クレームは難しい。
 そのまま伝えれば、角が立つ。
 真綿にくるんだように言っても、伝わらない。
 伝わっても、他人事だと思っている。
 もっと悪い例では、クレームを言った方が悪者扱いされる。
 ひどいときには、クレーマーになってしまう。

 夕べの卒業生とのお食事会。
 そこでも、スタッフのトレーニングの問題が話題に出た。

 ある、若いスタッフに「こんな風にした方がいいよ」と、優しく伝えた。
 でも、逆ギレされる。
 「なんで、あんたに言われなくちゃならないの!」

 でも、伝えなくては、相手にわからない。
 どうやったら、受け入れてもらえるのか?

 仕方がないから、こういう事にしたそうだ。
 「(歯科器材)業者さんが、こうやった方が、壊れにくくて、長持ちするってさ」
 「技工所が、○×しておくといいって」

 面倒くさい世の中だ。

 さて、ときどき、旅行や出張のためにホテルの口コミもチェックする。
 ひとつは、どこのホテルに泊まろうかチェックするため。
 もうひとつは、歯科医療サービス向上のための、お勉強だ。

 とあるホテル。
山田隆文の歯医者さん日記

 同じ内容のクレームが何度も書き込まれている。
 ホテル側のコメントが書き込まれているだけ、努力は認める。
 スタッフは、
 「サービス向上のために、このような事がないよう、参考にさせていただきます。
  またのご利用をお待ちしています」
 なんて書き込んでいる。
 でももちろん、お客さんは「二度と泊まりません!」(笑)。
 だって、次に泊まったときに、改善されている可能性はどれほどあるのか?
 また、嫌な思いはしたくないのが人情だ。
 つまり、書き込んだスタッフは認識をしたかもしれないけれど、おざなりの決まり文句で返事を書き込んでいるし、それが、スタッフには伝わっていない。
 だから、まったく、改善されていない。
 ってことになる。
 でも、それは、なかなか難しい。
 ディズニーのように、あるトラブルの解決法が、翌日には、全スタッフ(キャスト)に伝わっているなんて、相当のシステムと、スタッフのモチベーションが必要になる。

 別のホテル。
山田隆文の歯医者さん日記

 もちろん、クレームも書き込まれる。
 お客さんのニーズと、提供するサービスにディスクレパンシーがあるからだ。
 それは、同じ物事であっても、立場が変われば、見方も違う。
 お客さんの求めているリアリティと、提供可能なリアリティには差がある。
 当たり前の事だ。
 そのギャップを埋めるのがサービス精神だが、なかなか難しい。
 でも、クレームをネガティブなものだとはとらえない姿勢が必要だ。
 そのホテルの口コミサイトには、こんな書き込みがあった。
「クレームを書き込んだあと、ホテルから早速お詫びの電話があった」
 そのスピードが大事なのだ。
 きっと、そのお客さんはリピーターになるに違いない。

 むかし、こんな週刊誌の記事を読んだ。
 リッツカールトンやペニンシュラやコンラッドなど、ホテル外資戦争と呼ばれて、たくさんのホテルが林立して開業した頃のレポートだ。
 どのホテルが一番サービスがいいのか。
 その週刊誌は、覆面調査員を宿泊させる。
・部屋の広さ
・アメニティ
・クリーニングサービス
などなどの項目が並ぶ。
 そして、無理難題をふっかける。
・1万円で観光をしたいのだが……
 反応は、パンフレットを渡されるだけのホテルから、はとバスを照会されたり、最高のものでは、きちんんとニーズをまで聞かれて、モデルプランまで立ててくれるところもある。
・カツ丼を食べたい
 もちろん、メニューにはない。
 悪いところでは、「ない」と即答される。
 メニューにはなくても、「作ります」と返答するホテルもある。

 お客さんは千差万別である。
 だから、求めているサービスも、千差万別。
 すべてのお客さんに同じサービスをしても受け入れてもらえない。

 私だって、朝の学会時間が迫っていれば、あくせくと朝食をぶち込む。
 でも、学会も終わり、今日は飛行機の時間までちょっと観光して、お土産を買ってというときなら、新聞読みながらコーヒーのおかわりも頼みたい。
 だから、同じお客さんだって、その時によって、求めている事が違う。

 これは、歯医者さんに来る患者さんもまた同じ。
 痛みや取れたからと緊急事態もあれば、メインテナンスでゆっくり時間のあるときもある。
 患者さんのニーズに合わせた対応をするのも、なかなか、骨が折れる。
 そう考えるか?
 それとも、それで喜んでくれる患者さんの笑顔を見たいから、楽しいと考えるか?

 勉強になります。