$山田隆文の歯医者さん日記

 ということで、数年前に撮った怒りの稲妻!

 グルーポンというサイトの、バードカフェ。
 年末に注文した500件のおせち料理が間に合わず、とんでもないすかすかのおせち料理が届いたり、はたまた、クール宅急便で送らずに腐ったおせちが届いたとかで、ネットの上で結構話題になっている。
 社長さんは辞任をしたとか。

 さて、問題点を整理します。
・自分を知らなかった
・対処法を間違った
・辞任することは責任を取ることにはならない
といったことでしょうか?

<自分を知らなかった>
 これは、簡単です。
 自分には何ができて、できないのか。
 客観的に、判断するんです。
 えっ、できないって?
 まあ、ソクラテスの時代からみんな悩んでいることですので……。
 では、簡単に説明をします。
 ・できることを知ってる、できないことも知っている。
  これを自信と言います。
  ですから、自分がこれから何を学べばいいのかがきちんと知っています。
 ・できることを知っている、でも、できないことは知らない
  これは、過信とか慢心と言います。
  できないことを知りませんから、いい気になっています。
  バードカフェさんは、まさにこの状態。
 ・できることは知らない、でも、できないことはよく知っている。
  これは、劣等感ですね。
 ・できることもできないことも知らない。
  見栄や虚栄と言います。
  ただのはったりです。
 どの方法がいいのか、一目瞭然ですね。
 
<対処法を間違った>
 答えは簡単でした。
 カミングアウトしてしまえば良かったんです。
 500食注文を受けましたが、200食分しか食材が調達できませんでした。
 ですから、キャンセルさせてください。
 あるいは、自分を知っていれば、年末に何食作ることができるのか、マンパワーや仕入れを計算することができたと思います。
 でも、ネットにお店出をしたら「儲かる」んです!
 お金の誘惑に負けます。
 ここで、キャンセルしたら、もう、注文が来なくなるかもしれない!
 それを隠すのは見栄と虚栄です。
 後のことは考えられなくなってしまいました。
 そこが、ミスです。
 旅館やホテル、レストランです。
 もし、ピーク時のお客様の数に合わせてスタッフを雇ったら、人件費でつぶれてしまいます。
 ですから、閑散期とピーク時のお客様の数を計算して、ぎりぎりの人数でやっています。
 初詣に行く神社だってそうです。
 普段は、人は少ないんです。
 年末年始だけ、なぜか、突然、巫女さんの数が増えますね(笑)。

<辞任することは責任を取ることにはならない>
 日本の責任者は、ミスを償うことなく、辞めます。
 辞めればいいんでしょうか?
 その前に、フォローが必要なのではないでしょうか?
 それが、正しい責任の取り方ですね。

 同じ過ちを、私たち歯科医師もやってしまうかもしれません。
 たとえば、インレーの形成から印象まで何分でできるか。
 クラウンの単冠の形成から印象からテックの作成まで、何分でできるか。
 私は口腔外科が専門ですので、この手術は何時間でできるか。
 そういったことを、ある程度把握しています。
 この時間を足し算していけば、一日の労働時間で、何人の患者さんが診られるか計算できます。
 お寿司屋さんのカウンターの数も、ラーメン屋さんの椅子の数も、もちろん、そうやって決まっています。
 そのキャパシティーを越えてしまうと、一人一人の患者さんやお客さんに、十分なサービスを行うことができないからです。
 儲かってきたお寿司屋さんやラーメン屋さんが、お店を大きくして、もっとお客さんの入れるようにと改築をしました。
 とたんに、味が落ちます。
 簡単です。
 キャパシティーを越えてしまったからです。
 歯医者さんも同じ。
 開院当時は、患者さんの数が少ないので、濃厚診療をします。
 評判が上がるので、患者さんが増えます。
 増えれば増えるだけ、一人の患者さんに避ける時間が減っていきます。
 と、患者さんの満足度は低下します。
 では、と言って、代診を雇います。
 歯科衛生士さんや歯科助手さんや受付を雇います。
 でも、院長の考えていることが100%スタッフに伝わりません。
 と、患者さんが減っていきます。
 残念ながら、減ってからではもう間に合いません。
 良い口コミが伝達するには時間が掛かりますが、悪い口コミはあっという間に広がります。
 チェーンのコンビニや飲食店とは違いますので、ダメだと思っても別の店にすることができません。
 一度落ちてしまった評判を元に戻すのは、まず、無理です。
 だって、私たちが買い物や食事をしに行く店で、一度でも嫌なことがあったお店に、また、行きたいと思いますか?

 こんな話をどこかの本で読みました。
 (すみません、タイトルを忘れてしまいました。思い出したら引用を載せます。)
 10億円の法則。
 ベンチャー企業があります。
 10億円の壁があるのだそうです。
 これを越えた企業は、大企業へ発展します。
 でも、越えられない企業はそのままか、縮小していきます。
 答えは、創業者の考え方なのだそうです。
 始めは、自分で興した企業ですから、ワンマンでOKです。
 カリスマ社長などと呼ばれていい気になります。
 やがて、人が集まり、会社も大きくなります。
 でも、そこに壁があるのだそうです。
 ワンマンのままで、何でも自分で管理しなくてはならない、と、考えていると、頭打ちになります。
 大きくなった仕事のすべてを、一人で管理できません。
 できない社員を叱咤激励します。
 でも、うまくいかないと怒ります。
 と、当然、人は離れていきます。
 では、どうすれば、壁を越えられるのでしょうか?
 人を信じて、仕事を任せるのだそうです。
 人は、信じられると、俄然力を発揮します。
 でも、この時に大事なことがあります。
 「失敗は社員の責任、成功は社長の成果」なんて考えていると、やっぱり、社員には逃げられます。
 「成功は社員のもの、全責任は俺が負う」くらいの気持ちでやらなければ、人は伸びません。
 別の本だと思いますが(これもタイトルを忘れてしまいました)、同じ意味で、50人の法則というのがあったような気がします。
 従業員50人の壁です。
 同じ意味ですね。

 まあ、歯医者さんで、そこまで大きな会社というのはありませんので、そんなに心配をしなくてもいいんでしょうか?
 って、わけにもいかないですよね!

 さて、ここで、ネットの寂しいところがあります。
 ネット検索して、ようやく、お気に入りのものを売っているネットショップを見つけました。
 対応も素晴らしいです。
 商品にも満足をしました。
 でも、しばらくすると、いつ見ても、「売り切れ」ばかりになります。
 たぶん、マーケティングの基本である、需要と供給のバランスがダメになってしまったのでしょう。
 みんな売れてしまって、在庫が無くなりました。
 もし、製造業であれば、製造が間に合いません。
 ですから、売り切れ!
 そして、ある日、ネットから消えていきます。

 一方で、素晴らしい仕事をしてるところもあります。
 土屋鞄製造所です。
 いつかは、欲しいと思っているアタッシュケースがあります。
 でも、いつも売り切れ。
 年に数回、時々、注文OKの時期があります。
 届くのは、3ヶ月から半年後。
 もちろん、現在は、売り切れ中です。
 ちゃんと、自分を知っているのですね。
 そして、それだけの評価を受けている鞄だからこそ、売り切れるのですね。
 まあ、その鞄にふさわしい人間になるという課題も残されていそうです……。