私企業は自助努力だけで国際競争で生き残れるか? | ideamngのブログ

私企業は自助努力だけで国際競争で生き残れるか?

最近は経営の改善で高い純利益率をたたき出す企業の手法が大人気です。

書籍はもとよりテレビでも一企業の経営改革が特集を組まれるほどです。

しかし果たして私企業は自助努力だけで様々な国の利害が衝突する国際社会での経済競争において勝ち抜けるのか、私は疑問に思わざるを得ません。

まだ経済について何も書いていなかったので、今回は国際的な経済体制について簡単に書いてみたいと思います。

今の国際経済体制は非関税障壁をなくし、最恵国待遇原則による関税によってのみ国家の貿易への介入を許すことを原則とするWTOに規律されています。

WTOはある国家が相手国によって同一産品に異なる関税率を課すことを禁じ、自由貿易を促しています(最恵国待遇)。

また一度輸入された産品は国内の産品と同様に市場で扱わなければなりません(内国民待遇)

このようなWTO体制の下で戦後国際経済は発展してきたわけですが、この体制の下では様々な矛盾が生まれました。

その一つに途上国の問題があります。

誰がいった言葉か忘れましたが「大人と子供をスタートラインに立たせて同時にスタートさせるようなものだ」という言葉に表されるように、工業化された先進国と途上国を同じ条件で扱うことは、先進国と途上国の経済格差を広げる結果に繋がりました。

先進国がWTO体制形成期に主導的役割を果たしたために先進国の主要輸出品目である工業製品の関税率が大きく引き下げられたのに対して、途上国の主要輸出産品である繊維製品や農産品などの関税率がほとんど下げられなかったことも経済格差に拍車をかけることになります。

このような問題を是正するために開かれた会議で生まれたのが一般特恵制度です。

これは途上国の経済発展を促進するために途上国に対してのみ先進国の最恵国待遇を免除し、途上国に対してより低い関税率の設定を認めるものでした。

この制度により経済的発展を享受する途上国も現れたのですが、この特恵制度は国家間の政治的関係により、恣意的に適用されている感が否めません。

現在ではこの特恵制度は非常に多くの国で設定されており、例えばECでは世界180ヶ国前後に、特恵関税が設定されるという事態になっています。

個人的には180ヶ国という数字は異常としか思えません。

ECに加入している国に特恵関税を設定するとは考えられないので、世界190数ヶ国中、ほぼすべての国が特恵制度の適用を受けていることになります。

また最近話題のFTAによって、さらに自由な貿易は侵されているといえます。

前置きが長くなりましたが、このような国際経済体制の下では政府の外交努力なしに国際競争を勝ち抜くことは極めて難しいということです。

日本は戦後、工業国共通の利益を達成するWTO体制の下で、途上国からある意味搾取といえるような貿易を通じて、大きな経済成長を成し遂げました。

今、国際経済には政治的関係によって特別に有利な関税を設定したり、FTAによって地域的な経済圏を作り、自国企業の国際的展開を援助する国が増えています。

このような情勢下においてはもし日本が途上国と共通の利益の実現を目指すのならば別ですが、日本がこれまでどおり世界経済において優位を保とうとするならば、日本政府も積極的に自国企業の便宜を図るために経済体制に関する外交を展開すべきであると考えます。

また民間企業も合理化による純利益率の向上に自惚れることなく、経済における国家の役割というものを強く認識して、政府に自国企業が不利にならないような経済体制の確立を要請すべきだと思います。

どれほど私企業が努力をしようとも、高い関税を掛けられれば国際市場では勝ち抜けません。

それは1kgあたり300円強(注)というとてつもない従量税によって、10kgあたり1000円以下の値段しかしない海外の米が日本で全く競争力がないことからも明らかです。

注)米の関税率は1999年に1kgあたり約351円と定められ、毎年2.5%下げることになっている。1kgあたり300円だと、海外で10kgあたり1000円の米は、日本国内では4000円で取引されることになる。