それでも、人を変えることが出来ます。

 えっ、矛盾してますか?

 全然、矛盾していませんよ。
 人を、無理矢理変えることは出来ませんが、変わりたいと思わせることは出来ます。
 自分から、変わりたい。
 そんな気持ちにさせれば良いんですね。

 まずは、何度も書いていますが、「笑顔」であること。

 これは、すべてのテクニックの基本です。

 さて、何度か書いていますが、イソップ物語を思い出して貰いましょう。
 テーマは、「北風と太陽」です。

 ある日、北風と太陽が賭をしました。
 下を歩いている旅人の、コートを脱がすことができるかどうかです。
山田隆文の歯医者さん日記

 北風は、冷たい風を吹き付けました。
 まるで、あなたの批判のようですね。
 「どうして、できないのよ」
 「こんなふうにした方が、いいわよ」
 「あなた、変わってみたら?」
 でも、旅人は、ますます、コートの襟を立てて、しがみついてしまいました。
 無理矢理、相手の殻を破って、ずかずかと相手のテリトリーに進入しようとしても、当然、防御されて、拒否されてしまいます。
 当たり前ですね。
 心の扉は、その人が自分から開けなければ開きません。
 無理矢理開けることは出来ません。

 さあ、太陽の出番です。
山田隆文の歯医者さん日記

 太陽は、ただ、暖かく旅人を照らしました。
 と、旅人は、自分からコートを脱ぎ捨てました。

 太陽は、何かをしましたか?
 何もしていません。
 ただ、見守っていました。
 「コートを脱げ!」とか、「……しなさい」なんて言っていません。
 旅人がコートを脱いだのは、旅人の選択です。
 でも、旅人は変わりましたね。

 すでに、ヘロドトスの歴史にも、アイソーポスが寓話を使って居たと言われています。
 紀元前6世紀のことです。
 それに、古代メソポタミアなど様々な寓話が集まって、イソップ物語が形成されたと言われています。
 昔の人は、ちゃんと知ってたんですね。

 さあ、医療面接や、カウンセリングやコーチングやメンタリングを教える時に、いつもこのイソップ物語を使って居ます。
 カウンセラーの立場が明確になるからです。
 命令や指導・教育と、カウンセラーの立場の違いを表しているからです。
 面白いでしょう。
 もちろん、古いタイプの指導者は北風です。
 そうして、太陽がカウンセラーですね。

 カウンセラーは、指示をしません。
 答えも言いません。
 ただただ、傾聴をして、クライアント自身が、自分で答えを見つける手助けをします。
 マット・デイモンの「グッドウイルハンティング」で、ロビン・ウイリアムスのカウンセラー役が素晴らしいなんてお話しをしましたね。

 だから、暖かい太陽の見守りで、旅人は、自分で選択をしたんです。

 さあ、私たちはが、もし、相手と同じレベルで居たとしたら。
 あなたは、悩んでいる相手、変えたい相手と、同じ目線しかありません。
 一緒に、悩んでしまうかもしれません。
 人生には、山もあれば、川もあれば、崖もあります。
 あなたは、一緒に、面倒くさい人生の旅を続けますか?
 その、面倒くさい人たちと、一緒の人生を歩むのですか?

 無理矢理、ドワーフの冒険にかり出されたホビットのビルボ・バギンズみたいです。
 トロールに食べられそうになり、ゴブリンに追われ、ゴラムとの駆け引きに、次は、ドラゴンとの戦いも待っています。
 あんな冒険に巻き込まれたいですか?

 私は嫌です。

 だって、自分の自由意志があります。

 だから、カウンセラーやコーチやメンターは、高いところにいなければなりません。
山田隆文の歯医者さん日記

 あなたは、太陽です。
 太陽の位置から、見下ろしてみてください。
 どこに、安全な道があるか見えますね。
 どこに、山があるかも見えますね。
 どこに、崖があるかも見えますね。
 人生の迷っている旅人が、今、どこにいるのかが一目瞭然ですね。
 どこに向かっているのかもわかりますね。

山田隆文の歯医者さん日記

 さあ、あなたは、そんな人に、「……しなさい」なんて言う必要はありません。

 太陽のような気持ちで、ただ、優しく微笑んで、見守って上げってください。

 こんなメッセージを発してください。

 「わたしは、ここにいるよ」

 あなたは、変えたい人の、道標であれば良いんです。
 道しるべになってください。

 簡単でしょう?