そして、映画と言うことになる。

 ミュージカルは、帝国劇場でだいぶ前に観た。
 滝田栄のジャン・バルジャン。
 村井国夫のジャベール。
 島田歌穂のエポニーヌ。
 野口五郎のマリウス。
 そんなメンバーだった。
 テナルディエ役の斉藤晴彦のアクの強さが良かった。

 さて、この長い物語を2時間半でまとめる。
 だいぶ、省略された部分もあるが、膨大な登場人物をうまく配置し、最小限の表現でわかるようにして、絡ませて、最後までまとめた手腕は素晴らしい!
 でも、始めに聴いた時には、ちょっと違和感もあった。
 冒頭シーンのコーラスには衝撃を受けたが、他のミュージカルナンバーだ。
 サウンドオブミュージックや、マイフェアレディでは、台詞を直接歌詞の中では語らない。
 でも、レミゼラブルでは、ミュージカルナンバーそのまま、台詞である。
 サウンドオブミュージックや、マイフェアレディでは、ミュージカルナンバーを口ずさめる。
 でも、レミゼラブルでは、メロディは良いのだが、歌詞が憶えにくいったらない。
 もちろん、面白いテクニックが使われている。
 それぞれの登場人物のテーマ曲がある。
 これが、コーラスシーンでは、それぞれのパートがうまくかみ合って、素晴らしいハーモニーとなる。
 凄いテクニックだ。

 さて、ようやく、映画のお話し。
 ジャン・バルジャンには、Xメンのヒュー・ジャックマン。
 ジャベールには、グラディエーターのラッセル・クロウ。
 ファンティーヌには、プラダを来た悪魔のアン・ハサウェイ。
 役作りのために10キロもやせて、実際に、自分の髪の毛も切った。
 コゼットには、マンマミーアのアマンダ・サイフリッド。

 そして、司教には、コルム・ウィルキンソン。
 ロンドン公演の初代ジャン・バルジャンだ。
 25周年記念コンサートや、オペラ座の怪人の25周年記念コンサートにも登場している。
 エポニーヌには、サマンサ・バークス。
 こちらも、25周年記念コンサートに出ている。
 
 ただ、テナルディエ夫人の、ハリーポッターのベラトリックス・レストレンジや、アリスインザワンダーランドの女王や、チャーリーとチョコレート工場のバケット夫人を演じたヘレナ・ボナム=カーターは良かったのだけど……。 
 テナルディエのサシャ・バロン・コーエン。
 スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師でジョニー・デップやヘレナ・ボナム=カーターとも競演しているんだけれども……。
 残念ながら、あくの強さという点では、ちょっと影が薄くなってしまった。
 もっと、毒々しい方が、全体がしまったような気がする。

 さて、ミュージカル版では、ちょっと違うところもある。
・冒頭シーン
  船を引く。
  たぶん、再逮捕後の船からの脱出シーンをイメージしてだろう。
・コゼットとパリに逃げて、修道院にかくまわれる
  倒れた馬車から救ったフォーシュルヴァンとの出会いは重要なシーンだ。
・ラスト
  ミュージカルでは、死んでいった登場人物が現れて、最後のコーラスとなる。
  でも、実写では変だ。
  だから、ネタバレになるが、幽体離脱したジャン・バルジャンが、ファンティーヌに導かれていくと、これまでのメンバーがみんな居るという終わり方。

 ちょっと、残念なのは、エンディング。
 ミュージカルナンバーを並べただけの、長いテロップ。
 興ざめしてしまう。
 感動が残らない。
 まあ、すべての関係者をださなくてはならないのが、最近のご時世なので、大変なのはわかるのだが、ここで、手を抜いて欲しくなかった。
 余韻の残る、アンコールにして欲しかった。

 さて、思ったよりも混んでいる劇場。
 そして、始まった途端に、あちこちですすり泣きが。

 最近にはない、もう一回観ても良いと思える作品であることは間違いない。