さあ、エリクソンのアイデンティティの階段も上がってきました。
 否が応でも、たとえ、すべてのアイテムを集めていようがいまいが、あなたは次のステップに進まなくてはなりません。
 第一段階の乳児期には、信頼を学びました。
 第二段階の乳児前期には、自立性を学びました。
 第三段階の乳児後期には、積極性を学びました。
 第四段階の児童期には、勤勉性を学びました。
 第五段階の青年期では、同一性をも学びました。
 つまり、「私は、こんな人間である」と言える。
 これまでの、両親や先生や先輩などの保護の元から、自分の足で踏み出していく準備期間です。
 でも、高校を卒業すれば、あるいは、専門学校や大学を卒業すれば、精神的な発達はどうあれ、社会に放り出されます。
 嫌でも、次の段階です。

 第六段階の初期成年期では、親密性を学びます。
 それって、何?
 あなたは、一人の社会人として、人と係わっていかなくてはなりません。
 第七段階の成年期では、自ら学んだものを、次の世代に伝えていかなくてはなりません。
 つまり、あなたには、
・後輩が出来ます。
・教師であれば、生徒が出来ます。
山田隆文の歯医者さん日記

 あら、もやもやですか……。

 でも、そのまま、部下が出来たらどうなるでしょう……。
山田隆文の歯医者さん日記

 あなたは、優越感を感じます。
 だって、あなたのほうが、知識も経験もあるんです。
山田隆文の歯医者さん日記

 あなたは、ついつい、言ってしまいます。
「どうして、こんなこともできないのよ!」
「誰が教えたの?」
「まったく、おまえは……」

 あれ、あなたが、新人の時に先輩から言われた言葉そのまんまですね。

 同じ事は、子供の時にもちゃんと学んできた筈なんですが、忘れてしまいました。
 たとえば、ゲームをします。
 先にクリアしたあなたは、ついつい、馬鹿にします。
「そこ、そこじゃないってば!こっちに、アイテムが……」
「え、まだ、5面クリアできないの!」
 本来は、幼稚園や小学校で学んで来たことを、忘れてしまいました。

 そのまま、アイテムを取り忘れて次の面に来ても、もちろん、やり方を知りません。

 すると、どんなことが起こるのでしょうか?

山田隆文の歯医者さん日記

 あなたは、あなたの知識と経験の中でしか、次の世代に伝えることが出来ません。
 でも、あなたも100%理解しているわけではありません。
 なので、次の世代に伝えることが出来るのは、その中の一部です。
 と、自分よりも小さい、自分のコピーができあがります。
 決して、自分を超える事はありません。
 そのコミュニティは、どんどん小さくなっていきます。
 そのコミュニティは、どんどん閉鎖的になっていきます。
 横溝正史の犬神家の一族や獄門島や八墓村みたいに、狭いコミュニティで、伝統という名の執着にがんじがらめになって、身動きが出来なくなります。

 もし、部下が自分を超えそうになると……。

 出る杭を打ってしまいます!
 村八分ってやつです。

 あれ、自分がやられてきたことじゃん!

 でも、それっていいの?

 それでは、困りますね。