山田隆文の歯医者さん日記

 感情は、流れるものです。
 感情は、うつろうものです。

 感情とのつきあい方の次のステップです。
 「ただ、感じて下さい」

 逆らってはいけません。
 恐れも怒りも嫉妬も悲しみも喜びも、ただ、わき上がるままに感じて下さい。

 噴水の水も、同じ形をしていますが、同じ水が流れているのではありません。
 ちょっと前とは、さっきとは、そして、次の瞬間にも、違った水がこんこんと流れていきます。
 これを止めたら大変ですね。

 だから、ただ、感じればいいんです。
 怒りを感じた時、悲しい時、泣くとすっきりすると言うコメントをいただきました。
 正しい対処法ですね。

 簡単ですね?
 えっ、簡単じゃないって?
 どうしてなんでしょう?
 日本人は、どうも、感情表現が苦手であると何度も書きました。
 人前で、あからさまに感情を表現するのは、良くないことだという間違った週間が受け継がれてきたからです。
 悔しい時、怒っている時、昔の青春映画のように、海岸を走りながら真っ赤な夕日に向かって「ばかやろ~!」と、素直に叫べないんですね。
山田隆文の歯医者さん日記

 流れない水は、よどみます。
 よどんだ水は、汚くなります。
 枯れ葉やゴミなどがひっかかってしまいます。
 日本一の黒部ダムです。
 ホワイトアウトのロケにも使われましたし、黒部の太陽の主役ですね。
 静かで、きれいな水面です。
 でも、これらのダムもいろいろな問題があります。
 大雨の後には、上流からな流れ込んだ流木などが湖面を埋め尽くします。
 ダムの底に流れ込んだ泥がたまって、浅くなってきて、ダムとしての機能が悪くなってきました。
 放っておけば、いつかは完全に埋まってしまいます。

 さて、感情も同じです。
 溜め込んで、よどんだ感情は、どんどん積み重なっていきます。
 でも、私たちは、いろいろな感情を感じ続けています。
 さらに、どんどん、積み重なります。
 さて、一番、底の方にある感情はどうなってしまったのでしょうか?
 素直に感じて、流していないんだから、やっぱりそこにあります。
 腐ってるかもしれません。
 化石のようになっているかもしれません。
 でも、素直に、感じるまで、ずっとそこにあるんです。

 さあ、ある日、似たような嫌な経験や感情が起こりました。
 それまで、いい人を取り繕ってきた、あなたの静かな感情の水面が波立ってきます。
 底の方にある泥が舞い上がってきました。
 あとは、ご想像の通りです。
 私たちが、ある特定の出来事に、ある特定の過剰反応をしてしまう原因がそこにあります。
 彼とうまく行きかけたのに、最後の最後にぶちこわしてしまう変なプログラムです。
 トラウマとか、アダルトチルドレンなんて呼び名もありますね。
山田隆文の歯医者さん日記

 私たちは、知らない間に、壁を作り出しています。
 カウンセリングの世界ではブロッキングと呼んでいます。
 面白いことに、この壁の性質にも、いろいろな個人差があります。
 自分の、弱点を他人に見られないための壁。
 自分を強く見せるために、外側にいろいろな色を塗ったり、絵を描いた壁もあります。
 キツネさんの壁には、トラが描いてあるかもしれません。
 職業が作り出す壁もあります。
 ユングはペルソナなどと呼んでいますね。

 壁には、透過性があります。
 自分をよく見せる自分の感情だけは、うまく通すことができます。
 自分が傷つかない他人の感情だけは、通り抜けて感じることができます。
 でも、自分に都合の悪い感情は通れません。
 バカの壁というのは、このことなんですね。

 さあ、あなたは、自分の壁に気が付いてるでしょうか?
 何も、それを全部取り除いて、無防備になりなさいとは言っていません。
 敵意や悪意のある外部からの感情からは守らなくてはならないからですね。
 すべてを、握りしめて、溜め込んでいる必要はないんですよと言うことです。

 次のステップです。
 「壁に気が付きましたか?」

 まずは、気が付くことが、第一歩です。
山田隆文の歯医者さん日記

 まずは、あなたが毎日感じている感情を、素直に感じてみましょう。
 どんな感情を感じているのでしょうか?
 感動するシチュエーションやドラマや本に出逢った時、素直に、涙を流しましょう。
 泣くと言うことは、感情のカタルシスに繋がります。
 カタルシスは、感情移入をすることです。
 感じることで、感情のダムの底の無意識の層に抑圧されている心のしこりを、気が付き、外部に表出させることですっきりさせる効果があるのですね。
 それだけで、かなりのものを手放すことができるんです。

 この滝は、北アルプスにある称名の滝と言います。
 滝の流れの音がお経を唱えて居るように聞こえるからだそうです。
 これまでの解説で、私たちの心のダムからも、少しずつ、よどんだ水が流れ始めたでしょうか?
 仏教では、人間には108の煩悩があるそうです(36000という説もあります……)。
 だから、除夜の鐘は108回です。
 ちょうど、高校野球のシーズンですが、昔、巨人の星では星一徹が、野球のボールの縫い目の数が108なんて解説をしていました(本当かどうかは知りませんが……)。

 煩悩とは、執着心です。
 執着は、非常によいことです。
 後で解説する、情熱というポジティブな感情に繋がります。
 数年前に、捨てる技術という本がベストセラーになりました。
 最近は、断捨離ですね。
 部屋に溜まったがらくただけではなく、心にも捨てる技術が必要です。
 すべてを手放せと言っているのではありません。
 まず、捨ててもいいと思っているものから、許可を与えて下さい。

 次のステップです。
 「許可を与える」です。
 素直に感情を感じる、表現する、捨てる許可を与えて下さい。