一応、<怒り>の原因とその行動パターンで四っつのパターンに分類しました。
でも、実は、私たちの心の中はそう簡単ではありません。
実際には、この四っつのパターンのすべてが、<怒り>に翻弄されるというシチュエーションに陥ったときに、私たちの頭の中をぐるぐると駆け巡っているのです。
感情というのものは、ず~~~~~っと、同じ感情が持続しているのではありません。
分単位、秒単位でめぐるましく変化をします。
そして、最終的にはその中で一番優位に立った行動パターンを取るのですが、他の残ったパターンが逡巡(しゅんじゅん)して足を引っ張りながら、という非常にややこしい条件付きなのです。
<恐れ>は逃げてしまえば、とりあえずは回避できます。
でも、<怒り>は根が深く、ひつこく、暗黒面のエネルギーに満ちています。
確かに、これまで説明してきたように、<怒り>というのは、何かをやりたいと言うポジティブなエネルギーの流れを妨げ、物事がうまく行かない方に導いてしまうようなネガティブな障害物です。
が、本当の所は、もう少し複雑なのです。
<怒り>の四っつのパターンは、その障害物が明確であるときにうまく分類できます。
ところが、その障害物は明確でないときの方が多いというのが現実です。
<怒り>を感じた瞬間は明確だったのに、時間と共に記憶の深いところ、時には、潜在意識の一番深いところで金庫に入れてしまっている場合もあります。
<怒り>の対象が、政治や待遇や境遇などもっと抽象的な場合にはもっと複雑になります。
現実的には、障害となる原因は一つであるということは少ないのですね。
具体的、抽象的な原因がいくつにも複雑に絡み合って、私たちの心はできあがっているのです。
その複雑な例の具体例です。
犬も喰わない夫婦喧嘩です。
ローズ家の戦争という映画を紹介しましたね。
まさに、<怒り>のぶつけ合いです。
さて、たいていの場合、勝のはどちらでしょうか?
短期戦では男性の方が優位に立ちますが、長期戦になると、たいていの場合には女性の方が勝ちます。
男性の<怒り>の対象は、その瞬間、感じたものに対してだけなのですが、女性の<怒り>の対象は、些細なことに始まって、徐々に過去に遡っていきます。
ある人が、こんな例えをしました。
男性の喧嘩はライフル銃で、ピンポイントに狙撃をします。
一方、女性の喧嘩は散弾銃で、自分が不利になると、相手の弱点を全面的に攻撃してきます。
一カ所の傷でしたら手当のしようもあるというものですが、全面攻撃を仕掛けられて挫滅創になった傷は縫うこともできません。
あること無いこと、昔のとうに忘れてしまった心の深いところまで、なんでもかんでも一切合切掘じくり返されて、逃げ場を失った男性は白旗を揚げるのです。
私にも、痛~~~~い、思い出がたくさんあります(笑、それとも泣)。
どちらにしても、前に書いたように、どちらかと言うと心の内面の深い部分に閉じこもりがちな<恐れ>とは違って、<怒り>の感情は<エネルギーの発散>を伴います。
<怒り>の対象が明確である場合には、<怒り>のエネルギーはその対象物に向かって直接発散されます。
エネルギーは発散されたことによって、結果はどうあれ(ここがちょっと問題なのですが)一応の解決を見ます。
<怒り>の対象が明確であるのですが、その対象物に<怒り>をぶつけることが出来ないときにはどうなるのでしょうか?
<感情>はエネルギーを伴います。
物理学のエントロピーの法則ではありませんが、集中されたエネルギーは分散します。
分散されずに、溜め込まれたエネルギーは何らかの物理的な他のエネルギーに転換されます。
自動車のエンジンの中で溜め込まれたガソリンの爆発のエネルギーは、圧力となってはけ口を求め、シリンダーを押し出すことによって、回転力を生み出し、重い車を前に進めるのですね。
<感情>にも同様のエネルギーがあります。
エネルギーはどこかへ行かなくてはなりません。
でも、ガソリンの燃焼による爆発力よりも、遥かに扱いにくいエネルギーです。
しかも、そのエネルギーはスムーズに流れる事は滅多にないのです。
現実的には、<怒り>の対象が明確であるのですが、その対象物に<怒り>をぶつけることが出来ない、と言うことが日常茶飯事の様に起こります。
でも、エネルギーはありますね。
それは、どこへ行くのでしょうか?
私たちは、エネルギーがあるが、それが思う方向に行かないと言う状態を<葛藤>と呼んでいます。
<葛藤>は英語で言うとまさに<trouble>であり、<discord>であり、<conflict>です。
あるいは、エネルギーの流れがどこかで妨げられた状態を<スタックstack>と言います。
車が雪道で<スタック>したなどと使います。
問題は、スタックしたエネルギーがどの方向へ進むかなんですね。
ダース・ベーダーのようになってしまっては困ります。