歯科医師としてもう一つできることがありますので、普段講義などで使っているスライドを元に、放射線について解説をします。
$山田隆文の歯医者さん日記

 まず、放射能と放射線。
 ごっちゃになっていますので、整理します。
 放射能は、放射性物質(ウランなど)が、放射線を出す性質・能力をいいます。
 そこから出たものを放射線といいます。
 放射線にも、たくさん種類があります。
 電磁波と呼ばれるガンマ線(γ線)。
 歯科治療で使うレントゲン線(X線)もそうです。
 粒子線には、アルファ線(α線)・ベータ線(β線)など。
 β線(実際は電子です)は癌などの治療に使うこともありますし、重粒子線などもあります。
 原子力で一番の問題となるのは、中性子線です。
 ただし、今回は、臨界(核分裂が実際に起こっている)ではありませんので、中性子線は出ていません。
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 報道では、色々な単位が使われていますので、もう一度整理をします。
 放射線の単位は、グレイがあります。
 これは、吸収された放射線の量です。
 1グレイは、1ジュール/キログラム。
 ジュールというのは、昔、理科で習ったはずですが……。
 カロリー計算をすると、0.2389カロリーです。
 カロリーは、「1グラムの水の温度を標準大気圧下で1℃上げるのに必要な熱量」ですね。
 放射能の調査結果などでは、このグレイが使われているところもあります。
 (ナノグレイになっています。ナノ=マイクロのさらに1/1000)
 報道で使われているシーベルトです。
 基本的には、グレイと同じですが、放射線の種類によって、エネルギーが違います。
 そこを、換算した吸収量です。
 報道では、ベクレルも使用されました。
 これは、どれくらい放射線を出しているかという単位です。
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 さて、報道では、さらにシーベルトが細かく別れています。
 シーベルト・ミリシーベルト・マイクロシーベルトです。
 ミリは1/1000。
 マイクロは、さらにその1/1000。
 ですから、マイクロシーベルトは、1シベールトの1/1000000ですね。
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 問題となるのは、私たちは、普段でも、放射線を浴びています。
 それは、宇宙線と呼ばれているものです。
 他にも、地球の様々なものが発している放射線を浴びています。
 その量が、2400マイクロシーベルト/年です。
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 では、私たち歯科医師が、治療のために撮るレントゲンがあります。
 歯医者さんで撮る大きなレントゲン。
 パントモレントゲン写真です。
 これが、11マイクロシーベルト/枚。
 小さなデンタルレントゲンでは、6~24マイクロシーベルト/枚。
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 その他の量を見ていきましょう。
 胸部のレントゲンで50マイクロシーベルト/回、胃のレントゲン(透視って角度を変えたりする時間のかかるやつですね)が600マイクロシーベルト/回。
 CTスキャンでは、6000マイクロシーベルト/回(ようやく、6ミリシーベルトです。文献的には20000マイクロシーベルトというものもありました)。
 もちろん、撮影方法や機種などによって違うことを追加しておきます。
 さて、放射線従事者の限度が100000マイクロシーベルト/5年(100ミリシーベルト/5年)です。
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 文部科学省のデーターを見てみました。
 いくつかの計測地点の最大値と最小値から計算した、1ヶ月あたり、1年あたりの被曝量です。
 もし、最高値のところで1年居ても、CTスキャン2回分くらいです。
 最高値を示したのは、数十分からせいぜい時間単位ですので、そこから、浴びた量は計算できると思います。
 急性放射線障害を起こすには、最高値の値で80年以上浴び続けなければなりません。
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 さて、放射線の防御です。
 アルファ線はヘリウムの分子です。
 紙一枚で防御できます。
 ベータ線は電子です。
 私も、大学院の時に実験で使っていました。
 アルミ板数ミリで防御できますし、実験では、1センチくらいのプラスチックの板で十分に防げました。
 中性子線が一番やっかいですが、実は、水とコンクリートで防げてしまいます。
 ですから、原子炉の炉心には水が満たしてありますし、回りをコンクリートの建物で覆っています。
 さて、紙やアルミや水やコンクリートで防げますので、「家の中に待機」というのは、それなりに意味があります。
 やっかいなのは、電磁波です。
 核物質からはガンマ線が出ます。
 ガンマ線の仲間がレントゲンです。
 歯医者さんでは、レントゲン室があります。
 ここは、鉛で覆われていますね。
 だから、上空から海水を投下した自衛隊のヘリは、床面に鉛の板を敷いていました。

 さて、20キロの退去というのは、どんな意味があるのでしょうか?
 放射線は、光や音と同じと考えてください。
 車のヘッドライトは、近いところでは明るいですね。
 でも、遠いところは暗くなります。
 難しく言うと、距離の2乗に反比例します。
 つまり、距離が倍になると、1/4に弱くなります。
 これまでの最高値が、正門のところで8217マイクロシーベルトでした。
 仮に、原子炉から100メートルとします。
 1000メートル(1キロメートル)になれば、82.17マイクロシーベルト。
 10キロメートルになれば、0.8217マイクロシーベルト。
 (風などの拡散は計算していません)
 20キロメートルになれば、0.21マイクロシーベルト。
 ということになるからです。

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