エリクソンのステージ5で学ぶ事。
 それは、あなたのアイデンティティの確立でした。

 では、アイデンティティとは何なのでしょうか?
 少し解説をしていきます。

 まず、あなたがいます。
山田隆文の歯医者さん日記

 これはいいですね。

 次のステップです。
 あなたの、テリトリーがあります。
山田隆文の歯医者さん日記

 これは、あなたの肉体であり、時間であり、能力です。
 もちろん、あなたの心もここにあります。
 あなたの、理性もここにあります。
 
 あれ、美味しそうな果実の実った木が生えています。
山田隆文の歯医者さん日記

 それは、学んできた知識であり、あなたの技術です。
 もちろん、あなたのテリトリーに生えていますので、あなたのものです。
 ですから、あなたは、その果実を好きなときに、好きなように食べる事もできます。
 だって、あなたの所有物ですから。
 どのように使っても、あなたの自由です。

 仮に、あなたのテリトリーの外に樹があったとします。
山田隆文の歯医者さん日記

 あなたは、自分の樹か、それとも自分のものではない樹か、ちゃんと認識できます。

 あれ、隣に別の人がいます。
山田隆文の歯医者さん日記

 そこにも、その人のテリトリーがあります。
 その人が自由に使っても良い、体であり、時間です。
 そして、そこには、その人の持っている知識や技術の実った樹があります。

 でも、あなたは、ちゃんと認識をしています。

 これが、正しいアイデンティティのありかたです。

 自分のものと、他人ものを、きちんと区別できる。
 確か、保育園や幼稚園でお勉強をしてきたはずです。
 おもちゃの取り合いですね。
 そして、そのおもちゃをどのように扱ったらいいのかを、学んできました。
 でも、保育園や幼稚園で学んだのは、目の前にあるおもちゃという、具体的で、物質的なものです。
 ステージ5では、抽象的で、目に見えない概念についても、同じ事を勉強しています。

 所有物。
 それは、感情で言えば<嫉妬>です。
 嫉妬とは、自分が何を所有しているか、何を所有していないかを見極めるための感情ですと、前にお話してきました。
 自分が持っているものを、なくす。
 悲しいです。
 他の人が、あなたの持っていないものを持っている。
 羨ましいです。
 いかがでしょう。

 自己と非自己。
 これは、私たちの体を守っている免疫みたいものです。
 私たちの体の中のリンパ球は、私たちの体が育つに従って、これは、自分の体である(自己)、これは、外から入ってきたばい菌やウイルスなど自分のものではない(非自己)、と、ひとつずつ学んでいきます。
 そうやって、私たちの体を守っています。

 でも、その免疫が壊れてしまったら……。

 自分のものと、他人ものが、区別できません。
 もし、反応しなくなったら、感染性の微生物が来たら、病気になってしまいます。
 もし、過剰反応をしたら?
 アレルギーですね。
 もし、自分の体も認識できなくなったら?
 自己免疫疾患(膠原病)という、自分自身を攻撃する難病もあります。

 まさに、自己と非自己の境界線がなくなります。
 これが、アイデンティティ・クライシスです。
 アイデンティティの崩壊です。

 そうすると、こうなります。

 もし、自分のものと、他人ものが、区別できなくなると……。
山田隆文の歯医者さん日記

 ジャイアンのできあがりです。
 「俺様の、言う事を聞け」
 「俺のものは俺のもの、おまえのものは俺のもの」
 あなたは、そんな困った上司の前では、その上司の手足です。
 あなたの時間も、あなたの技術や能力も、みんな、その上司のためにあります。
 私の同僚も、ときどき、今は絶滅したはずの「滅私奉公」なんて言葉を使います(困)。
 あなたのオリジナリティも、時間も、能力も、あなたの自由にはなりません。
 「俺の、歯車になれ!」なんて言われます。
 まあ、とんでもない札束でも摘んでくれればいいんですが、そういう奴に限って、給料は値切ります(困)。

 アメリカではこうですね。
 残業をするような社員は無能と評価されます。
 一方で、部下を残業させるような上司も、無能と評価されます。

 ある映画で、こんな歯医者さんのシーンがありました。
 患者さんが来ます。
 でも、歯科衛生士さんは、ドクターも患者さんも放っておいて、「わたし、時間なんで帰りますね」と、さっさと帰ってしまいます(笑)。

 では、次のシチュエーションです。
 もし、過剰反応をしたらどうなるでようか?
 あなたは、面倒くさい部下です。
 上司の言う事に、いちいち過剰反応します。
 あなたは、自分のテリトリーが攻撃を受けていると感じますので、当然、反撃に出ます。
 あなたの感情免疫細胞が、全力で、迎撃を開始します。
 とげとげしたあなたのできあがりです。

 もし、自分の体も認識できなくなったらどうなるでしょう?
 もう、ぐずぐずですね。
 あなたは、会社の歯車かもしれません。
 モダンタイムスで、チャールズ・チャップリンがそんな役どころを演じて、歯車の中に巻き込まれてしまいましたね。
 あなたは、その笑いの中に秘められた皮肉に気がついたでしょうか?
 あなたの自由な心も身体も、誰かのテリトリーに乗っ取られています。
 朝起きて、仕事に行って、帰って、疲れて、寝て、また、体も心の疲れも取れないままに、朝起きます。
 その繰り返し。
 ものを考える時間もありません。
 あなたのアイデンティティなんて考える余裕もありません。
 馬車馬のようです。
 競馬場で、よそ見をしないように、目の横にガードを付けたサラブレッドのようなものです。
 サラブレッドならまだましですね。
 農耕馬?
 ロバ?
 ……????

 まあ、それも、あなたの選択です。


 でも、わたしは、もっと、楽しくて、楽で、わくわくする事を選択したいです。

 それは、みんなが、アイデンティティを確立した世界です。
 自分のテリトリーを知っている。
 自分の能力を知っている。
 自分の持っているものも、持っていないものもわかる。
 だから、自分の持っているものを、他の人のために活かしていこう。
 でも、他の人のテリトリーに、無断で土足でずかずか入り込むような事はしません。
 お互いが、お互いを理解し、お互いを尊重します。
 だから、誰も傷つきません。
 誰もが、にこにこと笑っています。


 さて……。
 この樹の実は、なんなのでしょうか?

 もしかして、知恵の実……(笑)。