$山田隆文の歯医者さん日記

http://books.rakuten.co.jp/rb/オオカミと生きる新装版-ヴェルナー・フロイント-9784560040782/item/5420387/

 強いものが勝つ。
 動物の世界では当たり前だ。
 残念ながら絶版だが、この本では、オオカミの社会について、詳しく書かれている。
 一番強い群れのリーダーを「アルファオオカミ」という。
 オオカミは、このリーダーを中心にピラミッド構造を作っている。
 他の動物でも、ライオンだって、犬もそうだし、猫だってそうだし、サル山だってボスザルが居る。
 人間も生物学的に動物だというのであれば、パワーゲームは大好きである。
 強いものが支配をする。
 ひとつの、秩序の方向である。
 間違いではない。

 でも、いつまでも強くいられるのか?
 アルファオオカミが年老いてくると、2番目(ベータオオカミ)3番目のオオカミがリーダーの座を争ってボスに挑戦する。
 負ければ、リーダは交替となる。
 これもまた、群れを守るための自然の摂理だ。

 では、リーダーが間違った行動をとったらどうなるのか?
 簡単である。
 群れは全滅する。
 前に紹介したアラン・アーキンの「レミング物語」である。
 日本人という一つの群れが、断崖絶壁から飛び降りられてはかなわない。
 地球人という世界もまた然り。

 では、力の衰えてきたリーダーが、それでも権力座に固執したらどうなるのか?
 年を隠さなくてはならない。
 弱くなった力を、別のもので補わなくてはならない。
 別のものは恐怖である。
 「私に逆らったらどうなると思ってるんだ!」と、恐怖で群れを支配しようとする。
 気づいた群れの面々は、リーダーの元を去るか、自然に摂理に従って反乱が起こる。 

 チュニジアもエジプトも、動物と同じ道をたどったに過ぎない。

 孫子の兵法にあるように、「恐怖」によるコントロール。
 これは、一時的には効果があるように見えるが、長続きはしない。

 日本でも同じ。
 鎌倉幕府も室町幕府も、長続きをしなかった。
 いつの間にか摂政政治になったり、取り巻きが増長したりして、徐々に権力を失っていく。
 でも、徳川幕府は15代も続く。
 そこには、秘密がある。

 田中芳樹さんの書いた「銀河英雄伝説」という長編がある。
 帝国制を布く「銀河帝国」と、共和制を布く「自由惑星同盟」の戦いを描く。
 一見、独裁政治の「銀河帝国」が悪そうに見える。
 しかし、徐々に活力を失うゴールデンバウム王朝に、ラインハルトやキルヒアイスはじめ多くの英雄が生まれ、世代交替が起こっていく。
 一方の「自由惑星同盟」では、政治は腐敗し、共和制は名ばかりのものとなっていく。
 独裁社会は民主化への道をたどり、共和民主国家は独裁への道をたどるという、皮肉的な結末を描いている。

 徳川家康の取った方法は、後継者を育てるということである。
 盤石のサポート体制を作ったと言うことである。
 もちろん、「廃藩」という恐怖もあるが、関ヶ原の戦いなどで貢献した大名には、きちんと褒賞も与えたり、恩赦も与えた。

 さて、リーダーシップの大きな問題点がある。
 リーダーシップを取ったことのないリーダーが生まれたときである。
 会社でも、平社員から、係長へ、課長へ、部長へ、取締役へと昇進をする。
 いざ部下を持ったときに、部下とうまくやっていくことができるのであろうか?

 前に、鳴り物入りでスタートした民主党政権は、民主党人であり、日本人でも地球人でもないと書いた。

 多くの人に失敗は、自分が上司や教師からやられたことを、そのまま部下にやってしまう。
 その時には、自分が部下だったときに「嫌だ」と感じた気持ちなんて忘れてしまう。
 でも、部下になめられたくはない。
 「威厳が必要だ」などと勘違いをする。
 威厳なんてものは、屁の突っ張りで見栄をはるものではなくて、内面からにじみ出してきて、周りの人が認識する客観的なものだ。
 そして、会社帰りの居酒屋で、ぐちの対象になるとんでもない上司が出来上がる。

 歯医者さんは?
 もちろん、マーケティングなんて習っていない。
 経営学も素人である。
 人を教えるとか、まとめるなんて経験も、クラブ活動でもしていない限り、そんなにない。
 それが、開業すると一国一城の主になる。
 威厳を保たなくてはならない。
 あとは、歴史が証明してくれる。
 私のところには、多くの卒業生から「現状」が報告される。
 世の歯科医院の先生方、気をつけあれ。

 さて、方法はいろいろある。
 歯医者さんもいろいろ勉強をしなくてはならない。
・コミュニケーション
・コーチング
・カウンセリング
・アサーティブネス
・ファシリテーション
・メンタリング……

 さて、独裁政治を打ち破ったチュニジアやエジプトも、これから大きなハードルがある。
 次のアルファオオカミに誰がなるのか?

 アフガニスタンやイラクの現状を見ていれば、それも、一目瞭然。

 そうそう。
 前に、孔子と老子の違いを書いた。
 孔子は、仕官がしたくて一生懸命頑張った。
 たくさんの弟子や、取り巻きも作った。
 私には、面倒くさい。
 私は、一匹狼の老子や荘子さんの方が好きだ。
 ありのままの行き方の方が性に合っている(笑)。