さて、守破離。
 破から先が難しいなんて、書きました。

 なぜ?

 多くの人は、ぶつかり稽古になれていません。
 マニュアル世代では、マニュアルから外れた瞬間、
・フリーズするかもしれません
・「習ってないもん!」と、逆ギレするかもしれません

 笑い話ではありませんが、今年の実習生。
 知らないことを頼まれたので、実習室の大きな冷蔵庫の影に隠れていたとか……(笑)。
 頼んだ先生は、「あれ、あの子、どこいった????」

 それでは、先に進みません。
 今の自分では、解決出来ない問題にぶつかった時、逃げいても、まったく解決できません。
 逆ギレしたってだめです。
 ぶつかるしかないんです。
山田隆文の歯医者さん日記

 別に、こんなに怖い顔をしなくても良いです(笑)。

 さて、年末年始のテレビ番組では、フジテレビの「ほこ×たて」が盛り上がりました。
山田隆文の歯医者さん日記

 漢字で書くと、「矛盾」です。
 「矛」ほこです。
 「盾」たてです。

 これは、こんな故事から始まっていますね。
 韓非子の一説です。
 韓非の生まれたのは戦国末期です。
 戦国七雄の、秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓が中華統一(中国の統一)を目指して闘っていました。
 ちょうど、NHKのBS放送でやっているキングダムの世界です。
 
 「楚人有鬻盾與矛者 
  譽之曰 吾盾之堅 莫能陷也
  又譽其矛曰 吾矛之利 於物無不陷也
  或曰 以子之矛 陷子之盾 何如
  其人弗能應也」

 楚の国に、武器商人が居ました。
 当時の武器は、人を殺すための矛です。
 そして、身を守るための盾です。
 売り言葉はこうでした。
 「この矛は、どんなものでも貫きますぞ!」
 「この盾は、どんな武器でも防ぎまずぞ」
 と、ある人が訊きました。
 「じゃあ、その矛で、この楯を突いたら、どうなるんだい?」
 その商人は、言葉に詰まってしましました。

 そんな故事です。

 でも、テレビ番組は違います。
 一番盛り上がったのは、
・絶対に穴の開かない金属
・何でも穴を開けるドリル の戦いです。

 まさに、矛盾ですね。

 でも、そこで、ドリルの制作者が言いました。
「だから、技術が進歩するんだ。」

 この一言が、すべてを言い表しています。

 もし、「守」で習ったはずの「矛」マニュアルでは、貫けない「盾」がでてきました。
 自分の能力では無理とあきらめますか?
 もし、自分の「盾」では守りきれない「矛」が出てきました。
 逃げ出しますか?

 もし、そうしたら、「守」の先にある「破」には達しません。

 そこで、工夫が必要なんです。
 だから、発想の転換が必要なんです。

 ほこ×たてでは、
・絶対に穴の空かない金属
 日本タングステンという会社が作っていますので、タングステン・モリブデン合金でしょう。
 タングステンは戦車の装甲にも使われるそうですので、まさに、「盾」です。
・何でも穴を開けるドリル
 ここには、5つの会社がチャレンジしました。
 超硬度材料で、一番固いものはダイヤモンドだと言われています。
 だから、歯科治療で歯を削るのにもダイヤモンドを使います。
 出てきたのは、ダイヤモンドドリルです。
 固い金属のドリルに、ダイヤモンドの粉末をコーティングしたものです。
 縮小版は、歯科用のエアタービン用のダイヤモンドポイントですね。
 でも、今のところ、ドリルの6戦6敗中。
 この硬いダイヤモンドですらすり減ってしまいました。

 まさに、切磋琢磨です。

「詩経」の一説です。

 辞書には、
「学問をし、徳を修めるために、努力に努力を重ねること。
 また、友人どうしで励まし合い競い合って向上すること。」とあります。

「切」とは骨を加工する時の作業だそうです。
「磋」とは象牙を加工する時の作業だそうです。
「琢」とは玉を加工する時の作業だそうです。
「磨」とは石を加工する時の作業だそうです。

 もし、あなたが、ダイヤモンドの原石だとします。
 でも、まだ、掘り出したばかりです。
 いろいろな岩がくっついています。
 表面にも凹凸があります。
 だから、あなたの本質であるダイヤモンドの輝きを取り出すためには、あなたにとって、余分なものをそぎ落とし、あなたの心のとげとげを削り取って、凹凸を磨かなければなりません。

「玉琢かざれば器を成さず」(礼記)ともいいますね。

 さあ、あなたは、壁を突破しました。

 と、不思議な事が起こります。
 心の変化です。
山田隆文の歯医者さん日記

 「あれ、いつの間に、通り過ぎたんだろう?」
 あなたは、訝しむかもしれません。
 「なんで、あんなに、苦労をしていたんだろう」

 そうです。
 気がつくと、突破していますよ。
 ちゃんと、心の平穏が訪れます。

 ほこ×たての、闘った二人の握手。
 素晴らしいですね!

 さあ、切磋琢磨です!