自分の感情とうまく付き合う方法は、共感であり、感情移入です。
 でも、単に、感情に流されるのではありません。
 感情に逆らうのでもありません。
 感情を排除するのでもありません。
 嫌な感情をぶつけられた時に、過剰反応することもでもありません。
 あなたが、一人称で観ていても、あなたには、いくら目をこらしていても、見えないものがあります。

 前にもお話ししたように、あなたは、壁の目の前に立っています。
 目の前に見えるのは、壁だけ!
 ワンピースのレッドラインみたいです。
 逃げ道がありません。
 にっちもさっちもいきません。

 でも、一歩下がってみたらどうでしょうか?
 壁の高さは見えますか?
 壁は、左右のどこまで広がっていますか?
 階段や扉は?

 感情に本流されて、目の前に壁のある状態では見えないものも、少し離れてみることで、もっと、いろいろなものが見えてきます。

 では、別の見方をしてみませんか?
 あなたは、傍観者です。
 あなたは、壁のそばの喫茶店で午後のお茶を飲んでいました。
 と、一人の旅人が歩いてきます。
 旅人は、壁のところまで突進して、立ち止まってしまいました。
 壁にぶち当たって、困っているようです。
 あなたは、客観的に、その旅人を観察することができます。

 面白いことに、人は、自分のことはよく見えません。
 でも、他の人のことは良く見えます。
 と、何度も書いてきました。

 だから、ちょっと一歩下がって、自分自身を、別の立場で見つめてみます。

 今、あなたが、トラブっている。
 でも、その相手は、どう思っているでしょうか?
 何が起こっていると思いますか?

 私など、喧嘩の時にでも、「この相手は、いったい何に対して怒っているんだろう?」なんて考え始めると、おかしくなって、喧嘩にならなくなってしまうことが多いですが……(笑)。

 最近では、こんな言葉を使うこともあります。

<メタ認知>
 (http://ja.wikipedia.org/wiki/メタ認知)
  認知を認知すること。
  人間が自分自身を認識する場合において、自分の思考や行動そのものを対象として
  客観的に把握し認識すること。
  それをおこなう能力をメタ認知能力という。

  現在進行中の自分の思考や行動そのものを対象化して認識することにより、
  自分自身の認知行動を把握することができる能力を言う。
  自分の認知行動を正しく知る上で必要な心理的能力。
  Knowledge Monitoring Abilityなどともいう。
  Knowing about knowing(知っているということを知っている)
  Cognition about congnition(認知していることを認知している)
  Understanding what I understand(私は理解しているということを理解している)
 だそうです。

 実際には、私たちは、自然にこの能力を身につけています。
 何も、人の心理だけではなく、わたしたちは、勉強をする時に、この能力をふんだんに使ってきました。
 でも、いざ、人間関係になると、使えなくなってしまいました。

 心理療法もサイコドラマも、いろいろな役割を演じることで、分析を進めます。
 ナラティブセラピーでは物語を作り出します。
 プレイバックシアターもあります。
 認知療法も、自分自身の行動を反証したり、多面的解釈を生み出していくことで、見つめ直していく。
 たとえば、こんな療法もああるんですね。
 椅子を二つ用意する。
 一つは自分。
 もう一つは、問題を抱えている相手。
 あなたは、相手の椅子に座り、相手の気持ちになって、あなたに対応してみます。
 客観的に自分を観る一つの方法です。

 でも、まあ、いきなり、自分自身と直面というのには、無理もあります。

 なので、まずは、エリクソンのステージや、マズローの欲求が正しく満たされなかったら、どのような大人になってしまうのか、そこから観ていきましょう。