山田隆文の歯医者さん日記

 開花宣言は出たのですが、ここ数日、寒い日が続いていますので、東京の桜も、漸く2分咲きでしょうか。
 さて、日本の経済や、特に、私たち歯科業界はいったい何分咲きなんでしょうか……。
山田隆文の歯医者さん日記

 http://books.rakuten.co.jp/rb/「勝ち組企業」の就業規則-人が動く!組織が変わる!-下田直人-9784569697451/item/5359816/
 下田雅人さんの書かれた「勝ち組企業」の就業規則-人が動く!組織が変わる!(PHP)と言う本を読みました。

 前に、京都のFDフォーラムで講師の先生が力説していた、大学は「個人商店から株式会社へならなければならない」と書いたと思います。
 もちろん、正常な進化をすれば、という条件付きです。

 でも、そうはうまくいきません。

 組織というのは、ある意味では化け物です。
 うまく育てて、飼い慣らしていかないと、いろいろな危険性があります。
 時には、手を咬まれてしまいます。
 問題点をいくつか整理してみました。

1)リーダシップの問題
2)守りに入る
3)組織の一人歩き

なんて、点が挙げられると思います。

1)リーダシップの問題

 個人商店から株式会社に移行しても、やはり、リーダーシップが必要です。
 誰かが、舵取りをしなければ、漂流をします。
 個人商店のように、一代で興した場合には、まだ、リーダーシップが機能します。
 でも、二代目、三代目……と続いたらどうなるでしょうか?
 世襲制で成功したのは、徳川幕府くらいで、鎌倉幕府も室町幕府も織田信長も豊臣秀吉も、み~~~~んな失敗しました。
 なぜなら、ワンマンのままで後継者を育てることができずに、本当の意味での100年続く企業になりきれなかったからです。
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 http://books.rakuten.co.jp/rb/百年続く企業の条件-老舗は変化を恐れない-帝国データバンク-9784022732941/item/6179905/
 帝国データバンクの「百年続く企業の条件-老舗は変化を恐れない」という本があります。
 また、2010年3月22日のテレビ東京のカンブリア宮殿では、「こんな時代だから!ロングセラースペシャル!」ということで、新潟の柿の種で有名な亀田製菓と、亀の子たわしで有名な亀の子束子西尾商店を取り上げていました。
 そのときの、亀の子束子西尾商店の西尾松二郎社長さんのこんな言葉が心に残りました。
 「もうけようとは思わなかった。人々の暮らしが良くなるようにと思った」

 さて、こんな有能なリーダーに率いられた企業はうらやましいですね。

 でも、現実は、本来は能力のない人が、課長や部長やトップに据えられることがあります。
 さあ、ここで問題が起こります。
 だって、リーダーシップを発揮できません。
 上から言われたことを、そのまま下に伝えます。
 すべてを管理しようとします。
 部下が信用できません。
 と言って、コーチングやメンタリングやアサーティブなトレーニングをやろうとも思いません。
 だって、上に命じられてリーダーになったのですから、自分には「能力があるのだ」と思いこみたくなります。
 うまくいかないのは、厳しさや、締め付けが足りないからだと勘違いをします。
 管理は、どんどん厳しくなっていきます。
 でも、誰かに、「どこへ向かっているの?」と方向性を尋ねられると、自分の意見がありません。

 さあ、こんな組織はどこへ行くのでしょうか?

2)守りに入る

 二つ目の問題は、攻めから守りに入ってしまうことです。
 一度得た自分の地位を安定化させるために、ありとあらゆる手段を取ります。
 問題点を回避し、解決へ導こうとするのではなく、問題点が起こってしまった理由や言い訳を延々とつづります。
 つまり、問題が起こったのは、私の原因ではなく、環境による不可抗力なのであると。
 高度成長時代に伸びていた時代は良かったのですが、アメリカに端を発したサブプライムローンの大打撃で日本の経済もぼろぼろです。
 と、突然、攻めをやめます。
 「いらない電気は消せ!」だの「コピー用紙を無駄にするな!」だの、どうでもいい枝葉末端に目がいきます。
 当然、組織を守るために、リストラや、新規採用を減らします。
 今年の、大学卒業生の就職内定率も過去最低。
 でも、それって、本当に正しい方向なんでしょうか?

