なるものを、歯科衛生士学科の専攻科で教えている。

 さて、カウンセリングとはなんぞや?

 これが、なかなか、難しい。

 ちょっと整理をしてみよう。

・命令・禁止
  有無を言わせない!
  だって、たとえば、避難命令。
  逃げなければ死んでしまう。
  だから、必死だ。
  ただし、問題点がある。
  命令が正しいのかどうか?
  もし、間違っていたら?
  そして、命令を出す人。
  トレーニングは必要ない。
  命令は命令である。
  だから、生殺与奪の人間が発した言葉は、部下にとっては命令に等しい。
  その一言は、慎重に選ぶ必要がある。
  だから、大震災の時、政府のお歴々は、言葉に詰まってしまった。

・指導
  よく、歯みがき指導をという言葉を使う。
  交通指導もある。
  青は進め、赤は止まれ。
  これは、知らない人に教えるときである。
  でも、一方的。

・教育
  教えて、育む。
  教えては、育むにかかる。
  つまり、育むために教えるのである。
  もちろん、前に紹介した算数の例のように、4+3=7が間違いで、3+4=7が正解みたいな、
 杓子定規な方法では、教えてやっているである。
  子供たちを、ひとつの枠にはめようとする。
  そして、ただ、教科書を読む、線をひけという、そんな教育には、教育者自身の勉強は必要ない。
  そして、教育は評価であり、罰則である。
  恐怖政治だ。
  茶髪禁止。
  スカートは膝上何センチまで。
  まえがみは伸ばすな……。
  教育ではなくて、命令や指導ばっかり。
  楽しくない!
  国歌斉唱で起立しない人を罰するのではなくて、どうしたら、みんなが自発的に自分の母国を
 愛せるようになるのか考えさせるのが教育の正しい姿である。
  欧米ではこうだ。
  ◎+△=7。
  ◎と△に入る数字の組合せはどんなのがある?
  答えに至るには、たくさんの方法があるよと教える。
  これは、楽しい。
  みんな、ドロシー・ロー・ノルトさんの詩をもう一度読み返してほしい。
  教育には、トレーニングが必要だ。

 ここまでの問題。
 さあ、主体は、命令をする人、指導をする人、教育をする人。
 命令をされる人、指導される人、教育を受ける人ではない。
 あくまでも、情報を発信する人が主人公。
 ここからは、主体が逆転する。
 情報が欲しい。
 答えが欲しい。
 解決したい。
 そちらが、主人公。

・コンサルティング
  すこし、知識が付いてきた。
  と、疑問点が出てくる。
  これを質問する。
  教員や私たちが、それに対して、答える。
  つまり、具体的な質問に対して、具体的に専門知識を用いて答えるのがコンサルタントだ。
  そのためには、知識が必要である。
  勉強も必要である。
  質問したら、「そんなことも知らないの?」「自分で調べなさい」ではだめ。

・カウンセリング
  さあ、クライアントは悩みを持っている。
  でも、もやもやしていて、何が問題なのかわからない。
  ここが、コンサルタントと違う点。
  そして、カウンセラーは、答えを与えない。
  自分で、答えを見つけるための手助けをする。
  だから、カウンセラーにはトレーニングが必要。
  スキルが無くてはつとまらない。
  昔のオールドエイジの先生方のように、
  「……しなさい」
  「……しちゃだめ」
  「どうして、私の言うことがきけないの?」
  「……ちゃんだって、ちゃんしているでしょ!」
  なんて方々には、とうてい無理。
  ちゃんと、相手の言葉を傾聴し、相手の感情に共感し、支援しなくてはならない。
  わたしだって、たくさんの講習会にも行って勉強した。
  経験を積んだ。
  そのほか、色々な講習会や講演会に顔を出して、情報収集の毎日。
  それでも、まだまだ、先がある。
  まだまだ、とてもじゃないが、免許皆伝にはならない。
  悩みを持った学生や患者さんと出会う度に、はっとさせられている。
  まだまだ、学ぶことがたくさんあることを知る。

 さて、カウンセリングの問題点。
 傾聴テクニックは、基本的には、みんな同じ。

 問題はそこから。
 フロイトさんが居る。
 ユングさんも居る。
 カール・ロジャーズさんも居る。
 分析 · 行動主義心理学。
 認知行動療法。
 描写 · 生態システム論も。
 現存在分析も。
 家族療法も。
 フェミニストセラピーも。
 ゲシュタルト心理学も。
 ナラティブセラピーも。
 精神力動的精神療法も!
 トランスパーソナルも!
 ……!!!!

 たくさんの流派がありすぎ!
 もちろん、クライアントもたくさん。
 と、ある方法は、あるクライアントには相応しいかもしれない。
 でも、別の方法は、向かないかもしれない。
 でも、あるカウンセリング方法だけを学んできたカウンセラーには、他のやり方を応用できない。

 笑い話。
 わたしも、前に、音楽療法協会(バイオミュージック学会)に所属していた。
 そこで、面白いことが起こる。
 なんでも、音楽で解決しようという思い込みがある。
 と、こんな事例が紹介されていた。
 音楽療法が通用しないクライアントが居る。
 クライアントの職業は、音楽家(笑っていいところです)。
 音楽を素直に聴けないんですね。
 どうしても、演奏家を分析してしまう。
 と、リラックスなんて、とんでもありませんってこと。

 問題は続く。
 たくさんのカウンセラー資格がある。
 ・スクールカウンセラー(職業名)
 ・企業内カウンセラー(職業名)
 ・産業カウンセラー(資格名)
 ・キャリアカウンセラー(職業名)
 ・障害者職業カウンセラー(職業名)
 ・環境カウンセラー(資格名)
 ・不動産カウンセラー(資格名)
 ……

 最近では、カウンセリング化粧品なんてのも……(???????)。

 そして、残念ながら、国家資格ではない。
 あくまでも、民間資格。
 臨床心理士や医療心理師(仮称)なんてのを国家資格にしようという動きがあるが、まだまだ、先の話。

 問題点はまだまだ。
 フロイトもユングもお医者さん。
 ですから、欧米では、どちかかというと、医療系や理系。
 体のことも知って、心に応対。
 心身と言うから、切っても切り離せない。
 でも、日本の心理学科はなぜか、文系!
 教育学部にあったり、文学部にあったり……。

 さあ、私たち歯科医師や歯科衛生士も、たくさんの、クライアント(患者さん)に出会う。

 じゃあ、どうするの?

 なかなか、難しい……。

 まだまだ、勉強中!