さあ、別の探し方です。

「守破離」と言う言葉は、前に、説明をしましたね。
 エヴァンゲリオンではありませんが、「序破急」なんてのもあります。

「守破離」
 まず、先人に習い、それをまねをする。
 使ってみると、うまくいかない部分があるので、試行錯誤する。
 もちろん、うまくいったり、いかなかったり。
 そして、自分のやり方をみつけていく。
 それが、免許皆伝。
 自分の居場所です。

「序破急」
 まず、基本がある。
 バリエーションが加わる。
 そして、加速されて、自分のやり方に。
 起承転結です。

 では、今回は、禅に使われる「十牛図」で、探しに行ってみましょう。

 牛は、あなたの心です。
 牛は、悟りです。
 そして、牛は、あなたの居場所そのものです。

 これが、10枚の絵で表されているので、「十牛図」と言います。

山田隆文の歯医者さん日記

<1枚目>
 尋牛(じんぎゅう)
 あなたは、一人の童子です。
 さあ、牛を捜しにいきましょう。
 でも、悟りを探しているのですが、自分がどこにいるかわかりません。
 途方にくれています。

山田隆文の歯医者さん日記

<2枚目>
 見跡(けんせき)
 牛の足跡を見つけました。
 足跡とは、本であったり、誰か先人達の知恵であったりします。

山田隆文の歯医者さん日記

<3枚目>
 見牛(けんぎゅう)
 一瞬、牛の姿をかいまみたような気がします。
 優れた師に出会いました。
 「悟り」が少しばかり見えた状態ですね。
 でも、本物でしょうか?
 あれ、これは、ロバさん(笑)。

山田隆文の歯医者さん日記

<4枚目>
 得牛(とくぎゅう)
 わあい、牛だ!
 わあい、悟りだ!
 わあ、わたしの居場所だ!
 力づくでつかまえなくっちゃ!
 一応、何とか悟りの実態を得ました。
 その気になりました。
 でもまだ、うつろいやすいものです。
 自信と不安が入り交じっています。
 いまだ自分のものになっていないようすなんですね。

山田隆文の歯医者さん日記

<5枚目>
 牧牛(ぼくぎゅう)
 牛をてなづけることです。
 悟りを自分のものにするための修行ですね。
 悟りの瞬間を忘れないようにするのには、どうすればいいのでしょうか?
 もちろん、今、現在、この場所にいることですね。
 妄想の世界ではありません。
 それを、禅の世界では「迷い」といいますね。

山田隆文の歯医者さん日記

<6枚目>
 騎牛帰家(きぎゅうきか)
 牛の背に乗り家へむかうことです。
 悟りがようやく得られて世間に戻る姿。
 さあ、もう一度考えてみてくださいね。
 どこかに、牛を探しに行きました。
 ようやく、見つけた牛を連れて家に帰ります。
 「青い鳥」みたいに、何か起こるかもしれませんね(わくわく)。

山田隆文の歯医者さん日記

<7枚目>
 忘牛存人(ぼうぎゅうぞんにん)
 家にもどりました。
 あれ、牛のことも忘れてしまいました。
 せっかく、良い本を読んだのに!
 せっかく、良い話を聴いたのに!
 せっかく、悟りを開けたと思ったのに!
 せっかく、見つけた牛さんを連れて戻ったはずなのに……。
 
 でも、悟りは逃げたのではありません。
 ちゃんと、修行者の中にあることに気づいてください。

山田隆文の歯医者さん日記

<8枚目>
 人牛倶忘(にんぎゅうぐぼう)
 すべてが忘れさられていきます。
 無に帰一することです。
 でも、なくなってしまったのではありません。
 大事なことに気がつくんです。
 牛も悟りも、自分の外に探しに行きました。
 でも、それは、外にあるのではありません。
 悟りを得たから、偉いのではありません。
 ただ、そこにあること。
 悟りを得た修行者も特別な存在ではないんですね。
 本来の自然な姿に気づくこと。
 それが、本当の悟りなんです。

山田隆文の歯医者さん日記

<9枚目>
 返本還源(へんぽんげんげん)
 自然体になりました。
 原初の自然の美しさがあらわれてくることです。
 悟りとは、特別なものではなく、自然の中にあることを表しているのだそうです。

 あるがまま。
 それが、悟りの世界です。
 様々なトラブルが起こる。
 いろいろな感情がわき起こる。
 邪念もわく。
 いろんな人がいる。
 でも、それにとらわれないこと。
 それもまた、あなたの一部であり、世界の一部。
 だから、あるがまま。
 握りしめないで、流していきます。
 と、肩の力が抜けます。
 と、小さな事には、動じません。
 さわやかな笑顔が、自然ににじみ出てきます。
 

 「菜の花や 月は東に 日は西に」(与謝蕪村)

 この句に、無理に意味を付けることができるでしょうか?
 付けるのは、教科書の編纂者か、試験問題の作成者だけですね。
 でも、その人は、与謝蕪村ではありません。
 その現場にいたわけでもありません。
 彼の気持ちが、わかるはずもありませんね。

 ただ、いいなあ。
 それだけなんです。
 素直なんです。


 さあ、最後のステップです。

山田隆文の歯医者さん日記

<10枚目>
 入鄽垂手(にってんすいしゅ)
 まちへです。
 悟りを得たあなたは、街に出ました。
 そして、童子と遊ぶ姿が描かれています。
 それは、あなたが得たものを、次の世代に伝えることです。
 人を導くことを表しています。



 いかがでしょう?

 みんな、ちゃんとわかっていますね。

 えっ?
 わかんないって?

 う~ん。
 とりあえず、牛でも、探しに行きましょうか?
 マザー牧場じゃありませんよ(笑)。