さあ、あなたは、何かを教える立場になりました。
 何かを伝える立場になりました。

 どうしますか?

 多くの人は、ここで、戸惑います。
 新人の先生達は、どう教えて良いかわかりません。
 だって、教えて貰ったことはあっても、教えたことはありません。
 では、どうするか?
 自分が、教えて貰った範囲の中で、それを話すしかありません。
 だって、経験がないんですから。
 いつの間にか、あなたは、自分の両親や先生や、どこかで読んだ本のまねをしています。
 でも、所詮、あなたのものではありません。
 決して、両親や先生や本のレベルを超えることはできません。
 だって、身についていないんですから。

 さあ、授業の時間が余ってしまいました。
 学生から、あなたの知らない質問を受けました。

 大丈夫。
 先生達の得意な伝家の宝刀があります。

「自分で調べなさい!」

 さあ、それで、若い人たちが育つと思いますか?
 だって、同じやり方で、あなた自身が育ってきたんです。

 このシステムの欠点は、代々、受け継がれていく間に、どんどんと世界が縮小していくことです。
 決して、先輩を越えることができません。
 だって、その方が、管理しやすいからです。

 それが、日本の不思議な村社会を作ってきました。

 さあ、私たちは、みんな同じ、と習ってきました。
山田隆文の歯医者さん日記

 ランドセルも、教科書も、633制も……。
 でも、個性のある子供たちを、同じ教室の中で、同じ教育を出来るのでしょうか?
 みんな、学力も違います。
 育った環境も違います。
 得意な科目も、苦手も科目も、違っています。
 それを、みんな、同じ?
 そんなことが、可能なのでしょうか?
 でも、管理するには楽です。

 私なんて、小学校の通信簿には、いつも「協調性がない」と書かれ続けました(笑)。
 たぶん、担任の先生には、扱いにくい生徒だったに違いありません。
 だって、わかんないことがあると、ハリーポッターのハーマイオニーみたいに、いつも、「せんせい、せんせい、これどうなっているの?」なんて問い詰めたんですから。
 だって、「わからないことがあったら、いつでも、質問してね」なんて言ったジャン!
 でも、小学校3年生にして悟りました。
 「ああ、先生に、質問しちゃ、いけないんだ(笑)」

 欧米の教育は、自由になってきました。
 アメリカなどでは、飛び級もあります。
 ドイツの、シュタイナー教育では、個性を伸ばします。

 でも、そのためには、教員が、それなりの知識と、考え方のシフトをしなければなりません。

 この、文様はどうでしょう?
山田隆文の歯医者さん日記

 ひとつの、様式美です。

 でも、みんな同じ?
 そうだとしたら、飽きてしまうかもしれません。

 生物は、みんな、同じでは生き残れません。
 大腸菌でさえ、1回の分裂で、1/100万の確率で、バリエーションが生まれます。
 そして、環境が変化した時に、その環境に適合したバリエーションのどれかが生き残ります。

 人間だって、沢山の人種があります。
 みんな、顔や形が違います。
 個性があります。

 もし、人間が、蜂やアリの社会みたいに、生まれつき仕事が決まっていたら……。
 今のような文明が生まれてきたでしょうか?
 文学も芸術もないですね。

 バリエーションがあるから面白いんです。
山田隆文の歯医者さん日記

 さあ、大事なことは、多様性です。

 ついつい、「私の言うことをききなさい!」と言いたいでしょう。
 ついつい、管理をしたくなるでしょう。
 それは誘惑です。
 それもまた執着です。

 木村拓哉さんの主演した「チェンジ」というドラマがありました。
 そこで、学校の先生役だった彼は、子供たちにこう教えていました。
「自分と、人は違うということ」が大事なんだ。

 そこから、コミュニケーションが生まれるんですね。

 どうです。
 もう、説明の必要は無いと思います。

 もし、粘菌のように集合社会を作っていたら。
 別に、そういう生き方もあるかもしれませんけど……(汗)。
 あなたの個性はありません。
 集合体のために、あなたは存在しています。
 まるで、スタートレックの、機械集合生命体のボーグです。
 彼らの台詞はこうです。
 「お前達を同化する」

 でも、日本の社会でもありますね。
 村に、町に、会社に、同化されていませんか(笑)?
 同化されないと、村八分です(笑、どころじゃやない?)!
 ストレスを溜めても、心因性のうつになっても、村に、町に、会社に尽くしますか?
 あなたの個性は何のためにあるのでしょう?

 さあ、これから、あなたは、自分の学んだものを伝えていきます。

 大事な教訓です。

 あなたの後輩は、あなたのコピーではありません。
 あなたの生徒達は、管理するものではありません。
 あなたの子供は、親を越えるために生まれてきました。

 多様性を認める。
 これが、重要なベースになります。