書物の値段を越えることはないと思われます。
こう考えてみると定価数百円程度の雑誌の撮影について不当利得返還請求訴訟を起こすのは訴訟の煩雑さなどから現実的ではないことになります。
以上のことから実質上現行法では「デジタル万引き」を取り締まるのは難しいと考えます。
「デジタル万引き」は「万引き」よりも「立ち読み」に近いものがあると思います。
これ以降「デジタル万引き」が社会問題化し「デジタル万引き」の取り締まりが強化されるとしても「立ち読み」を同時に取り締まることをしなければ法の公正を欠くと考えます。
ここで「立ち読み」の規制について考えてみると「立ち読み」が許されるかどうかは現在非常に曖昧なものになっています。
一般に書店では活字本については「立ち読み」が許されていますが漫画等については「立ち読み」は包装などによって実質上禁止されています。
この活字本と漫画本との対応の差は読了時間などを理由としてなされているのだと思われますが、その包装の差に法律上の規制があるわけではなく専ら出版社や書店の判断によってなされています。
「立ち読み」と「デジタル万引き」との類似性を考えると書店が「デジタル万引き」を防ぐために行なう手段としては自主的な包装の強化が最も適切であると考えます。
もし「デジタル万引き」が書店に深刻な被害をもたらすようになれば今以上に包装された書物が増えることが予想されます。
出版社の利益の薄い電子辞書の普及で紙媒体の辞書が売れなくなり、新版の辞書の作成費用が集まらないことが問題になっています。
出版社はたくさんの人が書物を購入してくれることで新たな書物を作成する費用を得ることができます。
その情報が本当に自分にとって必要なものであるのならば代金を支払って購入をすることが本人にとっても最も良い選択であると考えます。
そうすることで自分が必要であると思った書物に関係した書物がまた作られていくからです。
ただし近年のインターネットの普及によって紙媒体の情報誌の価値が急落していることは確かです。
程度の差こそあれ紙媒体の雑誌で手に入る情報の多くはインターネットで得ることができ、この事実が「デジタル万引き」でよく問題とされる情報誌の売り上げ減に繋がっていることは否めません。
このような現状を踏まえ、出版社や書店はすでに売れなくなりつつある紙媒体の情報誌などにかわる新たな情報の提供の道を探っていくべきであると考えます。
今回は「デジタル万引き」について簡単に考えてみたいと思います。
まず「万引き」という語句から思い浮かぶ窃盗罪との関係について考えています。
刑法上の窃盗罪や詐欺罪などの財産犯の客体としては財物及び財産上の利益が規定されています。
財物は有体物及び電気や水道水などの管理可能なものを指し、それ以外の情報などについては財産上の利益とされます。
現行刑法では詐欺罪などについては財物に加えて財産上の利益についても客体たり得ることを規定していますが、窃盗罪の客体については財物についてしか規定されていません。
このことから現行刑法では窃盗罪については財物を窃取するときのみ窃盗罪に当たることになります。
ここで「デジタル万引き」について考えると書物に記された情報という財産上の利益を窃取したとは言えない事もないですが、書物という財物を窃取したわけではないので窃盗罪には当たらないことになります。
次に知的財産権で保護される可能性のある情報と著作権法との関係を考えてみます。
著作権法は「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする」もので、著作物の無断複製などを禁じています。
しかし著作権法30条には「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」を目的とする場合には複製が許可されています。
したがって「デジタル万引き」について考えるとカメラで撮影した画像を自分以外の人の閲覧に供したりしない限り著作権法違反は問えないことになります。
続いて民法上の救済手段として、書店の利益の侵害、撮影者の受益があったとして撮影者に対して民法703条を根拠に不当利得返還請求をすることができるかについて考えてみます。
