小説の続き書きました。新版・遠いデザイン7-1 | 産廃診断書専門の中小企業診断士

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ふじのくにコンサルティング® 杉本剛敏 中小企業診断士事務所の杉本です。私はコピーライターとしてネーミングやコピーを作る一方で、中小企業診断士として企業のマーケティングを支援。2021年、2016年に静岡新聞広告賞受賞。これまでに提案した企画書は500を超えます。

アーバンライフエクスタシー、というキャッチが書かれた原稿を七瀬はラップトップパソコン越しに美紀に差し出していた。JAの色校が上がった日から二日でやっつけたマンション広告のコピーだった。

「都市生活者の官能、ってとこね。いつもカタめの七瀬さんにしては、ぬけてるコピーじゃない?」

 美紀はコンピュータ画面の中の画像データをクリックする。読み込まれた写真のベースは先日、デジカメ撮影してきたものだが、整地中だった現場には妙に質感のある合成マンションがそびえ立っている。画像専用ソフトで色調補正された街並みは明るく、撮影の時、暮色の濃かった夕空も澄んだ青色に変換されていた。

「この合成写真はあくまでも押さえにして、メインには何か別のビジュアルをもってこようと思うの。七瀬さんがつくってくれたこのコピーをからめて、もっと生活寄りのイメージでいきたいのよ」

 プレゼンは広告代理店四社の競合だった。確かに建物というハードを全面に出すだけではインパクトに欠けるし、目新しさもない。七瀬は美紀の言葉に頷き返す。

 彼は、朝一番でメディア通信社のこのサテライトルームにきていた。フロアの奥に控えるクライアント専用の会議室と違って、誰もが自由に出入りできるこのフリーな打ち合わせスペースからは、受付に顔を見せる人間たちが筒抜けに眺められた。

フリーのデザイナー、印刷会社の営業マン、サンプルを抱えたノベルティ業者、イベントの面接に訪れたコンパニオンなどなど、この三十分ほどのあいだに、人間動物園さながらに、〝広告園〟の自称、業界人たちが入れ替わり立ち替わり現れて、中には、そのままこのルーム内に入ってきて、打ち合わせや雑談をはじめる者たちもいた。

 

 

遠いデザインとは、遺伝子の設計図のこと。

17年前の2001年が舞台の古いお話です。