ギャンブル依存やアルコール依存に苦しむ人々は、「自分の意志で止められない」ことに絶望感を感じることが多いです。私もその一人でした。借金や酒の失敗を繰り返し、そのたびに「もう生きていたくない」と思うほど、自分を責めていました。
依存行動は、自分の選択や意思の結果だと思われがちですが、実際には意志の力ではどうにもならない強力な内的な衝動やパターン(習慣)に支配されています。この現実にぜひ気づいてほしいのです。
私たちの依存行動は、意識しているよりもずっと深い部分、つまり意識できない脳の働きによる結果であるようです。私たちの行動は、実は自分の意識が意識する以前にすでに決定されているとも言われています。この考えは議論の分かれるところではありますが、「自分の意思」というものはなく、行動のすべては脳や高次の力によって決められている、という見方もあるのです。
このような視点から見れば、依存症からの回復には、自分一人(自分が自分と認識している自分)の力だけでは不十分だということがわかります。AA(アルコホーリクス・アノニマス)の12のステップの中でも、第3のステップ「私たちの意思と人生を、私たちよりも偉大な存在の配慮にゆだねることに決心する」は、まさにこのことを教えていると考えます。
「自分では自分をコントロールできない」と「理解する」ことが回復の第一歩だと思います。
高次の存在や神に助けを求め、「どうか、この苦しみを乗り越える力を与えてください」と祈ることで、高次の力からのサポートを受けられるのです。自分の経験からも、こんな自分として生きたくないと苦しみながら、高次の存在に祈りました。祈りは、必ず前に進む力を与えてくれると私は考えます。
依存症は普通に考えたら人生の「悪」や「失敗」ですが、私たち依存症者にとっては、霊性の成長や魂の進化のための「学び」のひとつであると考えてはどうかと思います。
私たちは依存症を通じて、痛みと失敗を経験し、大切なことを学び、自分を深く見つめ直すことができるのではないかと思います。依存からの回復は、自己の魂が高次の力を求めるように、高次の力に導かれた課題なのかもしれません。