 おもしろ事態が日本政府でも起こっていますね。
 昨年の衆議院選挙で、50年以上続いた一党独裁(一度だけ1994年に新進党が中心となって連立政権がありましたが……)の自由民主党政権から、民主党が衆議院議員で過半数を獲得し、新しい政権になりました。
 ところがです。
 支持率はどんどん落ちていますね。
 
 理由は一つです。
 批判することには慣れていたけど、批判される立場になったことが無かったからです。
 普天間基地問題では、あそこまで自民党を叩いてきたのに、いざ、自分で決め無ければならない立場になると、かなり及び腰になってしまいました。
 沖縄県民のためにも、早く解決してあげたいですね。
 緊急の経済対策から始まって、官僚問題、予算、埋蔵金、高速道路問題、子供手当……。
 ぐだぐだな感じがします。
 だって、答えは簡単です。
 できあがったたたき台に批判をしてきましたが、自分で案を出してたたかれたことがないからです。
 いままでのやり方を破壊することはできたけど、新たに創造することに慣れていないからです。
 献金や政党助成金などの問題で自民党には「議員を辞めるべきだ!」と言っていたのに、いざ、自分の立場になると秘書のせいにしたりして「辞めません」と言います。
 内部で批判が起こると、もみ消そうとしたり、潰そうとします。
 生方幸夫議員が良い例ですね。
 でもでもでも、一度、手に入れた有利なポジションは、二度と手放したくありません。
 そのためには、いつの間にか、守りに入ってしまったのですね。

 でも、守りに入った時点で、組織としての成長は止まってしまいました。
 むしろ、衰退にはいります。
 デカダンスです。

3)組織の一人歩き

 最後の危険性です。
 実は、これが、一番危険かもしれません。
 組織が大きくなると、組織を作った人の意図を全く無視して、組織は別の方向に行ってしまうことがあります。

 こんな例があります。
 ある会議で、問題点が生じましたので、議題になりました。
 解決をしたいのですが、できません。
 なぜなら、こんなハードルがあったのです。
 あるメンバーが言いました。
 「この規約に、こう書いてあります」
 さあ、すぐには問題を解決できません。
 自分で作った規約に縛られてしまったのです。
 では、どうするかというと、まず、規約改正の緊急動議を出します。
 それから、かんかんがくがくの議論の後、漸くのところで、新しい規約がまとまります。
 でも、それを上の会議に上げて承認をしてもらわなければなりません。
 数ヶ月が簡単に経過します。
 もちろん、オンタイムな対応はできません。
 カリキュラムをいじったときなどは、時には、来年、もっと先でなければ対応できないこともあります。

 組織が大きくなれば、大きくなるほど、自分が作った組織にがんじがらめになります。
 対応も、どんどん遅くなります。

 もっと、怖いことも起こります。
 日本では、多数決で物事が解決していきます。
 たとえば、国会です。
 自由民主党と民主党の議員の数で法律など物事が決まります。
 裁判であってもそうです。
 裁判官と、最近導入された裁判員の多数決です。
 多くの人が賛成したから、本当にそれが正しい答えでしょうか?
 賛成した人のすべてが、自分の意志で手を挙げたでしょうか?
 多数決で負けてしまった少数意見の中に、本当の答えはなかったと言えるでしょうか?
 地動説を唱えたガリレオ・ガリレイは、異端審問所審査で、ローマ教皇庁検邪聖省から「そんなことを言うと神の教えに反する」と言われます。
 最後には、終身刑になります。
 ローマ教皇ベネディクト16世が、ガリレオを有罪にした裁判を「公正だった」と発言して問題になり、ガリレオの罪が解かれたのは、なんと、370年も過ぎた2008年で、ようやく「世界天文年2009(国連やユネスコが定めた)」に関連して、ガリレオらの業績を称え、地動説を改めて公式に認めたそうですね(http://ja.wikipedia.org/wiki/ガリレオ・ガリレイ)。

 さあ、組織がうまく機能するにはどうしたらいいのでしょうか?

 実際には、
1)組織にいる一人一人の自覚や成長の度合い(といってしまえば元も子もないのですが……)、
そして、
2)一人一人が成長できる環境を容認できること(できれば、促進できること)
3)組織としての方向性を全員が共有できること
でしょうか?

 なかなか、難しものだと思います。