山田隆文の歯医者さん日記

 <フィアーfear>
 <fear>というのは、英語の中でも、<恐れ><恐怖>を現す最も一般的な言葉として使われています。

その意味は、
 1)<恐れ><恐怖><恐怖心>
 2)<不安><心配><懸念><気遣い><憂慮>
 3)(特に)神に対する<畏怖><懼れ>などがあります。

 1)の<恐れ><恐怖>が最も一般的な意味でしょうか。
 同時に、高所<恐怖>症(acrophobia)のように、ある特定のものに対する<恐怖>も表します。
 高所恐怖症の人が、こんな山の上(これは、映画にもなった<劔岳点の記>の舞台、劔岳山頂から見た八峰です)に立ったら、どうなるでしょう?
 同僚で、同じ3階に研究室があるのですが、窓から外を見れないと言う人もいます。
 同僚で、マンションのベランダには出た事がないという人もいます。
 リフトなんて絶対に無理だと、スキーに誘っても来ない同僚も居ます。
 また、<心配>の種という意味も表しています。
 <fear>の語源は<fere>、ドイツ語の<Gefahe>で、その意味はまさに<奇襲><危険>を意味しました。
 <恐れ>というのは、突然、現れるのですね。

 2)の<不安><心配><懸念>は他の英語表現では<anxiety>というのがありますが、1)の<恐れ><恐怖>よりは、<恐れ>のグレードが低くなるようです。
 <anxiety>反対語は<hope><希望>になります。

 面白いですね。
 実は、こういった部分に<感情>を解き明かし、私たちが<感情>に振り回されずに、どううまく付き合っていくかという秘密が隠されているのです。

 3)の(特に)神に対する<懼れ>あるいは<畏れ>というのはどんな意味でしょう。
 こういった例がわかりやすいかも知れません。
 キリスト教やユダヤ教・イスラム教などの世界では神は<敬うworshipful>対象であり、かつ<懼れる>対象ですね。
 日本の八百万の神様が、私たち一般の人々に対して<怒った>という話(神様同士の戦争はありますが)は、古事記や日本書紀などをひっくり返してみても殆どありませんね。
 でも、聖書などを紐解くと、人間は神の<怒り>に触れて、エデンの園を追い出されたり、バベルの塔やソドムとゴモラのようにすべてを破壊されたり、ついにはノアの大洪水で地上のすべてを押し流されてしまいます。
 この、<懼れ>というのは、別の表現では<awe>とも書かれますが、日本語で言うと<敬虔の念>と言う感じになります。
 私たちが使える表現としては、「エベレスト(チョモランマ)を見た人がその雄大さに<畏敬の念>を抱いた」というような感じでしょうか。

山田隆文の歯医者さん日記

 それでは、同じ<恐れ>ですが、その他の英語表現の中でグレードの高い方からご紹介します。

 <パニック>
 <panic>というのは、まさに、気違いじみたような<恐怖>です。
 そこには理由も根拠もありません。
 稲妻と共に出現したトライぽっどの様に、突然やってきます。
 そして、急激に広がります。
 トム・クルーズの「宇宙戦争」の群衆シーンを思い出していただければ、簡単です。
 <スカイラインー征服->の宇宙人にさらわれる人々。
 <狼狽>という感じです。
 ゴジラなどの怪獣映画や、インディペンデンスデイ(ID4)などのパニック映画でお馴染みですね。
 まさに巨大な怪獣や、宇宙船の侵攻で逃げ回る群衆の姿です。
 <感情>的に、そして、<自制心>を失わせて、駆り立てるような<恐怖>です。
 語源を探ると、非常に面白いものにぶつかります。
 フランス語では<panique>で、ギリシャ語では<panikos>となります。
 語源の<パンpan>はギリシャ神話に出てきます。
 牧神としてあがめられています。
 ヘルメスの子供で、上半身は人間で、山羊の足と胴体、耳と角を持ちます。
 ときどき、ディズニーアニメなんかでも見かけます。
 牧場で羊と共に角笛を吹いている少年のイメージですね。
 また、さらに遡ると、ラテン語の<pan>は<pauson>の短縮形で、なんと、サンスクリット語の<Pusan>というベーダ神にまで辿り着きます。
 ダース・ベーダーなんてのが確か……
 <panic>という<恐慌>状態はこの牧神<パンpan>が引き起こすものとされたのです。
 狼に襲われた牧場の逃げ惑う羊の群を思い起こして頂ければイメージが湧くのではないでしょうか。

 <ホラー>
 <horror>というのは身の毛のよだつような<嫌悪感>を伴うぞっとする<恐怖>です。
 <嫌悪><不快>の感じがあります。
 <戦慄>です。
 ホラー映画という言葉は、吸血鬼ドラキュラやミイラ男など、妖怪や幽霊が登場する映画などで有名ですね。
 「ヴァンヘルシング」などで総動員されました。
 もうすぐ公開の、「モールス」なんてのもちょっと見てみたいですね。
 語源はラテン語の<horrere>で<恐怖>で毛が逆立つようなという意味です。
 ネコがイヌなどに驚いたときには、全身の毛が逆立っていませんか?
 私たち人間も、ぞっとしたときにはさぶ疣が立つとか、鳥肌が立つという表現を使いますね。

 <テラー>
 <terror>というのは、非常に強い、ぞっとするような<恐怖>です。
 その<恐怖>の対象は実在しているものでもいいです。
 9・11テロを覚えている方も多いでしょう。
 あるいは想像上の<危険>など、ある程度直接的な<恐怖>のようです。
 あるいは、その<恐怖>の対象も表現します。
 <テロリズムterrorism><恐怖政治>というのは、ここから派生しています。
 そのために、アフガニスタンやイラクで、大きな戦争が起こってしまいました。
 語源的にはラテン語の<terrere>で<驚かす>という意味です。

 まだまだ、あるようですよ。