山田隆文の歯医者さん日記

http://books.rakuten.co.jp/rb/いつまでも心に残るサービスの実践-ホテル西洋銀座ヘッドバトラーのホスピタリティ・マイ-安達実-9784495574215/item/4273920/

山田隆文の歯医者さん日記

http://books.rakuten.co.jp/rb/サービスで小さな奇跡を起こす方法-伝説ホテルマンだけが知っている!-林田正光-9784478560549/item/4164644/

$山田隆文の歯医者さん日記

http://www.amazon.co.jp/京王プラザホテル「感動サービス」の技術―既存のホスピタリティの概念を打ち破った「伝説の接客バイブル」-近藤-昭一/dp/482720344X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1298025481&sr=8-1

 ここのところ、サービス関係の本を数十冊続けて読んでいる。
 歯科も、医療サービスと言われて久しいが、じゃあ、具体的にどうしていいのかというとなかなか難しい。
 ここは、人の振り見て我が振り直せである。
 異業種にヒントを探す。

 さて、日本のホテルでは、一方的にサービス料を取られてしまう。
 サービスに満足しようが、サービスに不満であってもである。
 欧米では、チップという形で、具体的に行われたサービスに対価を払う。
 だから、わかりやすい。
 でも、サービス如何にかかわらず、最近は、サービスの悪い小さなホテルでもサービス料がある。
 これは、ちょっと、問題かもしれない。

 そもそも、サービスという形の見えない第三次産業に、適正な対価を考えること自体が難しいかもしれないのだが……。

 あるホテルで、こんなエピソードがある。
 外国人が宿泊した。
 でも、ホテルのサービスに満足できなかった。
 だから、サービス料は払わないと言って、払わないで帰った。

 医療も、民法上は契約である。
 「治して下さい」
 「治しましょう」
 「治りました」
 と言う契約の元に、対価として治療費を払う。
 だから、私たち歯科医師は、違法性の阻却の元に、患者の体に不可逆的な治療を行うことができる。

 では、患者さんが治療に満足できなかったらどうなるのだろう?

 患者さんの反応である。
・怒る
・クレームを言う
・黙って来なくなる

 多くの場合には、3っつめのパターンである。
 これが、一番怖いことに、多くの歯医者さんは気づかない。
 いつの間にか、未来院の補綴物の模型が溜まっていく……。
 当然、治療費は貰えない。

 歯医者さんは、患者さんのクレームをいやがる。
 でも、クレームを言ってくれるというのは、いいことである。
 クレームは、言ったら改善の見込みがあるかもしれないから、言うのである。
 それを無視したら、患者さんは二度と来てくれない。

 怒っている患者さん。
 何かに、不満なのである。
 有名なホテルでは、「ノー」と言わないことをモットーにしている。
 でも、歯科治療はどうだろうか?
 私たちは、患者さんにとって、いいことしか言っていないのではないか?
 自分たちが、儲かるような治療法しか伝えていないのではないか?
 患者さんの納得よりも、説得しているのではないか?
 患者さんも、自分で積極的に決めたことであれば怒らない。
 でも、妥協して、説得されたことであれば、うまくいかなければ疑問に思うのは当たり前である。

 なかなか、難しいことである。
 「おまかせします」なんて言う患者さんに限って、トラブルに発展することもある。

 だから、私は、待つ。
 時間をかける。
 すぐに、補綴に走らないこともある。
 患者さんが、「メタボン(セラミックの歯)」でと言っても、まずは、「テック(仮の歯)で様子を見ましょう」と言うこともあるし、「まずは保険で」と言うこともある。
 時には、出来上がったメタボンを、半年でも、1年でも、仮着(取り外して修理できる状態)のまま置いておく。
 患者さんには、こう伝えておく。
 「おうちに帰って、ゆっくり、色とか形とか見てくださいね。
  この次までに、問題があったら、教えてください。」
 そして、患者さんの納得が得られるまで、絶対に、合着(冠などを取れないように完全にセメントで付けてしまうこと)をしない。

 笑い話ではないが、知り合いの先生で、患者さんの満足が得られずに、7回も前歯を作り替えた事例がある。
 インプラントの上部構造を、一回でセットしてしまい、トラブルになった知り合いもいる。

 ついつい、歯医者さんは、目の前にあるむし歯を全部治したくなる。
 でも、私たちは、一見さんのお客さんを見ているのではない。
 トロール漁船のように、根こそぎ治してしまうのが、患者さんにとって、一番いい方法なんだろうか?
 私たちは、患者さんの歴史を作っている。
 私の患者さんも、乳飲み子の頃から、成長し、結婚し、子どもを連れて、また来てくれる。
 死を看取る患者さんもいる。
 本当に笑い話ではないが、そんな患者さんにはこう言う。
 「入れ歯が痛かったら、化けて出てきてくださいね。
 今のところ、枕元には現れていないので、みなさん、大丈夫なようだ。
 私も、あの世に行ったら、馴染みのみなさんに訊いてみなくては(笑)。
 私たち歯科医師は、そうやって患者さんとともに成長し、年を経ていく。
 だから、治療のタイミングはいつなのか?
 大きな問題である。

 だからこそ、儲かるからと言って、焦って高額な治療は薦めない。

 だからこそ、こんな気持ちで治療をしている。

 「お友達の歯を、治させていただいている」

 皆さんは、如何が?