不当利得とは民法703条「法律上の原因なくして他人の財産又は労務に因り利益を受け之が為めに他人に損失を及ぼしたる者は其の利益の存する限度において之を返還する義務を負ふ(『カタカナ→ひらがな』にしてあります)」を根拠とするもので、一定の要件下で自分の利益が害され、それによって他人が利益を受けた場合にその利益の返還を請求できるという制度です。
不当利得の要件は条文から次の4つにになります。
1.被請求者が利益を受けたこと
2.請求者が損失を受けたこと
3.利益と損失の間に因果関係があること
4.利益の移転を基礎付ける法律関係がないこと
まず1ですが「デジタル万引き」においては撮影者が書物の中の情報を撮影することで情報という利益を受けており、撮影者が利益を受けたことには争いがないと思われます。
次に2と3ですが「デジタル万引き」によって書店が損失を受けたか、またその損失と撮影者が受けた利益の間に因果関係があるかが問題になります。
なぜなら書物の撮影をしなかったからといって、その人が書物を購入したかどうかはわからないからです。
ただこのような被請求者の利益だけが存在し、損失が存在しない無賃乗車や受信料を払わないままでのNHKの視聴のような事案について損失の擬制や損失概念の拡大によって、不当利得返還請求権を認めることがあり、また学説によっては受益の証明だけで良いとするものもあるため、一概に不当利得が成立しないとは言えず、不当利得が成立する可能性は残ると考えられます。
また4については「デジタル万引き」によって撮影者が得る情報という利益に法律上の利益の移転の基礎付けはないので「デジタル万引き」はこの要件を満たすといえます。
では仮に不当利得返還請求権が認められた場合に請求金額はどれくらいになるかですが、その金額は基本的には受けたる利益の範囲ということになります。
情報の内容にもよると思いますが、少なくとも請求金額が書物の値段を越えることはないと思われます。
こう考えてみると定価数百円程度の雑誌の撮影について不当利得返還請求訴訟を起こすのは訴訟の煩雑さなどから現実的ではないことになります。
以上のことから実質上現行法では「デジタル万引き」を取り締まるのは難しいと考えます。
「デジタル万引き」は「万引き」よりも「立ち読み」に近いものがあると思います。
これ以降「デジタル万引き」が社会問題化し「デジタル万引き」の取り締まりが強化されるとしても「立ち読み」を同時に取り締まることをしなければ法の公正を欠くと考えます。
ここで「立ち読み」の規制について考えてみると「立ち読み」が許されるかどうかは現在非常に曖昧なものになっています。
一般に書店では活字本については「立ち読み」が許されていますが漫画等については「立ち読み」は包装などによって実質上禁止されています。
この活字本と漫画本との対応の差は読了時間などを理由としてなされているのだと思われますが、その包装の差に法律上の規制があるわけではなく専ら出版社や書店の判断によってなされています。
「立ち読み」と「デジタル万引き」との類似性を考えると書店が「デジタル万引き」を防ぐために行なう手段としては自主的な包装の強化が最も適切であると考えます。
もし「デジタル万引き」が書店に深刻な被害をもたらすようになれば今以上に包装された書物が増えることが予想されます。
出版社の利益の薄い電子辞書の普及で紙媒体の辞書が売れなくなり、新版の辞書の作成費用が集まらないことが問題になっています。
出版社はたくさんの人が書物を購入してくれることで新たな書物を作成する費用を得ることができます。
その情報が本当に自分にとって必要なものであるのならば代金を支払って購入をすることが本人にとっても最も良い選択であると考えます。
そうすることで自分が必要であると思った書物に関係した書物がまた作られていくからです。
ただし近年のインターネットの普及によって紙媒体の情報誌の価値が急落していることは確かです。
程度の差こそあれ紙媒体の雑誌で手に入る情報の多くはインターネットで得ることができ、この事実が「デジタル万引き」でよく問題とされる情報誌の売り上げ減に繋がっていることは否めません。
このような現状を踏まえ、出版社や書店はすでに売れなくなりつつある紙媒体の情報誌などにかわる新たな情報の提供の道を探っていくべきであると考えます。