アイデンティティの階段は、否が応でも登ります。
 たとえ、アイテムを全部集めたとしても、そうでなくも。
 そして、今度は、自分の力を、後輩のために使うときが来ます。
 部下や、子供や……。
 自分よりも、弱い人たちを守り、導くために進んでいきます。
山田隆文の歯医者さん日記

 さあ、前へ進め なんて簡単に書いたのですが……。
 というところから、始めましょう。

 これまで、ずいぶんと偉そうなことを書いてきました。
 でも、ひとつだけ、守っていることがあります。
「私を信じなさい」
 なんて、言っていません。
「この方法でやれば、うまくいくよ」
 とも言っていません。
「ここに書いてないことは、私のセミナーを受ければ……」
「わたしの本を読んだら……」
 なんて、いろいろなホームページやブログに書いてあるような宣伝文句も言っていません。

 理由は簡単です。
 千差万別といいます。
 みんな、それぞれのアイデンティティの階段を登っています。
 同じではありません。
 だから、私のやった方法が、全ての人にうまくいくとは限りません。

 私は、ただ、一つの方法を提示しているだけです。
 だから、興味があれば、やってみてもいいです。
 強制なんてしていません。
 だって、選ぶのはあなた自身です。
 「俺のほうがすごいぜ」と思うなら、そちらを選択していただいて、まったくもって、結構です。

 何度か書いたことがあります。
 富士山があります。
 富士山を認識するには、たくさんの方法があります。
 東京から見ても、静岡から見ても、山梨から見ても、はたまた、北アルプスから見ても、見方は違っても、それは、富士山です。
 山頂に登るには、たくさんの方法があります。
 御殿場でもいいし、富士吉田でもいいです。
 見てるだけでも、触っても、登っても、やはり富士山です。
 認識の違いです。
 ですから、同じアイデンティティの階段を登ると言っても、それぞれの認識の違いがあります。

 だから、「……は、……であるべきである」なんてステレオタイプなことは言いません。

 どこか一方から見て、それが、富士山の本質である。

 それは、あり得ません。
 真実は、もっと深遠です。

 でも、わたしなら、ずるして、ヘリコプターで登頂して、パラグライダーで飛び降ります(笑)。

山田隆文の歯医者さん日記


 さて、私自身、まだまだ、とてもとても完成された人間ではありません。

 先日、とあるところで、こんなプレゼンをしました。

 そこで、私は、自分のルーツを探りました。

 今日も、大学入試センター試験でしたが、高校時代、別に、医者でも、歯医者でもいいと思っていました。
 でも、歯医者さんのほうが楽かな。
 だって、血も見ないし、夜勤も当直もないし。
 でも、なぜか、血まみれの口腔外科を選んだりします(笑)。
 そして、新人として医局に残ったとき……。
 考え方を変える患者さんに出会います。
 舌がんです。
 でも、手の施しようがありません。
 癌は皮膚を突き破り、顔の半分以上がなくなってしまいました。
 初めて、看取って、初めて、死亡診断書を書きました。
 そこで、病気とは何なのだろう、という疑問から、病理の大学院に行きます。
 癌遺伝子や、癌ウイルスを探しました。
 でも、ぴんと来ません。
 やっぱり、事件は現場で起こっている。
 大学院を出ると、再び臨床に戻ります。
 でも、でも、……。
 患者さんに、「あなたは、癌です」と告げなくてはなりません。
 どうしたらいいのか?
 そんななかで、患者さんとのコミュニケーションとの大切さに気がついたのです。

 それが、ひとつのきっかけでした。

 そして、感情について勉強をしました。
 カウンセリングやコーチングや、ディベートやファシリテーションも学びました。

 そして、ひょんなことから、コデンタルスタッフの教育をします。

 さあ、ふたたび気づきの連続です。

 「教学半」

 こんな言葉が、私の座右の銘になりました。

 「教うるは、学びの半ばなり」
 (教えてみて、ようやく、学びの半分だ)

 学生の講義をします。
 講義をしながら、自分の未熟さに気がつきます。

 学生から、はっとする質問をされます。
 自分の、足りない部分を学びます。

 笑顔の学生が巣立っていきます。
 それが、私には最高の糧です。

 たくさんの患者さんから、はっとする一言をもらいます。
 でも、その患者さんの笑顔が、私には、最高の報酬なんです。

 そうやって、ぶつかりながら、悩みながら、考えながら、一つ一つ、集め忘れた貴重なアイテムを、今でも、探し歩いている日々です。
 毎日が、発見の連続です。
 きっと、それは、一生涯、続くのでしょう。
 まだまだ、学び足りません。
 まだまだ、好奇心がうずきます。

 さあ、このブログもここまで来ました。
 これまでは、自分の心の中の旅を中心に、ずいぶんとやってきました。

 でも、そろそろ、卒業してもらいましょう。
 強制的に(笑)!
 
 これからは、自分が学んできたものを、どう伝えるか。
 そんなテーマで進めていきます。

 否が応でも、
・後輩ができます
・部下ができます
・学校の先生ならば生徒ですし、医療・福祉職なら患者さんかもしれません
・やがて、子供が生まれます

 あなた、あなたの知識や、気持ちや、あなたがこれまで学んできた大切なものを、どうやって、彼らに伝えていきますか?
 どんな方法がいいのでしょう?

 そんなことを、考えていきたいと思います。


 最後に、大好きなフレーズがあります。
 「家なき子」の、セニョール・ビタリスが、レミに言います。

 「前へすすめじゃ、レミ」


 さあ、やっぱり、前に進みましょう(笑)。