山田隆文の歯医者さん日記

 さあ、人生ゲームもステージ6面です。
 あなたは、学校を卒業して、社会に出ました。
 初期成年期(前青年期)といいます。
 ここでは、あなたは「親密性」を学んでいきます。

 親密性?
 つまり、人間関係です。

 アイデンティティの確立した人と、アイデンティティの確立した人が出会いました。
 良好な人間関係が構築できます。
 お互いに、相手の個性を尊重できます。
 あなたの持っている知識や技術を与え合います。
 だから、トラブルは起こりません。
 いつも、職場には笑いが絶えません。
 
 でも、アイデンティティ・クライシスを抱えたまま、大人になってしまいました。
 社会に出ました。
 何が出来上がるのでしょうか?

 あなたの周りにいる、嫌な上司です。
 あなたの周りにいる、面倒くさい部下や後輩です。

 彼らは、アイデンティティがありません。

 と、どうなるか?
 自分と、他人の区別が付きません。
 自分の部下は、自分の手足だと思っています。

「俺の命令は、絶対服従」
「誰が、給料を払っていると思っているんだ」
「俺だって、サービス残業してるんだから、おまえらも付き合うのが当たり前だ」
「俺の酒が飲めないのか?」
「おまえって、協調性がないのか?」

 これもまた、笑いが話ではありません。
 知り合いの某先生。
 本当に、パワハラで、辞表を書かなくてはならなくなりました(困)。
 とある先生。
 抜歯の時に、患者さんが「痛い」と言いました。
 そしたら、「俺の麻酔は効くはずだ!」

 をいをい!

 自分が、どんな人か。
 他人の評価、それも、他人の目を気にしていいかっこしなければ、維持ができません。
 ブラックホールみたいなんです。
 自他の区別がありませんから、あなたのエネルギーをどんどん吸い取ります。
 自分が、どんな人か?
 自分よりも、弱そうな人間に命令をして、自分の言う事を聞かせる事にだけ、快感を覚えます。
 自分がスポイルされたら、居場所を失ってしまうからです。
 お山の大将です。 

 でも、彼らは、不幸なんです。
 何も、人生に必要なアイテムを集められなかったんです。

 劣等感の裏返しです。

 だって、人生ノートには、他人の言葉しか書かれていません。
 もう、誰も教えてくれません。
 知らない事を、誰かに聞く、勇気もありません。
 でも、権威には弱いです。
 「……大学の、……先生が、こう言っていたから」
 でも、自分の言葉ではありませんね。
 だから、これまでに、学んだ事、経験した事を、ただ、繰り返すしかありません。
 自分のなかで、その方法が、正しいのか、間違っているのか、吟味してみた事なんてありません。
 だって、「考えるな」と教えられてきました。
 それを、バカみたいに実践しているだけなんです。
 その人にとって、信じられるものでしょうか? 
 お金だったりします。
 権威だったりします。

 「俺の物は俺の物、他人の物は俺の物」のジャイアンです。
 強いものにへらへらする、スネ夫君です。
 お勉強一本のできすぎ君です。
 自分に自信のないのび太君です。
 誰かに引きずられてしまう、しずかちゃんです。
 変なアイテム出して、失敗ばっかりするドラえもんのできあがりです。

 人間なんて、立って半畳、寝て一畳です。

 私の目には、そんな人たちは、ほんとうに哀れに見えます。

 一方で、そんな攻撃にさらされる人もいます。
 もちろん、自分がありません。
「私は、こんな人間です」
 と、はっきりと言えれば、べつに、どんな人が目の前に現れたって、へっちゃらです。
 あなたのエネルギーを奪われる事もありません。
 だって、あなたの人生魔法呪文ノートには、プロテゴ・マキシマ(最大防御呪文)が入っています。

 もし、言えないと……。
 あなたは、周りの目を気にします。
 上司に、スポイルされるのは嫌だ。
 でも、上司に、絶対服従を強制されるのも嫌だ。
 あれ、同僚にも、変な目で見られる。
 あなたの人生ノートには、防御呪文がありません。
 だって、
「先生の言う事は、ちゃんと聞きなさい」
「みんなに、あわせるのよ」
「……」
 なんてことしか書いてありません。
 さあ、どうなるでしょうか?
 あなたは、エネルギーを吸い取られて、崩壊します。
 自分自身を維持できません。

 時には、切れます。
 相手の事を考えずに、急に、攻撃的になります。
 時には、防御バリアを張り巡らします。
 とげとげが生えていますので、触ると痛いです。
 そして、やり過ぎたと気が付きますが、その時には、もう、誰もあなたの事を見向きもしてくれません。
 あなたは、落ち込みます。
 自分が誰かわかりませんから、居場所もありません。

 あれ、どうしちゃったんでしょう……。
山田隆文の歯医者さん日記

 前に、こんなお話をしましたね。
 エースをねらえでも紹介された、山田禅師の夢です。
『夢を見た。
 地獄に行ってみた。
 と、大きなお皿に山盛りのごちそうがある。
 でも、地獄の亡者達はみんな飢えていた。
 なぜなら、1メートルもある長い箸で、自分だけごちそうを食べようとするのだが、口に届かないのだ。
 今度は、極楽に行ってみた。
 おや、地獄と同じ大きなお皿に、山盛りのごちそうがある。
 でも、極楽の住民は、みんな、お腹いっぱいでにこにこしている。
 なぜなら、同じ1メートルもある長い箸で、お互いに、ごちそうを食べさせあっていたからだ』

 もう一度、この教訓を考えてみてください。

 そうなんです。
 もし、あなたが、自分のエネルギーを奪われまいと、守りに入ります。
 でも、あなたのエネルギーは、どんどん吸い取られて、枯渇していきます。
 あなたは、疲れ切っていきます。
 だって、あなたの周りにある壁は、悪いエネルギーばかりでなく、良いエネルギーも遮断してしまうんですから。
 もし、あなたが、自分のエネルギーを、自らの意志で誰かに与えようとします。
 するとどうでしょう?
 あなたのエネルギーは減る事はありません。
 あなたのエネルギーはどんどん増えていきます。
 だって、世界中の全てのものは、あなたの味方なんですから。
 あなたは、どんどん元気になっていきます。

 奪い合う人生か。
 それとも、与え合う人生。

 私は、後者の方がずっと好きです。

 誰もが、同じ、人生ゲームのステージにいます。
 平等です。
 自由です。
 だって、聖書に出てくる神様が、「自分と同じに人間を作って、良し」って言ったんですね。
 「知恵の実」は、善悪を判断する実でしたね。
 だから、私たちは、自分で判断できます。

 極楽(天国)も地獄も同じ場所にあるんです。

 神様の作った、人生ゲーム。
 きっと、神様は笑っています。
「をいをい、そこにどぶがあるよ」
「ケーキは、こっちだから」
「ああ、こけた!」
「よしよし、ステージクリアしたな」



 そして、もうひとつ。
 大事な事を忘れないように。

『あなたは、ちゃんと、今、ここにいます。』