山田隆文の歯医者さん日記

 さて、その前にです。
 まだ、後、二つばかり、重たい感情が残っているんです。
 それは、<怒り>と<嫉妬>です。
 アナキン・スカイウォーカーも、母親を失ったことに対する<恐れ>が<不安>を呼び、パドメに対する<執着心>がオビ・ワン・ケノービに対する<嫉妬>となり、<怒り>として、爆発します。
 パルパティーンに溶岩から助けられて、人工呼吸器を付け、「ロード・ベーダー・聞こえるか」と訊かれた時、パドメの死を知って最後の怒りが、彼を、完全なダース・ベーダーに変えてしまったのですね。
 <恐れ>と<怒り>と<嫉妬>はネガティブな感情の三大巨頭です。
 もつれています。
 解きほぐすことは、非常に困難です。
 でも、とりあえず、やってみたいと思います。
 そして、これは、ちょっと予告です。
 いつかは、ダース・ベーダーがルーク・スカイウォーカーと戦い、自分と直面せざるを得なかったように、私たちも、この、自分のネガティブな面に直面する必要が出てきます。
 でも、前に書いたように、闇雲に飛び込む必要はありません。
 帝国の逆襲で、ヨーダの訓練の途中でルークだって、自分のダークサイドと直面して、負けてしまいました。
 だから、感情の地図を書いています。
 まず、地図の用語から始めて居るんです。
 もうちょっと、長い道のりになりますが、感情というものを理解してから、ゆっくりと、自分の内面と対話をして下さい。
 その時、あなたは、こう感じるに違いありません。
 「なあんだ、そんなことだったんだ!」

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 <恐れ>に続く2番目の基本的な<感情>は<怒り>です。
 赤ちゃんだって、思い通りにならないと、むくれます。
 犬だって吠えます。
 原始の時代、がんばっても、どうしても獲物が捕れないとか、せっかく捕った獲物を狼に横取りされれば<怒り>ますね。
 <怒り>とは、私たちがやろうとしていることを、何らかの原因によって妨げられたときに起こるのです。
 <怒り>はちょっと複雑な<感情>です。
 <恐れ>はどちらかというと、<逃げる><守る>など、消極的なイメージがつきまといます。
 同時に、溜め込むと言うよりは、素直に感じています。
 しかし、<怒り>は非常に大きなエネルギーを持っています。
 でも、<怒り>はいつでも発散できるとは限りません。
 そこが問題なんです。
 で、<怒り>が溜まりすぎると、私たちはどうなるのでしょう。
 エネルギー保存の法則がありますので、溜まったエネルギーはどこかで発散されなくてはなりません。
 もし、一度に、吹き出してしまったとしたら。
 <切れる>というのが一番良い表現でしょう。
 堪忍袋の尾が切れるというやつです。
 そして、別の形になって、私たちの中に溜まっていくのです。

 <切れる>というのは、溜まりに溜まった怒りのエネルギーが、一度に吹き出してしまうことです。
 コントロールは効きません。
 ところ構わず、相手構わず、吹き出してしまいます。
 理性なんて言葉は、どこかへ吹っ飛んでしまいます。

 相手は、<怒り>を感じている本人ではなく、誰でもいい時があります。
 よく、電車の中で切れた人なんての見かけますね。
 これは、とばっちりにあった人の方がたまったものではありません。

 でも、これは、医療従事者として、あるいは、教育者として、一般の人であれば、親として考えなくてはなりません。

 <怒る>は、自分が切れています。
 自分がうまくいかないので、怒って居るんです。
 医療従事者にだってよく見られます。
 「あ~あ、なんでこんなになるまでほっといたの!」
 質問なんかした途端にこうなります。
 「黙って、言うことを聞いていればいいんです!」

 <叱る>は、相手のことを考えて、コントロールされています。
 相手の成長を促しています。
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 さて、役行者が山岳宗教の中心としてあがめている蔵王大権現です。
 憤怒の形相をしています。
 これは、自分が切れているのではないのですね。
 「それくらいの気持ちで修行せい!」と言っているのです。
 さあ、<怒り>のエネルギーのコントロール法も身につけていきましょう。

 これまでの心理学の中で、感情や情動に関する研究の多くは、感情とそれに伴う行動に関しての研究が主流でした。
 感情そのものがとらえにくい以上、それに伴う行動パターンを探ればいいのです。
 <恐れ>に対する<逃げる><身構える>などの行動。
 それに、ポリグラフ(よく、嘘発見器と呼ばれる)などによる、生理的な測定が入ります。
 と、こう結論づけられます。
 「人は、恐怖を感じると、心拍数が増加し、顔が青ざめる」
 では、逆は言えるでしょうか?
 「青ざめて、心臓がばくばくしているから、恐怖を感じて居るんだ」
 ありえませんね?
 心理学では、個々の細かい感情をつかみ取ることができません。
 だって、抽象的であまりに直感的だからです。
 学問にするためには、これを、具体的・客観的にしなくてはなりませんので、統計処理をして数値化します。
 と、こう言えるわけです。
 「ライオンを見ると、6割りの人は恐怖を感じ、4割の人はかわいいと感じる。」
 で、何がわかったのでしょう?
  爬虫類のヘビは、嫌われるものの代表格ですが、好きだという人だっているんですね。
 <怒り>に対しては、<切れる><爆発する>などの行動が起こり、生理学的には、心拍数が増加して、顔が紅潮する人が多い。
 だから?
 <恐れ>や<怒り>は理解したのでしょうか?
 それに伴う、影のような部分をとらえただけなんですね。

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 でも、感情が爆発してしまったら、どうなるでしょうか?
 溜まりに溜まった、嫌な感情が、いっぱいになりました。
 溢れんばかりですが、表面張力で、ぎりぎりがんばっています。
 最後の一滴は、なんでもいいんです。
 電車のなかで足を踏まれた。
 旦那さんや奥さんに、つまらないことを言われた。
 と、これまで、溜まりに溜まったすべての感情が吹き出してしまいます。
山田隆文の歯医者さん日記

 誰が止めるんでしょう?
 火だったら、消化器で消せばいいんですけど……
 さて、感情を吹き出してしまった方は、それで、けっこう、すっきりしてしまいます。
 問題は、とばっちりを受けてしまった方です。
 散弾銃のように、とんでもない昔まで遡って、罵詈雑言を浴びせかけられました。
 机の上の小物まで飛んできます。
 (金属バットなどでは困りますが……)
 感情の爆発を受けてしまった方は、そこからスタートしてしまいます。
 と、逆に、感情の爆発が起こります。
 ブッシュ大統領とアルカイダみたいもんです。
 やられたら、やり返せ!

 さあ、また、参考文献があります。
 ローズ家の戦争という映画です。
$山田隆文の歯医者さん日記

 http://www.amazon.co.jp/ローズ家の戦争-初回限定生産-DVD-ダニー・デビート/dp/B000A0D92G
 ローズ家の夫婦喧嘩がどんな結末を迎えたか、ぜひ、ごらんになって下さい。
 喧嘩って、始めるのは簡単なんですが、どこでやめるかは、非常に難しいんですね……