研修旅行の二日目の朝である。
 テレビを付けて、NHKのニュースを見る。
 と、7:12ごろ。
 こんなニュースが飛び込んだ。

「インプラントのトラブル!」

 インプラントのトラブルが増えている。
 腫れる。
 痛くて咬めない。
 歯医者さんでは、何のお薬を飲んでいるのか、一度も訊かれなかった。
 この患者さんは、骨粗鬆症の治療としてビスフォスフォネートを服薬していた。
 そこに、インプラントを埋め込んだ。
 当然、骨の治りは悪い。
 だから、膿が出て咬めない。

 インプラントの学会はいくつかある。
・日本インプラント学会
 http://www.shika-implant.org/
・国際口腔インプラント学会
 http://www.aiai-japan.jp/

 でも、前にも書いたように、日本では、大学レベルではなくて、開業医レベルでインプラントが臨床に応用され始めた。
 歯医者さんも、いくつのも分野に分かれている。
・一般歯科
・小児歯科
・矯正歯科
・歯科口腔外科
である。
 いまのところ、医療法では、インプラントは、看板には書いちゃいけない。
 ホワイトニングもそうである。
 だから、どの歯医者さんも外科処置が得意かというと、そうでもない。
 わたしだって、苦手分野がある。
 矯正の、針金を曲げるのはできない。

 ところが、インプラントの始めは、業者が講習会を開く。
 人間ではない。
 模型である。
 よくて、豚の顎とかを使う。
 もちろん、講師は、歯医者さんではない。
 業者の人が、器具の使い方を説明する。
 で、いきなり、患者さんに打ち込む。
 黎明期は、そんな時代だった。
 だから、トラブルも多い。

 今は、もちろん、ちゃんとトレーニングをする。

 でも、人間。
 罠がある。
 アイデンティテイが出来上がっていないと、この、誘惑に負ける。
 新しいことを学んだ。
 やってみたい!

 なので、患者さんへ。
 あまり、インプラントやホワイトニングや自費診療を熱心に勧める歯医者さん。
 お気を付けあれ!
 セカンドオピニオンをもらいましょう。

 埋伏歯の親知らずも抜いたことがないのに、インプラントは打てない。
 切開と縫合の基本。
 炎症の処置ができる。
 上顎洞に落ちたとき、下顎管をどう避けるか、出血の時の止血法……。
 などなどなど……。
 外科的な基本的な知識と技術が必要だ。

 さて、日本顎顔面インプラント学会はこんなアンケートをまとめた。
 http://www.jamfi.net/

「インプラント手術関連の重篤な医療トラブルに関する緊急アンケート調査結果(速報)」
 w.jamfi.net/PDF/anq_report120531.pdf

 アンケートの対象は、日本顎顔面インプラント学会認定施設79施設。
 対象症例は、インプラント手術関連の重篤な医療トラブル症例。
 (ほとんどの症例は、他施設でのトラブルの後処置だそうだ!)

 すると、過去三年間で、421 件の報告が集まった。
・1位 神経損傷         …… 158 件
  下顎の顎の中の下顎管を走っている下歯槽神経を傷つけてしまった。
  と、下あごが痺れて(感覚が麻痺)しまう。
  これは、なかなか、治らない。
  治っても、5年とか10年という時間がかかることもある。
  もちろん、100%までいかない。
  切ってしまった場合には、治らない。
・2位 上顎洞内インプラント迷入 …… 63 件
  つまり、上顎洞という鼻の横の空洞に、インプラントが落っこちた。
  鼻からは取れないので、開洞(犬歯の上あたりの骨を開いて)して、取り除かなくてはならない。
・3位 上顎洞炎         …… 61 件
  上顎の歯の根っこの先は、すぐ、上顎洞。
  と、インプラントが炎症を起こすと、すぐに、上顎洞に波及する。
  嫌気性菌やアスペルギルスなんかが籠もると、超やっかいである。

 だそうである。

 では、どうするか?
 こんな、歯医者さんなら大丈夫。

・きちんと、メリットとデメリットを話してくれる
・急がない
・できない場合には、「できない」と言ってくれる
  骨粗鬆症や、その他の全身疾患、骨が薄いなど
・アフターケアをしっかりしてくれる
・きちんと、契約書(同意書)を作ってくれる
・何かあった場合には、大学病院等を紹介してくれる体制が整っている

なら、大丈夫です。