山田隆文の歯医者さん日記

 昨日は、東京でも雷が鳴って、稲妻が走っていました!
 これは、ちょっと前の雷雨の時に撮った写真です。

 私たちの基本的な最も根元的な<感情>である<恐れ>は、<恐れ>の対象物に対して、退いたり、逃げたり、あるいは、立ち竦んだりするという、どちらかという<積極的な感情>ではなく、<消極的>な<受動的>な<感情>でした。
 <恐れ>を感じたとき、私たちは、エネルギーを奪い取られ、萎えてしまったような感じになります。
 <怒り>も<恐れ>と同じようにネガティブな<感情>なのですが、エネルギーの使い方が違います。
 <怒り>のエネルギーは何かに向かって発散されるのです。
 ですから、<怒り>という感情は、<恐れ>に比べてより<積極的>な<感情>と言えるでしょう。
 <怒り>には、具体的あるいは抽象的な対象物がある場合もありますし、無い場合もあります。
 それについては、また、別の項で詳しく述べます。
 また、<恐れ>は主観的な<感情>でした。
 しかし、<怒り>は<主観的>な部分と<相対的>な部分を合わせ持った不可思議な<感情>なのです。

 それでは、<怒り>と言う感情について分析をしてみましょう。

 一般的な<怒り>は英語で表現すると<anger>です。
 <恐れ>と同じように、やはり<怒り>に対する日本語表現はそれ程多くはありません。
 <立腹><激怒><憤り><激興>くらいでしょうか。
 でも、英語の辞書を紐解くと、実に様々な表現が飛び出してきます。

 同じ<怒る>という感情ですが、民族性の違いというのは非常に大きいのです。
 日本人は、駅や商店の窓口で静かに話をしています。
 欧米人は、理解できないことがあると、明らかにしないと気が済みません。
 時には、口角泡を飛ばして議論している場面に出くわします。

 例えば、こんな話を聞いたことがあります。
 ハワイに観光旅行に行きました。
 日本人は、通されたホテルの部屋で、ちょっとばかり景色が悪くても何も文句を言いません。
 ところが、欧米人は、せっかくハワイまで来たのに窓から海が見えないとか、部屋の色が良くないとか、配置が使い勝手が悪いとか、部屋の壁紙の色がちょっと気にくわないとか、実に様々なクレームを付けて、より良い条件の部屋を欲しいという自己表現をするのだそうです。
 単一民族国家である日本人は、周囲に合わせる為には、少々の<我慢>をする事が美徳と考えられているのでしょうか?
 特に、アメリカ合衆国などはほんの二百年前に、種々雑多な民族が集まって出来上がった国家ですから、<自己主張>をするということが当たり前なのです。
 勿論、どちらの生き方にも利点もあれば弊害もあることは確かだと思います。
 と言っても、私自身は比較人類学や文化論を専攻しているわけではありませんので、そう言った議論は専門家にお任せすることにします。

 ですが、<感情>という視点から見たとき、この、日本人の<我慢>という部分が大きな問題点であることは確かです。
 私自身、歯科医師であることは前に述べました。
 時には、外国から来られた留学生などの治療をすることもあります。
 日本人は、こちらから「どうしましたか?」と訊くまで、だいだい何も言いません。
 その日に出来上がった入れ歯がちょっとくらい合わなくて痛くても、こちらが逆に恐縮するくらいに、「我慢します、そのうち慣れるでしょう」なんて仰います。
 ところが欧米人は違います。
 こちらが話し掛ける前から「鏡はないか」と要求し、「やれあっちが痛いの」「もっと歯の色は白い方がいいの」と、次々と自分の要求をまくしたてます。
 民族性の違いはあれ、非常に面白いですね。

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 <anger>は<怒り>であり、<怒らせる>事であり<怒る>ことです。
 ランダムハウス英語辞典には(……に対する)(一時的な激しい)<怒り><立腹><激怒>とあります。

 日本語では、<怒り>は<怒り>ですが、当然<怒り>にだってグレードがあります。
 電車の中で足を踏まれたくらいのちょっとした<怒り>から、犬も喰わない夫婦喧嘩の<怒り>もあれば、組織・権力に対する例えようのない<怒り>もありますね。
 英語で<anger>と言うのは<怒り>を現す最も意味の広い一般的な言葉です。
 語源はスカンジナビア半島の古ノルド語の<anger>で<悲哀>という意味で、ドイツ語の<恐怖>を意味する<angst>、ラテン語の<苦悶>を意味する<angor>と同根だそうです。
 <angor>は医学用語では<激痛><苦痛>を意味します。
 そこから派生した<angina>はアンギナと言って、多くは、ヘルパンギーナ(口峡咽頭炎)と訳されているウイルス性の非常に<辛い>口内炎です。
 辞書には絞扼感を伴う激痛の発作とあります。
 あまりに痛いので、アンギャーと悲鳴を上げる感じですね。
 さらに語源を辿ると、ラテン語の扁桃膿瘍を意味する<angina>から<ancina>、さらには、ギリシャ語の<anchone>となり、これは、<絞殺><吊すこと>という超過激な意味になります。
 ラテン語でも<ang>は<喉を絞める>と言う意味です。
 <angry>は<怒った><怒りの><怒りからの>と言う意味になります。
 確かに、<怒り>を感じて話している人の声は、緊張した喉が震えていますし、ヒステリーを起こした人の金切り声は、まさに、首を絞められたような感じですね。

 口腔疾患には、ヘルパンギーナというのがあります。
 口峡咽頭炎と訳されます。
 ヘルプはヘルペスウイルス。
 このアンギーナはアンガーから来ています。
 つまり、口内炎で金切り声を上げるほど痛い(笑)!

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 さて、それでは、<怒り>とはいったい何なのでしょうか?
 <怒り>とは自分自身のエネルギーが、何かに妨げられて思った方向に流れて行かないときに発生するネガティブな<感情>です。
 そして<怒り>は非常に強力なエネルギーを持っています。
 <怒り>はエネルギーの方向性が妨げられたことが引き金ですので、その障害となる原因が存在します。
 そして、<怒り>の矛先となる対象物が存在します。
 <怒り>の原因には二種類あります。
 同様に<怒り>の対象にも二種類があります。
 同じ<怒り>でも、<感情>的には違いがありますので、それぞれについて考えてみましょう。
 障害の原因と<怒り>の対象からは四っつのパターンが生まれてきます。

 第一のパターン
  障害となる原因が自分自身で、自分自身に<怒り>が向けられたとき
 第二のパターン
  障害となる原因が自分自身で、他者に対して<怒り>が向けられたとき
 第三のパターン
  障害となる原因が自分以外で、自分自身に<怒り>が向けられたとき
 第四のパターン
  障害となる原因が自分以外で、他者に対して<怒り>が向けられたとき