$山田隆文の歯医者さん日記


 gooランキングにこんなものがあった。
 つまらない会話の中身ランキング!
 http://cache001.ranking.goo.ne.jp/crnk/ranking/999/endurance_ySIU4Hb81R8X_all/

1  自分の自慢話
2  知らない人の話
3  マニアックな趣味話
4  愚痴
5  政治・経済の話
6  見てない番組の話
7  スピリチュアルな話
8  芸能界のウワサ話
9  仕事の話
10 家族・親戚の話    なのだそうである。

 確かに、自分の自慢話ばっかりされたら、嫌になる。
 知っている歯医者さんでも、「歯科医師には威厳が必要だ」「世界の◎◎」「○△は私が発明!」「どこどこ大学の何々先生を知っている」などなど、こっちが訊きもしないのに、自慢話が大好きな人がたくさんいる。
 そんな人に限って、取り巻きを作るのが大好きだ。
 「先生、あなたは素晴らしい!」と言ってもらわないと、自分が維持できないのだろうか?
 イソップに、「裸の王様」なんて逸話があったような……。

 他にも、興味のない、知らない人の話やマニアックな趣味、見てない番組だと、会ったこともない家族の話だとか……。

 ふと、考える。
 歯科診療所に来た患者さんに、一生懸命、歯の大切さを訴える。
 歯みがきが大事だと言う。

 でも、興味がなければ、聴いて貰えない。
 それは確かである。
 では、どうやったら、振り向いてもらえるのだろうか。

 ある時、皇居のお堀端で、駆け出しの漫才コンビが、お堀に向かって一生懸命ネタの稽古をしていた。

 ある漫才師がこう言った。
 「人に笑われるのは簡単である。でも、人を笑わせるのは難しい」

 昔、文化祭で呼んだ漫才師。
 今では、テレビや映画で見ない日がないくらいの大物になった。
 でも、その時、楽屋ではぶすっとした顔をしていた。
 それが、舞台の袖に立った瞬間、スイッチが入る。
 患者さんとして来院した芸能人。
 待合室でも、診療室でも、神妙である。
 でも、子どもが「あっ、誰々だ!」といった瞬間、スイッチが入る。

 私も、普段はあんまりしゃべらないが(というか、一日中誰ともおしゃべりをしなくても平気である)、患者さんを前にするとスイッチが入る。

 まあ、同僚でも、患者さんとほとんど話さない歯科医師もいる……。

 さあ、患者さんが何を聴きたいのだろう。
 どんな、お話をしたら、聴いて貰えるのだろう。

 見方を変えてみる。

 そうそう、患者さんが聴きたい話をしなければならない。
 インプラントがいいの、メタボンがいいの、白い歯がいいの。
 患者さんは、歯医者さんの都合の良い話を聴きたいんじゃない。
 「治るの?」
 「どれくらいの時間がかかるの?」
 「いくらかかるの?」
 どこかの牛丼チェーンではないが、「うまい」「早い」「安い」が一番いいのだ、と気がついた。