$山田隆文の歯医者さん日記

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 日経ビジネスの3月8日号です。
 こんなタイトルがありました。
 「うちの社長は裸の王様」

 裸の王様は、有名なアンデルセンの童話です。
 王様は、だまされて買わされた見えない洋服を着て歩いています。
 でも、取り巻きの部下達は、「素晴らしいお召し物ですね!」としか言えません。
 だって、ワンマンですから。
 ところが、利害関係の無い子供が「あ、あの王様、裸だ!」と言います。
 素直な目で見る事ができたからですね。

 さて、先日のFDフォーラムでも、こんな講演がありました。
 大学は、商店から株式会社にならなくてはならない。
 (歯科医院も同じだと思いますが)

 個人商店では、店主がすべてを決める事ができます。
 どんな店にして、何を売っても構いません。
 ワンマンな店主には、何も見えません。
 だって、何をしても、文句を言われないんですから!
 そのかわり、お店が発展しても、つぶれても、すべては自己責任です。
 さて、お店が大きくなると、スタッフも増えます。
 スタッフは、お給料を貰う身ですから、店主の言う事をききます。
 店主には、いい事しか言いません。
 だって、文句を言ったら、首にされるかもしれません。
 いつの間にか、店主の周りには、「あなたは素晴らしい」と言ってくれる人しか集まらなくなります。
 でも、実は、お店は赤字で傾いていたかもしれません。
 それでも、スタッフは、「儲かってますよ」としか言いません。
 だって、嫌な事を店主の耳に入れたくないからです。
 
 静岡に、ヤオハンという大きなデパートがありました。
 和田一夫氏が、小さな八百屋さんから一代で起こしたんです。
 海外を含めて400店舗以上を展開しました。
 しかも、借金なしで、すべて自己資金でした。
 でも、ある日、突然、倒産しました。
 なぜって?
 それは、部下が、いい事しか伝えなかったからです。
 和田一夫氏は、こう言っていました。
 「倒産して、始めて、会社の経営状態がわかった!」
 まさに、裸の王様だったんですね。
 でも、流石です。
 転んでも、ただでは起きません。
 奥様と、会社を興して、つぶれた原因を考察して、それをネタに講演をしています。
 起業・経営の指標『和田一夫ウェブサイト』http://www.wadakazuo.com/を見ると、そのバイタリティが伺えます。

 でも、株式会社はどうでしょうか?
 ライブドアなどの事件で、「会社はだれのものか?」という議論が巻き起こりました。
 もちろん、始めは創業者である社長のものです。
 でも、株式を公開しました。
 いろいろな人がその株を買います。
 ですから、「会社は株主のものである」という説が出てきました。
 確かに、株主総会で、会社の運営方針や、社長や幹部の選挙もできます。
 (第一生命が株式公開というのもちょっと驚きましたが)
 でも、そのために、バブルが生じました。
 実態のない、もうけのためだけに、株価が高騰します。

 でも、こんなことを言う社長もいます。
 「会社は社員のものである」
 一理あります。
 「会社はお客様のものである」
 これもまた一理あります。

 さて、株式会社では、物事は合議制で進んでいきます。
 社長も幹部も選挙で選ばれます。
 ですから、良い方向に行くかもしれませんね。
 ちゃんと機能していれば。

 でも、やっぱり、派閥争いが生じます。
 サラリーマン金太郎ではありませんが、「サラリーマンをなめんじゃねえ!」です。

 大学も、始めは、創設者の意のままに動きます。
 でも、それで、50年、100年も維持できるでしょうか?
 FDフォーラムでうかがった同志社大学は、新島襄氏が教師2人、学生8人からスタートして、今は、学生2万人以上を抱えるマンモス大学です。
 だって、創設者って、100年も生きていられるでしょうか?
 世代交代もありますね。
 だから、みんなで、良い方向になるように、考えなくてはならないんですね。

 さて、中教審答申です。
 こんな風に書かれています。
 「学生が主人公です」

 さてさて、私たち教員も、裸の王様で無いように、気をつけなくてはなりませんね。