山田隆文の歯医者さん日記

 「感情は分類できないんではないか」「感情をうまく出せない」、と言うコメントをいただきました。

 確かに、日本人は、感情表現が非常に苦手です。
 <恐れ>に関する現代の日本の言葉を集めてみましたが、非常に貧弱です。
 日本語では、<恐れ>は<恐れ>であり、そのニュアンスの中には<恐れ>の程度まではその言葉の中にまでは含まれていません。
 せいぜい<凄い>とか、<ちょっと>とか、<やばい>とかいう形容詞で<恐れ>の大きさを表現するくらいです。
 あるいは、もちろん、言葉の意味はその字の表す事ばかりではなくて、話の前後関係や、微妙な言い回しや、アクセントなどが関連してきますが、まずは、純粋に言葉の意味から行きたいと思います。

 <感情>を余りおおらかに表現しないと言うのは、ある意味では私たち日本人の民族的な特性であるのかもしれません。
 国会答弁で、涙を見せてしまった国会議員も居ますが、人前で、感情をあらわにすると言うのは、あまり、美徳とはされていません。
 現代人には、人間関係を円滑にするためには、人前で<感情>を露にすると言うことはタブーであると言う、奇妙な錯覚があります。
(最近のスポーツ選手などは、徐々に感情表現をするようになってきましたが)
 奈良・平安の昔から、季節の移り変わりや色など、自然に対しては非常に豊富は語彙を持っている日本人ですが、こと、<感情>に対しては、言葉によるその表現方法があまりにも少ないのです。
 しかし、一方で、<感情>用語は使わないのですが、短歌や俳句の中では、その微妙にして精妙な<感情>を、ウイットさえ交えながら見事に書き表しています。
 古典文学の中には、はっとする感情を、ああ、そんな表現方法があるのだと、感心させられる描き方をしています。

 一方、<感情>を非常におおらかに表現する欧米では、数多くの<感情>用語があります。
 だからといって、欧米人が日本人のようにストレスを感じていないわけではありません。
 彼らは彼らなりに、自己主張をしなければ置いていかれてしまうという厳しい世界の中でストレスを感じているのです。
 ですからアメリカでは、代替医療やカウンセリングが花盛りで、一般医療費を超える額が毎年消費されているのです。

山田隆文の歯医者さん日記

 話を元に戻します。
 同じ<恐れ>をという意味の中にも、ニュアンス的には微妙な<感情>が含まれているのです。
 英語では、以下のような種々の表現があります。
 広辞苑や英和中辞典・ランダムハウス英和辞典から拾った<恐れ>用語を揚げてみます。
 ランダムハウス英和辞典で<恐れ>と引いただけで、
<alarm>
<august>
<angst>
<apprehension>
<awe>
<afraid>
<affright>
<ascared>
<alarmism>
<apprehend>
<apprehensive>
<awe-struck>
<awesome>
<bold>
<bull>
<charlie>
<cow>
<dread>
<dreadful>
<daring>
<edgecity>
<funkl>
<fear>
<fray>
<feared>
<fearful>
<gastness>
<hand>
<holy>
<intrepid>
<impressive>
<knock>
<misdooubt>
<pavid>
<recoil>
<stand>
<superstition>
<stricken>
<sweat>
<tremnble>
<threat>
<threaten>
<terrorize>
<terrorise>
<terrify>
<terrifying>
<timid>
<timorous>
<undauntable>
<quail>
<walk>……
と、ちょっと調べただけでも、ざっと数十個の単語が現れました。
 私も今までお目にかかったこともないような表現もありますが、すべてを解説するのは言語学者にお任せしておきます。
 代表的な<感情>表現について比較検討してみましょう。
 それぞれの<恐れ>という意味が、みんな、微妙に違うニュアンスなんです。
 これは、日本語での<恐れ>を理解するのにも非常に役立ちました。