でんたるこみゅにけーしょん ー歯科医療面接総論ー 学建書院
http://www.gakkenshoin.co.jp/113_1422.html
こんな、歯科医療従事者向けの本を出させていただいて、10年になる。
おかげさまで、第3版までこぎ着ける。
いくつかの学校で教科書にも採用していただいているし、歯学部などでも、歯科医療面接などの講義の参考書としてシラバスに載せていただいている。
当時は、歯科医学教育にも、コミュニケーションをという事で、歯科医療面接(変な言葉だが、メディカルインタビューを医療面接と無理矢理翻訳している……)の講義が始まったばかりだった。
なので、学生講義ノートをまとめさせていただいた。
今では、全ての歯科大学では、入学当時から一貫したコミュニケーション教育が行われるようになってきた。
さて、医療面接の中で、コーエン・コールの提唱する3っつの役割軸がある。
・情報収集
・ラポールの確立
・患者教育と動機付け
である。
そのラポール(同僚でラポートと読んだ人もいたけど……)=患者さんと私たち医療従事者の信頼関係を築く上で重要なことに、患者さんの感情への配慮と共感という事があった。
これは、「あなたの心にご用心」ということで108回ほど書かせていただいた。
さて、本題のコミュニケーション。
これについても、10年分の経験をどこかに残したいと思った。
残念ながら、今のところ、「でんたるこみゅにけーしょん」の続編を書くご依頼もないので、少し、ブログを借りてご紹介していきたいと思う。
さて、コミュニケーション。
私は嫌いである!
以上、終わり。
……。
では、話が進まない。
実際、私はコミュニケーションは苦手である。
なぜ、嫌いか?
なぜ、苦手か?
特に、何か意図を持って近寄ってくる人とのコミュニケーション。
外交辞令。
お世辞におべっか。
売り込み。
自慢話。
パワーゲーム。
腹の探り合い。
裏面交流。
嘘。
などなどなど……。
私は、敏感に感じ取ってしまう。
だから、ある意味、面倒くさいのである。
なんで、そんな会話に合わせなくてはならないのか?
すみませんが、「マンション買いませんか?」とか、「先物やりませんか?」とか、「そろそろ保険の切り替えで」なんでお電話は、天地が裂けてもご遠慮願いたい。
何とか賞を取りましたなんて、売る気満々で書店に並べられたベストセラー本の、つまらない文章なんて、読みたくない。
どこをひねっても同じような一発芸人さんが目白押しの、最近のテレビのバラエティ番組の、同じようなネタにはうんざりしている。
シェークスピアにボルヘス、マザーグースにシラーなどの、練りに練られた文章に美しさを感じる。
ただ、感情を吐き出されたような文章は、ごめんなさいをいいたい。
一挙手一投足に、ほんのわずかな表情の変化で、深い感情を表現する名作映画やドラマの数々。
それに比べて、シナリオも完成されていないのに、配役の役者が先に決まって撮り始められたドラマ。
すべての音符に意味があるモーツアルトやショパンやベートーベン。
それに比べて、先に、リズムとパーカッションから作曲される不思議な現代音楽達。
さて、ところが、私は歯科医師である。
目の前に患者さんが居る。
「痛い」とか「腫れた」とか「咬めない」とか、悩みを抱えた方々である。
その方々とコミュニケーションを取らなくてはならない。
私は、はたと困った。
この患者さんに、「あなたは、癌です」と、どのように告げたらいいのだろう。
そこが、「でんたるこみゅにけーしょん」の出発点だった。
ということで、コミュニケーションにまつわる思った事を、ぼちぼち、書いていきたいと思う。