$山田隆文の歯医者さん日記

 http://books.rakuten.co.jp/rb/雪のひとひら-ポール・ギャリコ-9784102168059/item/5915328/
 「雪のひとひら」という短い物語です。
 ポール・ギャリコさんが原作で、日本では、童話作家で翻訳が素晴らしい矢川澄子さんの訳です。

 ポール・ギャリコといっても、あまり知っている人はいません。
 でも、映画「ポセイドン・アドベンチャー」1972年ロナルド・ニーム監督、音楽はハリーポッターやスターウォーズのジョン・ウイリアムスは知っていますね。
 最近、2006年に「ポセイドン」としてウォルフガング・ペーターゼン監督でリバイバルしました。
 この原作が、ポール・ギャリコです。

 こんなカタストロフィ作品も書いているんですが、本当は童話作家といった方がいいのでしょうか?
 「スノーグース」「ジェニイ」「幽霊が多すぎる」「トンデモネズミ大活躍」「7つの人形の恋物語」「ハイラム氏の大冒険」「ハリスおばさんシリーズ」などなどなど、どれも素晴らしい作品ばかりを書いています。
 猫好きで、「猫後の教科書」も非常に面白いです。
 猫の立場で、いかに人間の家に入り込んで人間を躾けるかが書かれています(笑)。

 何人かの翻訳家が翻訳していますが、やはり、矢川澄子版が最高です。
 矢川澄子さんは、ポール・ギャリコだけでなく、「ハイジ」「不思議の国のアリス」「若草物語」「サーカス物語」などなどなど著名な作品を翻訳しています。
 詩集の「ことばの国のアリス」「アリス閑吟抄」や、評論の「私のメルヘン散歩」などがお気に入りです。

 さて、「雪のひとひら」です。
 前に書いた、老子の「上善水の如し」です。
 一種の、哲学的ファンタジーとも評されています。

 舞い降りる一片の雪のひとひら。
 大地に積もり、溶け、小川から大河に注ぎ込み、海へ、そして蒸発して空に帰っていく。
 ただ、それだけの物語。
 でも、その雪のひとひらに人格を持たせました。
 最愛の人に出会い、子どもが生まれ、別れと、そして年老いて死んでいく。
 
 でも、私の部屋にもう10年以上も置いてありますが、この本を手に取った人はほんの10人にも満たないでしょう。
 そして、とある超ベテランの同僚も「わからない」と言って返しに来ました。
 意味を理解してくれたのは、ほんの数人でしょうか?

 前にも書いた、感性には受容体(レセプター)が必要なんですね。

 でも、もし、なにかもやもやしたものを持っている人がいたら、是非、読んでみてください。
 もし、何か、心に響くものがあるとすれば……。
 感情の基本ステップはめでたく卒業証書を差し上げます。

 お気に入りは、最後の一言。
 空に登る雪のひとひらに声が響きます。
 「おかえり」

 1998年に矢野顕子さんのナレーションで、この「雪のひとひら」が朗読+音楽CDになりました。
 (東芝EMI)
 日本語版と英語版が収録されています。
 英語版はピーター・ガブリエルの朗読。
 なかなか素晴らしいのですが、残念ながら、すでに廃盤です。
 http://books.rakuten.co.jp/rb/雪のひとひら-矢野顕子-4988006155268/item/4459450/
 中古市場で探すしかありませんが……。