山田隆文の歯医者さん日記

 アイデンティティの確立しないあなた。
 アイテムを探しきれなかったあなた。
 そして、心にたくさん隙間のあるあなた。
 どうやったら、その隙間が埋まるんでしょうか?

 笑うセールスマンの喪黒福造さんが、付け狙っていますよ(笑)。

 笑うならいいんですが、もし、相手に、悪意があったらどうなるでしょうか?

 そんな事例はたくさんありますね。
・年金基金のAIJ
・「先物やりませんか?」
・「投資マンションのでものありますよ!」
・キアヌ・リーブス主演の「ディアボロス」
 アル・パチーノの演じた悪魔役には、背筋が凍りました。
 私たちの心の隙間は、いつも、付け狙われています。

 もちろん、アイデンティティの確立した人には、何の問題もありません。
 甘い話には乗りません。
 だって、自分で判断できます。
 だから、「ふうん、そうなの」でおしまいです。

 でも、そうでないあなたには、誘惑はたくさんあります。
 メフィスト・フェレスがささやきます。
「おまえに、力を与えよう」
 あなたの心は、ふっと、動きます。
 地位。
 お金。
 権力。
山田隆文の歯医者さん日記

 餌に群がる、池の鯉みたいです。
 大変ですね。

 許由なら、こう言います。

 許由は、中国の三皇五帝時代の陽城槐里の人です。
 その人格の廉潔さは世に名高く伝わっていました。
 堯帝は、その噂を聞きました。
 そして、彼に帝位を譲ろうと申し出ました。
 でも、それを聞いた許由は逃げ出しました。
 そして、箕山に隠れてしまいます。
 それではと、堯帝は、さらに高い地位をもって許由に報いようとします。
 しかし、許由は潁水のほとりにおもむき「汚らわしいことを聞いた」と、その流れで自分の耳をすすいだといいます。
 さあ、それを見ていた巣父。
 やはり伝説の高士として知られています。
 巣父は、その川で、牛に水を飲ませようとしていたんですが、「牛に汚れた水を飲ませるわけにはいかぬ」と立ち去ってしまいました。
 そのいわれは、「許由巣父図」として描かれて、東京国立博物館にも飾られているそうです。

 さあ、心の隙間。
 他人のエネルギーを奪おうとしても、奪えませんでした。
 他人の富を奪おうとしても、隙間は埋まりませんでした。
 でも、それを、感じない方法があります。
 最後の手段です。

 一応、助言します。
 できれば、辞めた方がいいですけど……。 

 それは、思考をやめることです。
 あなたの、自由を譲り渡すことです。

・会社の歯車になる

 それも、いいですね。
 与えられた仕事だけやっていればいいんです。
 経験的に、自分がやられてきたことを、ただ、次の世代に伝えればいいんです。
 考えなくてもいいですね。
 誰かが、あなたに言ってくれます。
 「……しなさい」「……しちゃだめ」
 楽でいいですね。
 朝起きて、満員電車に揺られ、仕事に行って、お昼食べて、また仕事して、仕事が終わって、また満員電車に揺られて家に帰って、風呂入って、テレビ見て、ネットして、寝る。
 そして、次の日も。
 また、次の日も。
 やがて、定年を迎えます。
 もしかすると、そこで、気づくかもしれません。
 あれ、やることがない……。

 もっと、酷い方法もあります。

・はまる

 です。
 「嵌る」です。
 「填る」とも「塡る」とも書きます。
 「嵌る」は、こうも読みます。
 「すがる」
 いかがでしょうか?

 ゲームに嵌る。
 ギャンブルに嵌る。
 ……。
 ひとつには、嫌な現実から逃げ出しすための、有効な一つの方法かもしれません。
 現実逃避ですね。

 でも、解決にはならないことは、もう、おわかりですね。

 すがる。
 誰かにすがる。
 親だったり、パートナーだったり、会社だったり、土地であったり……。
 別の何かかもしれません。
 いい年をして、親にすがっていれば、これは、パラサイトですね。
 会社にすがることもあります。
 そんな人は、いざ、会社が傾いたりしたら、パニックです。
 慣れ親しんだ仕事から配置転換なんかされたら、もう、ストレスで胃に穴が空いてしまうかもしれません。
 悩みのある人は、誰かにすがろうとしたりします。
 だから、実は、カウンセラーは、クライアントにすがらせないように、セパレーションをしながら、苦労をしていたりするんです。

 もう一段、すごい、すがり方があります。
 啓発セミナーなんてのもあります。
 それから、宗教です。
 アメリカの裁判で、聖書の上に手を置いて「真実を話します」なんてのはお話ししました。
 日本で、「古事記」や「日本書紀」の上に手を置いてなんてことはありませんね(笑)。
 でも、ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も、なぜか、こだわっています。
 だから、戦争が終わりません。
 でも、三大宗教ならまだいいんです。
 あなたの心の隙間を狙っている人が言います。
 「私の言うことを信じなさい」
 「信じるものは救われる」
 「私は神の使いだ」なんて言います。
 最近は、宇宙人さんも居ます(笑)。
 すがることの問題点、思考力を譲り渡すことの問題点は、ちょっと前の、ある芸能人さんのニュースでもご存じですね。
 「あなたの未来は、こうなっています」
 「私の言うことを信じなければ、不幸になります」
 「あなたの、祖先が、心配していますよ」
 「……」

 笑い話ですが、昔、こんな押し売りが来ました。
 「あなたの後に、祖先の霊が見えます。
  お坊さんと武士ですね。
  この……を買うと……」
 アイデンティティの確立した私は、こう訊きました。
 「何宗のお坊さん?
  どこの藩の武士?」
 もちろん、その方は、這々の体で退散しました(大笑)。

 でも、そういった悪意のある存在は、あなたの心の隙間を巧みに狙います。
 あなたの、弱点を突いてきます。
 巧妙です。
 「……すれば、幸せになります」
 って、条件付きです。
 条件付きはいけないって、何度も、書いてきましたね。
 もちろん、その条件はこうです。
 「私の言うことを信じれば……」
 「お布施をすれば……」

 でも、イエス・キリストも、お釈迦様も、教会やお寺を盲信しろなんて、一言も言っていませんよね!

 でも、あなたの心の隙間を狙う、そういったことを言う人は、凄い人に見えます。
 一見、素晴らしい人に見えます。
 取り巻きが、褒めそやします。
 持ち上げます。
 あなたも、つい、信じたくなります。

 でも……。

 気がついた時には、遅いですよ!

 あなたは、あなたの思考力を相手に与えてしまいました。
 あなたは、あなたの自由を相手に与えてしまいました。
 あなたは、あなたの選択権を相手に与えてしまいました。

 もう、あなたではありません。
 あなたの、オリジナリティはどこへ行ってしまったんでしょうか?

 さあ、アイテムを探しましょう。
山田隆文の歯医者さん日記

 こんな風に、悠然と泳いでみましょう。

 そして、許由みたいに言ってみましょう。
 「権力?そんなもん、いらん」
 かっこいいですね!

 今からでも遅くありません。
 なれますよ!
山田隆文の歯医者さん日記

 大地に、きちんと、根を張ってください。
 大地に足を付けてください。