山田隆文の歯医者さん日記

 さて、人生は選択の結果と書いてきました。
 そして、人生の主人公はもちろん、あなたです。
 自由です。
 ですから、選択をしないという選択もあるのですね。
 このお盆休みには、東京ビックサイトでコミックマーケットが開催されて、もの凄い数の若者が集まったそうです。
 萌え市場は2900億円にもなるとか!
 (お友達にも、同人誌を描いている人もいれば、コスプレイヤーさんも、カメ子さんもいますが……)
 最近では、パラサイト症候群であるとか、ピーターパン症候群であるとか、ニートなどが話題になっています。
 成人しても、仕事もしない、独立もしない。
 大人になりたくない。
 いい大人が、目がきらきら輝く女の子のフィギュアを見て「萌え~~~!」とか言っています。
 人との対話もしません。
 こんなパソコンのネットワークの中のBLOGやチャットや掲示板やツイッターの中だけです。
 生身の人間を相手にすれば、嫌な感情を感じる時もあるし、殴っても殴られても痛いです。
 心だけではなくて、体の痛みだって感じたくありません。
 だって、面と向かって話していないので、嫌な<感情>を感じないくてもいいんですから。
 興味が無くなれば、嫌な感じがしたら、退室して、スイッチを切ればいいんです。
 多くの人が定職にも就かずに、フリーターとして働いています。
 (ディズニーランドのキャストの90%以上はアルバイトなんですが……)
 これも、ひとつの選択には違いありません。
 まさに、選択権を放棄しました、と言う選択なんですね。

 ある意味、一番、楽な生き方かもしれません。

 でも、それで、本当にいいのでしょうか?
山田隆文の歯医者さん日記

 <感じない>という選択です。
 これも、もちろん、その人の人生ですから、自由です。
 やはり、人生のどこかで、何かがあったんです。
 嫌な<感情>に触れた。
 もう、それを感じたくないと思ったんですね。
 普通のことです。
 誰かの敷いたレールの上を、そのまま走っていくのは嫌だと感じたんですね。
 それも、当たり前のことです。
 嫌なら、窓を閉ざしてしまえばいいんです。
 今は、便利な時代になりました。
 窓を閉ざしていても、ネットワークで外と繋がれます。
 アニメの主人公やフィギュアとお話ししていても、自分が傷つくことはありません。
 これも、また、人生です。
 自由です。
 強制はできません。

 でも、ひとつだけ質問です。
 「一生、やるの?」

 前に、訪問診療をしていると書いたことがある思います。
 最高齢は106歳!
 すごく、元気で、みんなに愛されているおばあちゃんです。
 でも、若いのに、寝たきりの方もいます。
 鼻に流動食を食べるための管が入ります。
 自分で、おしっこをしたいことも告げられないので、おしっこの管も入ります。
 時々、点滴やら、酸素吸入やら、いろいろな管が取り付けられます。
 昔、スパゲティ症候群という名前も付けられました。
 そして、ただ、無気力に、体位変換をして貰った方向にある壁や天井を見つめています。
 すべて、人任せになってしまいました。
 決まった時間に起こされ、決まった時間に食事を流し込まれ、嫌だというのに、無理矢理でも歯を磨かれる。
 <選択>をすることをら放棄させられてしまいました……。
山田隆文の歯医者さん日記

 昔は、箱入り娘と言いました。
 大事に大事に育てたのです。
 さて、こういった問題には、育て方、育てられ方も背景にあるのですね。
 確かに、赤ちゃんの時には、非常にかわいがりました。
 目に入れても痛くないですね。
 でも、その後です。
 「◎×しなさい」
 「△□しちゃ駄目よ」
 「いつも、言うことを聞いてイイコね!」
 なんて、育て方、育てられ方をしちゃったんじゃありませんか?
 よく、病院でも見られる光景です。
 子供に「どこが痛いの」と症状を訊きますと、子供より先に、保護者の方がぺらぺらとまくしたてます。
 子供は、言いたいことがきっとあるのに違いないのに、言いたくても言えません。
 そんなときには、レッドカードを出して、保護者を待合室に退場命令です。
 そんな風に育つと、どうなるでしょうか?
 だって、生まれてからず~~~~~~~~~~っと、選択をしなくても生きて来れたんです。
 大学に入ります。
 社会人になろうとします。
 さあ、その時になって、「自分で選びなさい」なんて、突然、言われたって、できるわけ無いじゃないですか!
 だって、選択の仕方を教えてこなかったんですから。
 <感情>の正しい使い方を教えてこなかったんですから。
 嫌な<感情>からは、逃げるが勝ちですね。
 と、自分を傷つけないところだけに、小さな窓を開けばいいんです。
 (最近では、ウインドウズなんて窓がはやっているそうですね(笑)。
  もっとも、アップルの禁断のリンゴもなぜかかじられていますが(笑)。)
 野生動物だって、保護した後には、自分で餌を取れるようにして、自然に帰してあげます。
 人間だって、同じじゃないですか?
 同僚の教官にも、ついつい、学生に手取り足取り指示をしてしまう先生が居ます。
 確かに、楽なんですけどね……
 本当の教育かどうかは……